何で俺だけ「状況確認?現状確認?」
アレから一週間が経った。ミャウちゃんが守っていた拠点は既に「変態」たちに踏破されてしまっている。
もちろんミャウちゃんには妨害を粘ったりせずにすぐさま帰還の命令を出している。出してはいたが、どうやらミャウちゃんは独自にそのプレイヤーの動向を探ってから帰還してきてくれたようだ。
「そっかー、そこまで「変態」だったかー。予想の斜め上過ぎ。」
その変態どもはマイちゃんがいたその場所を「占拠した」と言っていたらしい。どうやらマイちゃんがその場に居た「残滓」を自分たちのモノとして存分に堪能しようといった試みでいると言う事の様だ。
俺の読みは浅かったと言うべきなのか、そもそも変態の心理とやらを完全に読み取る事は不可能だと言う事か。
「あー、別にそんな事、理解したくも無いわ。寧ろ、理解できない方が喜ばしい事だな、うん。そいつらは放っておこう。ミャウちゃんどうも有難うね。お疲れさまでした。ちゃんと褒美を取らせたいんだけど、何がいい?」
「はい!あの・・・でしたら魔王様の御側にもう少しだけ距離を縮めても宜しいでしょうか?」
いきなりもじもじしてそんな事を言いだしたミャウちゃん。確かに俺が魔王としてログインした時に居た場所から一歩たりとてその距離を変えてきた事は無いミャウちゃん。
この求めに俺は別段どうって事無いからもっと近づいていいと言っておいた。
「なんか距離遠いじゃん普段から。だからむしろミャウちゃんもっと近くにいてくれた方が俺も話をやり取りするのに気が楽なんだけど。寧ろもっと近い距離に来てくれない?ミャウちゃん可愛いからさ、俺の目の保養にもなるし?」
この言葉にミャウちゃんがポッと頬を赤らめて「はい!」と大きな声で返事をしてきた事で、俺はちょっと例の事を思い出した。
(ミャウちゃん、もしかしてゲージが天元突破・・・まさかな?いや、悪い事では無いんだろうけど。今以上になったら扱いに困らないかな?)
そうは思ったのだが時すでに遅い。ミャウちゃんはいつものキャラが崩壊している状態でウッキウキである。
そして玉座の段差の直ぐ側まで来ていた。しかしそれ以上は上っては来ない。コレに俺はホッとした。
次にはこれ以上は深く考えない様にしようと思考を切り替えるために話題を変えた。
「ライドルの方はどんな感じ?ミャウちゃんがやってる「迷惑狩り」の途中でプレイヤーが話していた会話の中身とか聞かせてくれる?あ、あとバイゲルの方も。一応は掲示板の方では確認取ってるんだけどね。生の声を知りたい。」
この求めにミャウちゃんが「畏まりました」といつもの雰囲気に変わる。
「プレイヤー共は未だにライドルの狙撃への対応策は出来ていない模様です。寧ろ、どの様に攻撃をされているのかもまだ理解を出来ていない模様です。」
ライドルは狙撃を得意としている。そしてその弾丸の届く距離は「化物級」とか「チート級」と呼べる代物だ。
飛び道具で消し飛ばされていると言うのは認識はしているのだろうが、それがどれ位の距離から放たれているのかと言った所が認識できていないのだろう。
攻撃を受けてから周囲を警戒、かなりの長い距離まで探索をして見ても相手の姿が一向に捉えられない。そう言った部分がプレイヤーたちに混乱をもたらしているのかもしれない。
「しかし攻撃される方向は一定と言った事から、その点を重要視して作戦を組み、挑み続けているプレイヤーもいる模様です。」
切り崩すためのヒントは存在する。諦めずに挑み続けるプレイヤーも少ない数ではあるが居ると言う。
「まだまだライドルの方は攻略はされないかな?じゃあ次はバイゲルは?」
ゲブガルが攻略されてしまったので油断はできないが、それでもまだまだライドルの方は大丈夫だと判断をしてバイゲルの事を聞いてみる。
「はい。あの館の罠で相当な量のプレイヤーが屠られているようです。しかし中には館からバイゲルがワザと逃がすケースもあるようです。」
俺はコレに「どう言う事?」と首を傾げた。そして少し考えた。
「いや、まあ、逃げられてしまうのならば、そいつは運が良かったと言えばいい、のか?なんだ?おかしいな?バイゲルワザと逃がすの?え、それってどうなの?」
四天王がワザとプレイヤーを逃がす、と言うのが気になる。バイゲルは俺に確か面会した時にプレイヤーを魔王へと捧げる生贄にする、などと言っていたと思うのだ。
生贄、なんてかなり響きがホラーな発言だが、じゃあコレは「人っ子一人生きては帰さない」と言う事ではないのだろうか?
「バイゲルはその点でどうやら独自の考えがあるようです。その考えと言うのが・・・」
ミャウちゃんがバイゲルに聞いた説明によると、どうやら恐怖を与えて屋敷に侵入するような気を二度と起こさせない様にする為、だと言う。
そうすれば自らが倒される危険が減らせる、魔王の城に入る鍵を守る事にもなる。プレイヤーたちも程良く撃滅して魔王へのポイント還元、と言った狙いらしい。良く考えてあるんだな、と俺はコレに感心した。
考えても見たら、そもそもNPCなのにここまでの事を自らで考えられる自立思考AIなのだ。その事実に震撼する。
1キャラ、1キャラ、性格付けもされていてまるで「生きた人」を相手にしている様な感覚を受けるこのゲーム。
所詮は「本物じゃない」と切り捨てる事ができる人もいるだろうが、俺の場合は逆だ。余りにもリアルで、それこそ愛着、情が湧く。
彼らがプレイヤーたちにやられてしまい、消えてしまう事を想像したら、もの凄く嫌な気分になってしまった。四天王は殺されたら二度と復活はできない仕組みだ。プレイヤーと言う立場とは違う。
(あれ?そうしたら俺も魔王が「やられてしまったら?」復活できないんじゃね?・・・うお!?マジか!?)
もちろんやられるつもりは俺にはサラサラ無いのだが、それでもこうしてまた一つ、自分のこの「魔王」について考えておかねばならない事が増えてしまったのだった。




