何で俺だけ「混迷を極める」
さて、プレイヤー同士の殺し合いにはポイントは入ってこない。なのでコレは純粋に俺には得にはならない。
「今日の魔物操作はまだして無いんだよね。魔物・・・ここにはあんまり強いのはいないからなあ。じゃあ、いっその事、城に一直線で向かって来ている奴らへけし掛けるのが面白いか。」
始まりの街周辺にはこれと言って強い魔物は存在しない。フィールドボスもここには居るのだが、そこまでの強さでは無い。そこは初めてこのゲームをする者たちにとっては強敵になるが、今のこの混戦をしているプレイヤーたちのレベルでは雑魚である。
逆にこの魔王の城の付近に居る魔物は非常に強い。だが、今のプレイヤーのレベルなら倒せない事も無い、と言った強さだ。
だからこそ、この城へと我先にと走り続けつつも他のプレイヤーへと妨害をし合っている集団にけし掛けるのが一番面白そうだと考えた。
「まあ、リスポーン地点が始まりの街に指定してるプレイヤーは死んでも直ぐにまた混戦に参加できる状態だしな。そこら辺の事は全く考えて無かったな。」
生き残っていれば、と言った点を考えると、この混戦は全く意味が無い。リスポーンしてもまた街から出れば直ぐそこには混戦がまたあるのだ。
脱落、そう言った事はやられたプレイヤー本人の決心次第だと言う事。コレはえげつない。
「混戦が無くならない訳だ。さっきから全然減らねえし。と言うか、この中に大いに愉快犯が混ざってるだろ、これ?と言うか、対人戦に飢えている奴らもきっと混じってるな?」
俺はそう考えた。そうじゃ無いとこの混戦している状況が一向に落ち着かない理由が見当たらないからだ。
まだ俺は始まりの街のその混戦している場所を観察している。青い点がちょくちょくと消えてはいくモノの、またどうにも減った分が増えて行っているのだ。
そこに大規模魔法が放たれて一気に減ったな?と思った時には直ぐに次々に街から青点が増えるのを見て確信する。
「おい、収拾付かないだろコレ?もしかしたら城へと一直線に向かっていったプレイヤーの方が選択として賢かった、と言う事か結果的には?」
始まってかなりの時間と言ってい良いくらいには経過した。したのに混戦が鎮まらない。
しかしここでミャウちゃんの報告が入る。
「魔王様、一部のプレイヤーがレイドを組んだようです。周囲を蹴散らし始めました。」
どうやら気が付いたプレイヤーがいる様だ。この状況を見て自分たち以外のプレイヤーを諦めさせるためにと、どうやらパーティをレイドへと移行したらしい。
「大規模魔法を連発しています。街の中から出てくるプレイヤーが大幅に減りました。・・・その出てきたプレイヤーへと即座に攻撃を仕掛けて再び直ぐに袋叩きにしています。」
ミャウちゃんの報告が続いた。そしてとうとうその時が訪れる。終息したのだ、そのプチ地獄が。
「報告します。どうやら街から出てくるプレイヤーが絶えた模様です。レイドを組んだ者達はそのまま城へと向かう様子です。」
「じゃあミャウちゃん、街からその後に出てきたプレイヤーはカットで。そのレイドパーティーに参加権(仮)と言う事で。」
「はい畏まりました。街から新たに出てくるプレイヤー共は始末しても?」
「うん、これ以上はもう脱落って事で。諦めて出てこれなくなったのか、或いは街の出口が詰まっていて参加したくても外に出られなくなってたのかは関係無し。どんな理由であろうと街の外に出てこれなくなった時点で他のプレイヤーは参加権ボッシュート。」
この展開になった事は奇跡に近いんじゃないかなと勝手に俺は思う。これほどに収拾がつかない状況でこれほどにあっさりと事が片付いたんだから、これは滅多に無い事だろう。
「レイド組んだパーティはそのままにして、ミャウちゃんは街の出口を少しの間警戒しておいて。無駄にこの後に出てこられて余計な混乱を持ち出してこられても困るし。それと宣言もしておいて。今街の中に居るプレイヤーたちは脱落だって。」
「分かりました。文句をつけてくるプレイヤーが居たらどの様な処理をすればよいでしょうか?」
「うん、そいつらはやっちゃっていいよミャウちゃんが。じゃ、宜しく頼む。」
俺はこうして始まりの街の観察を終えて「レース」をしている集団へと今度は意識を向けた。




