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24.05.24 誤字修正しました。

ご報告ありがとうございました。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「お兄様、恋人の前ではあんな風になるのね。できれば見たくなかったわ」


 ジェレミーがフェリシテを連れて去った後、ベルナデットが思わずといった感じで呟いた。


「男性はみんな甘えん坊だとメイドたちが言っていましたわ。それにフェリシテお姉様はとっても嬉しそうでした」


 コレットはジェレミーも妹たちの前であんなことをしたくなかっただろうと思い、少し罪悪感を感じてフォローした。

 それを聞いてベルナデットは、まだ幼いコレットが背伸びして大人みたいなことを言っていると思い、微笑ましく思った。


「ふふっ、コレットはもう立派なレディね」


 大好きな姉に褒められて誇らしげに胸を張るコレットを抱き上げてから、ベルナデットはふとアランを見てにやりと笑った。


「メイド達の言う通りなら、アランも恋人の前だと甘えん坊になるのかしら?」

「僕は甘えるより甘やかしたいですね」

「そ、そう」


 てっきり照れて狼狽えると思ったが、一切動揺せず真剣な顔でそんなことを言うものだから、逆にベルナデットが動揺してしまった。


「……お嬢様は、恋人には甘えられたいんですか?」


 ベルナデットからの質問には一切動揺していなかったのに、逆に質問する時には躊躇いがちに視線をうろうろと彷徨わせるアランを不思議に思いベルナデットは首を傾げた。


(普通逆じゃないかしら?)


 そう思いながら、質問に答えるべく聞かれた内容について考えた。先ほど甘える様子を見て引いてしまったのはその行為自体ではなく、相手が身内だったからである。

 では相手が恋人なら?

 ベルナデットはあごに手を当てて少し俯きながら答えた。


「そうね……まず『恋人』というものが想像つかないわ。だからその時にならないとわからないけど……」


 そこでベルナデットは顔を上げて、こちらを見つめるアランと視線を合わせた。


「アランみたいな人だったら、甘やかしてほしいわ」


 眩しい笑顔でそんなことを言われ、それを正面から受けてしまったアランは真っ赤になった顔を隠すため隣にいたジャンヌの後ろに隠れた。ジャンヌはアランより20㎝くらい背が低いため、だいぶ無理な体勢になっている。


「そっ、ソウデスカ。光栄デス」

「なんでカタコトなのよ」

「ちょっと、びっくりして」

「貴方が聞いたんじゃない」


 そんな2人の会話を、ジャンヌは目を輝かせながら、コレットは不機嫌そうな顔で聞いている。


「僕はお嬢様の――」


 ――恋人になれますか?


 意を決してアランがそう尋ねようとしたのだが。


「お姉様! 私、お姉様の恋人になりたいです!」

「えっ」


 アランの言葉を遮って、コレットが高らかに宣言した。


「恋人になれば、お姉様とずっと一緒にいられるのでしょう? 私お姉様が大好きだから、ずっと一緒にいたいです!」

「ひゃぁぁぁ! なんて可愛いの!? アラン! ジャンヌ! 今の聞いた!? なんて可愛いの!! コレット、私も大好きよ! 恋人にはなれないけれど、私はコレットとずっと一緒にいるわ!」

「本当? 恋人より一緒にいてくれる?」

「恋人ができるかはわからないけれど、もしできたとしてもコレットが一番大好きよ!」

「嬉しい! 私もお姉様が一番大好きです」


 そう言って幸せそうにぎゅーっと抱きしめ合う姉妹の横で、遠い目をして佇むアランをジャンヌが肩をぽんと叩いて慰めた。



 それからはフェリシテはジェレミーと共に過ごすようになり、ベルナデットはそんな2人を見かけると生暖かい目で見守った。その度にジェレミーから何か言いたげな視線を向けられたが、特に何も言われることはなかった。


(きっとあの時ドン引きしてしまったのを気にしているのね。あの時はお兄様に悪いことをしてしまったわ。大丈夫、今の私はコレットのおかげでちゃんと納得して受け止めることが出来たわ。だから何も気にしないで、お姉様に存分に甘えてください) 


 当然ジェレミーが言いたいのは「あれはお前のせいだ」とか「その生暖かい目をやめろ」とかなのだが、それがベルナデットに伝わることはない。


 結局フェリシテは10日ほどディアマン家に滞在した後、新学期の準備をしなければならないからと帰っていった。

 フェリシテが帰った後も生暖かい目を向けてくるベルナデットに耐えかねて、ジェレミーはあれはコレットに頼まれて仕方なくやったことだと説明したが、ベルナデットにはそれをただの照れ隠しだと捉えられて全く信じてもらえなかった。

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