何で俺だけ「友の裏切り」
俺の笑いが治まった時、流石にこれ以上はと思った。こんなタイミングで爆笑ポイントが発生するとは思わなかったので仕方が無いと言う所はあるが。
「魔王様がこれほどにお喜びに。ゲブガルも本望でしょう。これほどまでに魔王様を上機嫌にさせられたのですから。」
ミャウちゃん大真面目。でも、そのしみじみとした空気を俺は無視してトンデモナイ行動に出ている。
「連打連打、ポチポチッとなっと。じゃあ俺、もう一旦上がるね。次にこっちにログインするのがいつになるかは分かんないや。じゃあ、後の諸々の事は頼んだよ。それじゃ。」
俺はポイントを全て振り込み終わるとメニュー画面にやっと出てきたログアウトの項目を選んで決定をした。ようやっとチュートリアルが終わった証拠だろう。
しかしこの時、ミャウちゃんの驚愕した顔を俺は見ていなかった。どうやら俺のポイント振りの有り得なさに驚いていたらようなのだが。
しかし俺はそれを直ぐにログアウトしたくてそっちを見ていなかったのだ。
こうしてログアウトするのに視界が黒くなり、俺の意識はゲーム専用ソファの方の自分の肉体へと移る。
「ぐっはー、どうするべ?先ずはアイツらに連絡するか。ゲーム内専用の掲示板で連絡は・・・俺が魔王になったから無理なのかなあ?じゃあこっちの端末から連絡すっか。あ、でも、この端末からゲーム内に指示が出せるんだよな?と言う事はこの端末がゲーム内に繋がっている訳で、そうなると迂闊な事口走れないぞ?」
俺はソファから起き上がって水を一杯飲んでから落ち着く。そして腕時計型の小型端末を起動して宙に浮くメニュー画面から友人への通信を試みてみる。すると。
「おー!どうしたんだよお前さー。十分くらい待ったけど連絡ねーし、飽きて戦闘に出ちゃったぞ?お前なにしてたんだよー。」
繋がった。俺はコレに謝罪をする。そして「魔王」と言う制限が掛かっているのでどんな言い訳をしようかとしどろもどろになる。
「あー、ゴメン。非常に、ひっ!じょーに!これには深い訳がありましてデスネ。何を言っているのか分からないと思うが、俺はこのゲームを遊んでいるのだが、遊べないんだ。」
「お前、頭どっか悪いの?と言うかさ、こっちもちょっとお前に謝らなきゃいけない事があってよー。でもコレもお前が遅れたからそうなった感じだから、悪く思うなよ?」
「おいおい、頭悪いけどさ俺、そー言うお前に言われたくないんだけど?で、何?先にそっちから言ってくれよ。」
俺は言い訳を考えるためにも先に友人からの件を聞く事にした。
「ああ、お前が来ないからさ。そのまま戦闘しようぜってなってな。ほら、このゲーム、1パーティ「六人」までだろ?でさ、最後の一枠、埋まっちまったわ。許せ、とは言わない。お前が来なかったのが悪いんや。」
衝撃だ。コイツ裏切りやがった。本来だったらそこに入るのが俺だったはずなのに、別のプレイヤーを仲間として入れてその枠を埋めやがった。
「おま!それどう言う事だよ!?つか、裏切り!ソレは断固としてやっちゃいけない!テメーは俺を怒らせた!いや、でも違う!そうじゃない!この場合は都合が良いのか?駄目だ、そうじゃない!俺がこんな事になったばかりに?いや、そうだったとしても!」
魔王なのだ俺は。結局は仲間と共に大冒険の旅に一緒に出られない。なのでこの展開は都合が良いのか?と考えたが、事後報告なこのタイミングは到底許せるモノでは無い。
「お前ソレは俺に断りを入れて、赦しが出たらやって良い事のはずだろうが!いきなり俺と連絡つかずに黙ってソレを断行するか普通!?約束はどうしたよ?俺とお前との間にある友情はどうしたコラ!」
この俺の怒りに友は謝罪を、いや、言い訳をし始めるのだが。
「すまん、これには深い事情が。俺たちが街の外に出ようと思っていたらな?門の側におどおどしたカワイ子ちゃんが居てよ?ソレで俺たちパーティ枠一個空いてるからどう?ってナンパしてさー。そしたらその子、ゲーム初心者だって言うから手取り足取り教えてあげようって事になってさー。その子、かわいいったら、ありゃしないんだよ!もう俺その子にベタ惚れヨ?」
「死ね!」
俺は通信をブチっと切った。




