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ベルナデットは兄の婚約者と出会う


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ベルナデットが念願の勝利を果たしてから一週間が経ったが、その間ベルナデットとジェレミーは毎日勝負をしていた。

 勝率は何日かはベルナデットが優勢だったが、ジェレミーはその天才的なセンスで一度見た動きを次の勝負ではほとんど対応出来るようになってしまうため、ベルナデットは毎回違う手を使わなければいけなくなっており近いうちにまた勝てなくなってしまうことは明らかだった。


 本日も2人はいつもの稽古場にていつもの勝負をしていた。初日以来ジェレミーが油断することはなく、更にベルナデットの不規則な動きにもこの一週間で対応できるようになってしまったため、ベルナデットも必死に食らいついたが結局ジェレミーが勝利した。


「素晴らしいわ!」


 聞き覚えのない女性の声に驚いてベルナデットがそちらを見ると、赤褐色の髪にガーネットのような瞳を持った、キリっとしたかっこいい雰囲気のスレンダー美人が興奮した様子で手を叩いていた。


「フェリシテ!? なんでここに!?」

「休暇に入ってすぐに会いに行くって連絡したじゃない。その様子じゃ全く聞いてなかったみたいだけど」


 驚くジェレミーに対し女性は呆れたような顔で返した。


「お兄様のお客様?」

「あ、ああ。彼女はフェリシテ・グルナ伯爵令嬢。現騎士団長の娘だ」

「まあ、騎士団長の!」

「初めまして。貴方のことはジェレミーから聞いてずっと会ってみたかったの。お会いできて嬉しいわ。それはそれとして……ジェレミー? 私の紹介はそれだけかしら?」


 フェリシテはにこにことベルナデットに挨拶した後、冷たい目でジェレミーを見た。その視線を受けたジェレミーは「あの」だの「その」だの意味のない言葉を発しながら慌てている。ベルナデットは見たことのない兄の姿に目を丸くした。


「あ”ーーー……フェリシテとは、学園を卒業したら結婚しよう、と思っている」


 赤い顔で目を逸らしながらそう言ったジェレミーにフェリシテは満足そうに頷いているが、ベルナデットは兄の言葉が信じられなかった。


「まあ! じゃあお兄様の恋人ということ!? こんな美しい方が!?」 


 貴族の結婚と言うと政略結婚のイメージが強いが、ディアマン家はそうではない。

 防衛の砦という重要な役割を持つため、ディアマン家は既に国の中でも割と高位の権威を持っているが、そもそも代々脳筋が多いこの家系は強さには貪欲だが権力にはさして興味がない。

 その為結婚は本人の意思を尊重するとしており、極端な話当主が結婚しなかったとしても親戚から養子を迎えればいいじゃないというとても自由な家なのである。

 つまり婚約者=恋人ということになるのだが。


「グルナ様、学園ではきっと賢く見せているのでしょうが、お兄様はお父様以上の脳筋ですよ?」

「ベルも似たようなもんだろうが」

「お姉様と呼んで? ふふ、ちゃんと知っているわ。学園でも立派に脳筋だもの」

「おい」

「お姉様は脳筋でいいんですか!?」

「ジェレミーがいいの。彼の強さに惹かれて私から口説き落としたのよ。私強い方が好きなの」


 フェリシテのまっすぐな言葉に、ジェレミーとベルナデットは揃って赤面した。

 ジェレミーに至っては恥ずかしさのあまり逃げ出そうとしたが、それを察知したフェリシテに捕まって逃亡することは叶わなかった。

 最初の衝撃が去って落ち着いてきたベルナデットは、改めて目の前で仲睦まじく会話する2人を見た。驚きのあまり否定的な態度をとってしまったが、2人がちゃんと愛し合っているのならベルナデットからしても大歓迎だ。それにジェレミーも何だかんだ整った顔をしているので、外見的にもとてもお似合いである。


「お姉様、ふつつかな兄ですが、どうぞよろしくお願いいたします」

「ふふ、こちらこそよろしくね。私もジェレミーみたいに『ベル』って呼んでいいかしら?」

「もちろんです」

「ありがとう。ベルもとても強くて驚いたわ。今度私とも手合わせしてみない?」

「いいんですか!?」

「ええ、是非」


 美しい令嬢達が嬉しそうに談笑している美しい光景は、何も知らない人が見ると甘いお菓子や綺麗なドレスについてなど女性らしい話をしているように見えるだろう。

 しかし現実は先ほどの技は何だったのかや、普段どんなトレーニングをしているかと言った貴族令嬢とはかけ離れた内容である。

 ベルナデットは知らないことだが、フェリシテも立派な脳筋だ。

 そんな2人の会話を横で聞いていたジェレミーは、令嬢ってなんだっけ、となんとも言えない顔になった。

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