幼いアリスは法律なんて知らない(ヒント:部活動は希望者三名以上いる時に認められる)
どうしてもヤンデレ企画にあげる予定だった話が纏まらず、けれど諦めるの悔しいので突貫工事で作成しました。
流血表現は一切ない、お手軽に読める凄くマイルドなヤンデレ先輩のお話になります!
「やぁ、今日は少し遅かったな。俺の可愛いアリス。今日はクリームブリュレのヨーグルトソルベ乗せ、ストロベリーソース添えだ」
調理室の扉を開けると黒兎先輩が優しく微笑みながら最後のトッピングであるとハートの形にした薄い板状のチョコレートをヨーグルトソルベの上に突き刺しているところだった。
可愛らしい赤いストロベリーソースの海に浮かぶ香ばしくキャラメリゼされたクリームブリュレの小島。その上には真っ白なヨーグルトソルベとハート型のチョコレート。
女の子が大好きな可愛いがこれでもと詰め込まれたデザートに思わず私は唾を飲み込む。
黒兎先輩の作るお菓子はどれも絶品なのだ。
一昨日は甘く煮込んだリンゴをたっぷり詰め込んだ焼きたてのアップルパイ、先週はほろ苦くもあちこちに甘めのチョコチップが散りばめられたティラミス。
このデザートも絶対に美味しいはずだ。太陽が東から登って、西に沈むのと同じくらい当たり前のことだ。
早く食べたい。そんな気持ちは黒兎先輩には筒抜けのようで「紅茶を淹れるから、手を洗っておいで」と苦笑交じりに言ってきた。
私は「はーい」と生返事をして、流しで手を洗い始める。
ちらっと先輩の方を見れば、これも慣れた手つきで備品のティーポットに茶葉を入れてやかんのお湯を注いでいた。
短く切って整えられた珈琲豆みたいな茶色が混じった黒髪と少し垂れた琥珀色の瞳。調理部なのに運動部の男子みたいに背が高くて、言動もすごい落ち着ていて。
とても一つ年上だと思えない、むしろ大学生だと言われた方がしっくりくるくらいだ。
「そんなに見つめてもデザートは逃げないぞ?ほら、紅茶の準備もできたから手を拭いておいで」
「先輩のそーゆーところ、嫌いです。そもそも、私はアリスって名前じゃないですよ」
手をハンカチで拭って、デザート皿が置かれたテーブルの前にある椅子に私は躊躇いもなく座る。
すると黒兎先輩は透き通った薄い紅色にも見える紅茶を白のティーカップに並々と注いで私の右手に置いた。
「俺のお菓子を美味しそうに食べてくれる女の子は俺にとってのアリスだよ。さぁ、ソルベが溶ける前に召し上がれ?」
「またそうやって話をそらして…。でも、デザートに罪はありませんから。いただきます」
両手を合わせて挨拶をした後、私はぴかぴかと光る銀色のスプーンを手にしてヨーグルトソルベとクリームブリュレを一緒に掬って、そっと口に運ぶ。
甘くて香ばしいクリームブリュレとさっぱりした酸味のあるヨーグルト、そこに甘酸っぱいストロベリーソース。サクサクした触感と冷たく解れる感触。
それが絶妙なバランスで混じりあって私は口元だけじゃなくて、眉が下がるのも感じた。
本当に先輩はいろいろ反則だ、こんな美味しいデザートを食べたら怒っていた気持ちもあっという間に無くなってしまう。
「美味しいか?」
「とっても美味しいです!!甘くてさっぱりしているだけじゃなくて、別々の触感も同時に味わえてすごく美味しいです!」
「それは良かった。クリームブリュレはまだもう少し時間がかかるが、ヨーグルトソルベなら今の君でも作れるから食べ終わったら一緒に作ろう」
「本当ですか?!嬉しいです!!」
黒兎先輩の言葉に私は目を輝かせる。私だって調理部の一員なのだ。作れるお菓子が増えることほど嬉しいことはない。
黒兎先輩のお菓子なら、尚のことだ。
「君は本当にお菓子が好きだな…。とりあえず、急がずにゆっくり食べて」
苦笑交じりの黒兎先輩の言葉に私は再び目の前のデザートに手を伸ばした。
ゆっくり食べてと言われたけど、溶かしてしまうのは勿体無いもの。
あーあ。なんで皆調理部に入らないんだろう?
こんな美味しいデザートが作れて、食べられるのにね?
読んでいただきありがとうござました!
大分ライトなヤンデレさんになりました!だから、アリスちゃんはずっと気づかないと思います!
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