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ベルナデットは襲撃を受ける


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


(眠いわ……)


 昼食直後の午後の授業。ぽかぽかと心地よい日差しを浴びて、ベルナデットは必死に睡魔と戦っていた。


 ベルナデットが魔法学園に入学して1週間が経った。初めての学生生活は全てが新鮮で全てが楽しくて仕方がなかった。

 仕方がなかったのだが、午後の最初の授業だけはどうしても苦手だった。


(先生のお話は面白いと思うのに、それでもどうしてもこの時間は眠くなってしまうわ。せめて体を動かす授業なら……駄目ね。その後の授業で確実に寝るわ。もういっそ午後は全て体を動かす授業でいいんじゃないかしら……)


 対策を考えると言う名の現実逃避をしている間にも瞼はだんだんと重くなる。

 このままじゃ駄目だと何か目の覚めるものを探し窓の方に視線を向けると、はるか遠くの木立の中が陽の光を反射してキラリと光った。

 反射的にベルナデットは席を立ち、後ろの机を飛び越えその横の窓を開けた。真横スレスレを飛び越えられた男子生徒は突然の出来事に悲鳴を上げ、周りが何事かと注目した瞬間。

 パシリという音を立て、ベルナデットが窓の外から飛んできたものを捕まえた。矢だ。


「アラン! 行くわよ!」

「お嬢様!?」


 ベルナデットは矢をその場に投げ捨てて、開いた窓から飛び出した。一歩遅れてアランもそれに続く。

 ベルナデットは一直線に先ほど光った場所へ向かったが、結構な距離が離れていた為辿り着いた時には既に誰も居なかった。


「何があったんですか?」

「私、窓の外を見ていたのだけれど」

「授業に集中してください」

「それに関しては反省しているわ。それでたまたまこの辺りから矢が飛んでくるのが見えたのよ!」

「だからって素手で掴み取ろうとしないでください!」

「それに関しても反省してるわ。次からは鞄を盾にするわね」

「矢を止めようとするのを止めて欲しいんですけど?」

「緊急事態だったから仕方がなかったのよ。お兄様だってきっとそうするわ」


 悪びれる様子のないベルナデットの様子にアランが大きくため息をついた。

 確かにベルナデットの言う通り、ジェレミーがこの場にいたなら同じ行動を取っただろう。それに目も反射神経もいいベルナデットなら遠くから飛んできてある程度スピードの落ちた矢を掴むことなど簡単なことで、鞄などで防いで万が一人のいる方向に弾いてしまう危険性を考えると掴むのが最適だったともアランは理解している(実際ベルナデットはそこまで考えて行動していないのだが)。

 理解はしているが、ベルナデットのことが大切なアランにとってそれを受け入れられるかはまた別の話だった。


「お嬢様、手を出してください」

「手?」


 ベルナデットはアランが何かくれるのかと思い両手を差し出した。


「矢を掴んだのはどちらですか?」

「ええと、こっちね」

「ちょっと失礼します」


 アランはベルナデットの返事を聞くと、有無を言わせぬ勢いで示された右手をとった。

 ベルナデットは突然の行動に驚いてぴくりと一瞬肩を震わせたが、真剣な顔でベルナデットの手を確認するアランは気づいていない。


(アランってこんなに過保護だったかしら?)


 フオと戦った後も大慌てだったし、と考えて、ディアマン家の屋敷にいた頃はどうだったかしらと思考する。


(屋敷にいた頃も魔物や武器を持った相手と戦うことはよくあったわよね。けどそういえば、そういう時にアランと一緒にいたことってあったかしら? うーん…………うん、無いわね。大抵お兄様と一緒だった気がするわ。何でかしら?)


 それは実は「ベルナデットに魔物との戦い方を教えてあげよう。たぶん本人も楽しいと喜ぶだろうし。けどアランが知ったらうるさそうだから黙って行こう」と言うジェレミーの思惑故だったのだが、そんなことベルナデットは知るはずもない。ちなみに武器を持った相手についてはたまたまである。


 黙ってアランの好きにさせていたベルナデットだったが、傷が無いか確認するように手のひらを優しく指で撫でられ、得体の知れない羞恥心に襲われ微かに顔を赤くした。

 暫くそうしてやっと満足したらしいアランが手を離したことでベルナデットは漸く謎の緊張感から解放されこっそり息を吐いた。


「傷は無いみたいですが、リディには報告しますからね」


 アランの一言でベルナデットは先ほどまで感じていた恥じらいや緊張感が一気に吹き飛んだ。脳裏をよぎるのは馬車で見た目の笑っていないリディの笑顔である。


「……反省はしているわ。だからリディには言わなくていいんじゃないかしら?」

「もう手遅れですね」


 2人がその場で言い争っていると、遠くからイイ笑顔で走ってくるリディをアランが発見し、ベルナデットはそれを見てさっと蒼褪めた。当然2人揃って怒られた。

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