従者たちの報告会1
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side:アランとリディ
「遅い」
「仕方ないでしょう? 女子寮は男子寮と違って夜間の外出に手間がかかるということをすっかり失念していたんだから」
「それ何にも仕方なくないからな?」
入学初日の午後11時。リディとアランは男子寮と女子寮の間で会っていた。
何も知らない人から見れば恋人同士の密会のように見えるそれは当然そんな訳はなく、ベルナデット好きによるベルナデットの為のただの報告会である。
「それで、何でお嬢様はあんな恰好をしてたんだ?」
アランが朝からずっと気になっていたことをリディに尋ねると、リディはその経緯と朝の寮でのちょっとした騒動について簡単に説明した。
「成程。自己紹介の時に突然『家庭の事情』とか言い出すから何かと思えばそういうことか」
「ああ言っておけばよほどの馬鹿じゃない限り詮索は出来ないからね。ついでにあの恰好なら虫除けにも丁度いいかと思ったけれど、そっちは朝の感じだとあんまり効果は無さそうね」
「女って隠してるわけでもないしな」
「私がお嬢様の魅力を知り尽くしていたばっかりに……!」
本気でそう思っていることが分かるリディの悔しそうな顔に、アランは「単純にお嬢様が可愛すぎるんだと思う」と思ったが、それを言うと確実に揶揄われることがわかっているので口にはしなかった。
「そういえば、今って学園に王子と王女が居たのよね。入学式で挨拶されるまですっかり忘れてたわ」
「僕も。王子の挨拶の時周りの女子がキャーキャー言ってたけど、実はリディもああいうタイプ好きだったり?」
「お綺麗な顔をしていらっしゃるとは思ったけど、お嬢様の方が綺麗だわ」
もし王子にときめいていたならいつもの仕返しにからかってやろうと思っていたアランは、リディのいつも通りの返答にガッカリした。
「アランこそ、王女様と同じクラスでしょう? 可愛い王女様にクラっときたりしてないでしょうね?」
「確かに一般的に見て可愛いんだろうけど、お嬢様の方が可愛い」
基本ベルナデットとディアマン家以外どうでもいい2人である。
「そんなことより」
リディが真剣な顔をしてアランを見つめるのでアランも真剣な顔で見つめ返す。完全に誤解されそうな構図だ。周りに誰もいなかったことが2人にとって幸いだった。
「訓練場に行っていたって聞いたけれど、お嬢様に悪い虫を近づけていないでしょうね?」
「大丈夫…………だと思う」
「『だと思う』!? 言い切れないの!?」
「いや! 近づけてない! 近づけてない、が……」
「何よ」
「んー、深い意味はない、んだろうけど。王子の挨拶の時、お嬢様すごいジッと王子のこと見つめてたんだよ」
「え。まさかお嬢様、王子に興味があるってこと?」
「いや、それはわかんないけど。特にその後王子の話題が出ることもなかったし……」
「はぁ? そこは貴方から聞きなさいよ」
「だって聞いてもし気になってるとか言われたらどうすんだよ!?」
「事実は変わんないんだからわかんない方が嫌でしょうが」
リディの正論にアランが言葉に詰まって項垂れた。
「全くヘタレなんだから。仕方ないから私がさりげなく聞いてあげる。感謝してよね」
「お願いします」
とりあえず初日の報告会はそこでお開きになった。
翌日、入学式の話題にてリディはベルナデットが挨拶の間考えていたことを聞き、王子に対してときめいていたわけじゃないことがわかったが、同時にベルナデットが王子含め全ての人の挨拶を聞き流していたことが判明し説教することになってしまったのはベルナデットにとって不幸な事故であった。




