何で俺だけ「生温い」
この俺、ライドルは先日に魔王様からの激励を受けた。この塔に攻めてくるプレイヤーが現れるだろうと言う情報を魔王様直々に教えられたのだ。
これ程までに強くなる事ができたのは魔王様のおかげ。ならばこの強くなった俺が魔王様に返せるものと言ったら、奴らの命を捧げる事。
プレイヤーたちを屠れば屠る程に、魔王様の封は弱まり、そしていずれは解放される。世界は魔王様の統治の元に平和が築かれるのだ。
人などと言う愚かなる存在が魔王様の御力により、統一されるのだ。奴らの醜さは見るに堪えぬ。
俺の使命はそれをより早く実現させるためにこの力を振るう事。魔王様の期待に応える事。
「しかし魔王様の慈悲とは、どこまでも深く温かい。俺のこの身を心配してくださるばかりか、危なくなれば逃げろとおっしゃってくれた。俺が逃げた時、その「弱さ」は魔王様が責を持つとまで。プレイヤー共に負けた時にはその悔しさを持ってより強くなる為の力に変えればいいと。生きる事、生きている事が大事だと。今でもその時を思い出すと感動してこの身が打ち震える。」
魔王様の激励から三日が過ぎた日に奴らは現れた。これ程に正確な情報をどうやって魔王様は得られたのか?その御力の底が知れぬ。
「ふう、さて。生温いな。俺への対策がその程度とは。脚の早さでこの俺の弾を避け切る算段か?甘い、甘過ぎる。しかし、まあ夢を見させてやろう。」
ジグザグに走り来るプレイヤーども。そうやって狙いを定めさせない様にと工夫を凝らしているつもりなのだろうが、考えが浅い。
だが俺は先頭を行く一人を狙い、先ずは一発、真っ当に打ち込んでやる。
その一発はプレイヤーが斜め横へと跳んだ時に地面を抉った。そのプレイヤーは「避けた」或いは「狙いを外した」などと思った事だろう。
だが、これは当たらなかった訳では無い。俺が「ワザと」そうしたのだ。
「ふむ、もう奴の「癖」は見抜いた。残りの者たちを観察するか。」
俺は奴らの行動を読むため、それぞれ一人一人に一発ずつ「外して」弾を撃ち込む。
狙おうと思えば最初の一撃で全員を始末する事は出来た。しかしここは確実に「狩り」をする為にもプレイヤー共の動きは完全に把握をしておきたい所だった。
慎重になる、冷静に撃つ。コレは狙撃をする上で欠かせない要素だ。熱くなり過ぎる事はこちらの敗北を意味する。
しかし大胆さも時には必要だ。その判断力を養う事はどんな武器であっても大事な事である。
この愛銃とは長い付き合いだ。俺が冷静沈着で無いと、上手い事弾が飛んでくれない事は重々承知である。
この銃は特別だ。俺の魔力が弾丸となって敵を貫く。だから俺の中の魔力が乱れると、どうしてもその影響が弾に出る。
ソレは偏にその弾は俺の「意志」を乗せていると言う事に他ならない。
「さて、お前たちには愚なる決断をしたその結末を与えてやる。森から攻めてきている奴らのように盾を前に出して身を守りながら攻めて来ていれば、もう少しは歯ごたえのある相手だっただろうに。」
俺は引き金を引く。放たれたその弾は一番後方に居たプレイヤーの頭蓋を粉砕した。
一人脱落、その事を全く気づく様子の無い先頭のプレイヤーはひたすらに俺の居る塔を目指してその脚を止めずにいる。
しかしまだ遠い。その距離はその素早さを持ってしても塔への到着には時間が掛かる。
俺はその時間の間に次を狙う。また一人、また後方に居たプレイヤーが倒れる。
「夢を見る時間は長い方が良いだろう。各自がバラバラに動いて狙いを拡散し、こちらの動揺を誘っているのだろうが、お前ら全員の「癖」はもう見抜いた。塔に辿り着くのは無理だ。さて、次。」
また一人、また一人と消えていく。俺が引き金を引けば引くほどに、プレイヤーは確実に数を減らす。そして最後の一人。
「慌てているな。途中で気付いたんだろうが、もう遅い。お前で最後だ。では、さらばだ。魔王様の復活の為の贄となれ。」
最後の一人はこうして消える。こちらの方は全て片付いた。
「では、森の方へと目を向けるか。こちらはなかなかに厄介そうだ。・・・ん?馬鹿が現れたようだな。ならば遠慮無く・・・狩らせてもらうとしようか。」
一人、盾から姿を出し単独行動をして突出したプレイヤーに俺は狙いを定めて引き金を引いた。




