ベルナデットはクラスメイトに自己紹介をする
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再びセドリックに連れられて戻って来てから改めて教室内を見渡した時、ベルナデットはあることに気づき目を丸くした。教室に王女がいる。どうやら同じクラスらしい。
先ほどまでは王族の存在すら忘れていたので自分が気づかなかっただけかとも思ったが、自分よりも遥かに世間に詳しく王女のことも当然知っていたであろうクラスメイトたちがそわそわと浮き足立っていることから、恐らく今初めてこの教室に来たのだろうなとベルナデットは1人納得して頷いた。
「皆さん、入学式お疲れさまでした。では今から皆さんに自己紹介をして貰おうと思います。名前以外は得意なことやこれからの目標など、自由にしてもらって構いません。もちろん名前だけでも結構ですよ。では、そうですね……窓側の1番前の貴方からお願いします」
先ほどと同じ席に座っていたベルナデットが指名されて、驚きながらもすぐに返事をして立ち上がった。少し緊張している様子の彼女に、アランは珍しいものを見たと言いたげに目を丸くしている。
ベルナデットは一度深呼吸をして落ち着いてから、にっこりと上品に微笑んでから口を開いた。(リディからはこの笑顔をするとよく「お淑やか令嬢詐欺」と言われる)
「ディアマン辺境伯家長女、ベルナデット·ディアマンですわ。この学園に入学するのをとても楽しみにしていたので、今とっても嬉しいです。得意なことは戦うことなので、腕に自信がある方は是非手合わせをお願いしたいわ。これから皆さんと仲良く出来たらいいなと思いますので、これからどうぞよろしくお願いいたしますわ」
ベルナデットが自己紹介を終えて席に着くと、アラン以外のクラスメイト、それだけでなく担任までもがポカンと口を開けたまま固まっている。
ベルナデットが何か間違っていただろうかとセドリックを見たところで、ハッとした彼が戸惑いながらベルナデットに尋ねた。
「ディアマン辺境伯家長女……のベルナデットさん?」
「はい」
「あの……何故男子制服を?」
戸惑ったセドリックからの質問に、今朝の寮での出来事を思い出してベルナデットは納得した。
「家庭の事情ですわ!」
ベルナデットは自信満々に今朝リディの言っていたセリフを口にしてから、ふと不安になってセドリックに尋ねた。
「あの、もしかして校則違反とかでしょうか?」
「すみません、今まで無かったことだったので驚いてしまいました。女子生徒が男子生徒の制服を着てはいけないという決まりはないので大丈夫ですよ」
「良かった! 危うくお母様に怒られるところでしたわ」
ベルナデットはレティシアに怒られる心配がなくなったとほっとして、もう自分の番は終わったと次の生徒の自己紹介を聞く姿勢をとった。
しかしクラスメイト達はまだ衝撃が抜けきっておらず、彼らの心は一つだった。
(((『家庭の事情』って何???)))
しかしあのディアマン辺境伯家の家庭の事情である。ベルナデットが家庭の事情と濁したのだから、そこを突っ込んで聞ける勇者は誰もいなかった。
「さて、じゃあえっと。次はディアマンさんの隣の方、お願いします」
「はい」
アランは無難に名前とベルナデットの侍従であること、これからよろしくお願いしますという簡単な挨拶をして席についた。
それからはベルナデット以外、特に問題なく順番に自己紹介を終えた。王女の挨拶ではクラスメイト達が少しそわそわとしていたが、セドリックは他の生徒と全く同じ対応だったためベルナデットは密かに彼を尊敬した。
「はい、では少し早いですが今日はこれで終了とします。皆さんお疲れさまでした」
初日である今日は自己紹介と学級委員を決めただけで終了らしい。学級委員はベルナデットはやりたかったのだが、絶対にまともに出来るわけがないと思ったアランに視線で止められた為断念した。
「アラン、訓練場を見に行きましょう!」
「絶対言うと思いました」
キラキラと目を輝かせながら言うベルナデットにアランは苦笑した。
屋敷を出てから王都の前でフオと戦った以外全く体を動かしていないベルナデットはそろそろ我慢の限界なのだろう。早く早くとアランを急かしながら教室を出た。
2人がいなくなった教室で、1人の女子生徒がポツリと呟いた。
「私ベルナデット様なら女性でも推せるわ」
思わずといった感じで零されたその言葉に、周りにいた女子生徒の何人かが力強く頷いた。




