何で俺だけ「本当の狙い」
俺がもし魔王じゃなかったら。そんな風に思ってしまった。
プレイヤーたちは互いに相手を倒そうと攻撃を繰り出し、また防ごうとし、守ろうとする。
もし自分が「プレイヤーだったら」使えていたかもしれないこれらのスキルや魔法などを、俺は羨望の眼差しで見てしまう。
(いいなあ?俺も完全に魔王を解放したら専用攻撃とか使えたりするのかな?早い所ポイント集めて次の解放をしたいなあ)
次のレベルアップ?と言えばいいか。必要なポイントがクソめちゃ高い。それこそエンドコンテンツと言って差し支えない桁である。
(絶対に運営は魔王を復活させるつもり何て無かったよな、これは)
そう思って差し支えない位である。桁を数えるのがほんのり億劫になるくらいの桁である。
(6千万ってどう言う事だろね?入って来るポイントはそれと比べるとなあ?)
これまでのプレイヤーから入って来ていたポイントの数を考えると、相当に気を長くして我慢強く行くしかない。
次にポイントがたまって「さあ次だ」と言った所でまたその次のレベルアップの必要量はいかほどか?
この六千万で次は無く、魔王の封印全開放だと言うのならば分かるのだが、そうじゃない気がするのだ。
俺がそんな風に考えながら試合を眺めていたら鑑定ができるプレイヤーのパーティと、忍者のパーティが対戦する。
既に第二試合までが終わった。半分は終わったのだ。こうして第三試合。
ここで思いもよらぬ事が発生した。ミャウちゃんが「始め」と合図した瞬間に忍者が消えた。六人居た内の一人だけは姿はそのままなのだが、他の五人が瞬時に開始の合図とともにその姿を消す。
「殺」
その短い言葉と共に俺へとその五人が一斉に攻撃してきた。俺の直ぐ目の前にこいつらは現れたのだ。
どうやら俺を暗殺する目的だったらしい最初から。試合も優勝賞品も視野には入れていない。只々俺を倒す、魔王を倒す、それを実行したと言う事だろう。
一人だけ攻めてこなかったのは観察役なのか、或いは注目を集めて他の五人への対処を遅らせる目的か。
俺は咄嗟の事に動けなかった。魔王とは言っても中身は所詮「普通の人」である。反射神経が良い訳では無い。
当然の事ながら、突然消えた事にも驚いたし、突然こうして目の前に現れた事にも驚かされている。攻撃してきた事にも驚いた。
だからこのトリプルパンチに咄嗟の対応なんてできない。混乱が一瞬で俺の思考を乗っ取る。
僅かにできた事と言えば座っていた玉座からスッと立ち上がる事。
でもコレは逆に悪手だった。冷静に俺を狙う刃が振り切りやすくなっただけ。玉座に阻まれる事無く狙える場所の面積が増えただけ。
だけどもこの忍者たちのいきなりの襲撃は失敗に終わった。さて、どの様にして終わったのかと言うと。
「このクソ共が。我らが王を暗殺しようなどと片腹痛い。全員私の障壁で押しつぶしてくれよう。」
ゲブガルだった。得意の魔力障壁で忍者五名をどうやら閉じ込めたらしい。中空に一纏めにされて浮いているその五名を囲う障壁が徐々に、徐々にと狭まって行く。
そしてとうとうその五名の体が互いに密着していく。だけならまだマシだ。それ以上にどんどんと忍者を閉じ込めている障壁は小さく、小さくなっていく。
こうなれば中に居る者たちは堪ったモノでは無い。このままで居れば待っている未来は確実なる「死」である。
圧縮されてそのまま消滅、それを悟った全員がその手の刃を障壁へと叩き付けて破壊しようとするが、無駄だ。
ゲブガルの障壁は頑強だ。こいつらがそれを破壊できる程の力を持って無い。
既にもう五名の内、三名が光の粒となって消えているくらいには小さく障壁は閉じられていた。
そのまま絞り上げる様にして障壁は閉じていく。そしてとうとう最後の五人目がプツリ、と消えた。
こうして忍者パーティの生き残りは姿を消していなかった一名を最後に残すばかりとなった。




