何で俺だけ「とうとうその日がやってきた」
その翌日、とうとう最前線組がゲブガルの攻略に乗り出した。それは俺がログインした丁度に報告が入ったのだ。その報告はゲブガル本人からのモノであった。
『魔王様、報告いたします。どうやらこちらにプレイヤー共が侵入して参りました。迎撃を行います。どうにも大人数での討伐隊を組んでいる模様です。それと、どうやら今回は様子見などでは無く、本気のようです。』
「あー、無理は禁物、しっかりと退路の確保と退避が確実にできる様にしておく事。命が危なくなればすぐに引き上げてこっちに生きて確実に戻ってくるように。プレイヤーを道連れ、とか行った思考は駄目だよ?死んだらそれっきりなんだから。俺の役に立ちたい、と思ってくれてるなら、ちゃんと危なくなったら恥も外聞も捨ててコッチに逃げて来てくれよ?相手の挑発があっても絶対に乗らない様に。これ、命令ね?」
俺が侮辱されたり、笑われたりしても決して激昂しない様に、と事前にこれらについては言い聞かせてある。
もし彼らが撤退をしないでプレイヤーとの戦闘を継続するようなパターンは?と考えた時にコレが一番最初に浮かんだのだ。
四天王の「魔王」への忠誠はかなり高い。しかも、俺が彼らのパワーアップを最優先でした事でどうにもその高さが増々上がっているようなのだ。
コレは逆に考えると俺をネタにして挑発されでもしたら「釣られる」要因だ。なので俺はしっかりとその点を言い聞かせてある。
幾つかの罵声や侮辱の言葉を挙げて「例え話」を四天王一人一人に聞かせたら、あらまあ本当に見事に怒ったり、憤ったり、と誰もが同じリアクションを取ったのだ。
そのエネルギーの大小は違いが各自あれど、それでもそんな事ではきっとプレイヤーへと突っ込んで行きかねない、と言ったくらいだった。あの争いは苦手だと言ったマイちゃんですら、である。
なので一応は魔王からの厳命として何度も言い聞かせているので大丈夫だとは思うのだが、それでも少し不安だったのでゲブガルとの「中継」を切らずにそのまま俺も戦闘の状況を把握する事にした。
コレにゲブガルが「奴らの悲鳴を魔王様に捧げましょうぞ」と一層に気合が入っていた。
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こうしてプレイヤーたちが私の前に辿り着いた。どうやら道中の仕掛けてあった罠はこのメインパーティー以外が受け持って処理をし、全体の消費を抑えていたようだ。
私が控える最後の部屋に現れた六人が主力として戦う様で、1パーティーのみで挑むらしい。舐められたものだな、とは思うが油断は禁物だ。散々魔王様からはプレイヤーたちへの警戒を怠るなと言われている。
おそらくは私の判明している能力の「裏」を掻いた作戦を練りに練って来たに違いない。でなければ目の前の六人の自信の現れた表情の説明がつかない。
こうして私とプレイヤーとの戦闘は開始された。先ず攻撃を仕掛けたのは巨大な剣を持ったプレイヤーだった。
ガキン、と金属が固いモノに当たって弾かれる音が始まりの合図だと言わんばかりにプレイヤーたちは散開した。どうやら私の仕掛けた罠に全員が纏めてかからない様にする為のようだ。
コレは私を倒すつもりなら基本となる行動だろう。落とし穴を発動されてそこに全員が落ちてしまえば纏めて始末されてしまう。それは最も愚かな行為だからだ。
そしてその散開するにあたってどうにも「安全地帯」を看破したプレイヤーがいる。あまりにもスムーズな動きでプレイヤーたちが陣形を組むので私はコレに苦い顔をせざるを得ない。
「なるほどな。私への対策として罠を見破るのを得意とする者を入れたのか。しかし、そ奴は私への攻撃には全く用を為さないらしいな?ならば・・・大剣の方か?それとも・・・大斧の方が私を仕留めるための攻撃を持っているな?」
大剣、大斧、この二名がどうやら私の命を刈り取る為の要員らしい。そう読んだ私はこの二名へと注意を多めに向けざるを得ない。その攻撃力の高い一撃が私へとめり込めば、魔王様の命令を追行できないからだ。即死である。
コレはかなりの緊張を私へともたらした。プレイヤー共は私を確実に仕留める事ができると判断したからこそ、こうして私の前に現れたのだ。ならば私はこやつらを撃退できない可能性が高い事を考慮しなければならなかった。
魔王様からの命令、それと、このプレイヤーの実力、それを踏まえてこの場の対応を組み立てねばならない。
しかしプレイヤーに「罠士」がいるようで次々に仕掛けておいた罠が解除されている。これにはどうにも私は手出しができずにいた。
私の障壁へとしつこく攻撃を仕掛けて来る大剣使いに気を向け過ぎて、新たな罠を仕掛けると言った所に神経をあまり向けられないのだ。
この部屋の中ならば私は自由に罠を出したり消したりできる。しかしそれには相応の魔力をそちらに割いて罠の設置へと意識を向けなければならない。それが大剣使いによって阻まれていた。
それはどうにもプレイヤーの中に「附与師」がいる事に因ってこの大剣使いに「力の増大」が掛けられているようだったからだ。
罠の方へと魔力を割いた場合に障壁を抜かれる危険性を孕んでいた。障壁を抜けられてしまえばそこに間髪入れずに大斧のプレイヤーが追撃をしてくるだろう。
間に合わない、それが私には分かった。障壁を砕かれたら、再度張るまでの時間差で一瞬に距離を詰められて一撃を貰う事になる。そうなれば私は御終いだった。魔王様の御命令を守れない。それが一番厄介な部分だ。
厄介と言えば、どうやら回復の種類の職業だろう者が大剣使いへと補助を入れている。金色に光る魔力を大剣使いへと纏わせているのだ。おそらくは体力を回復させる魔法か何かだ。
先程から疲れも見せずに大剣使いは連撃を繰り出し続けてきていた。私の障壁はそれでも破壊はされていないものの、こうも連撃が止まらずにいればこちらもその点に注意を向け続けなければならない。
このプレイヤーたちは私の障壁を絶対に壊す手段を持っている。そうでなければこうして私の前に現れる事など無い。攻略できる見込みが無ければこれほどに激しい攻撃を続けてくるなどあり得はしないのだから。
そして未だに全く動かない一名は魔法を主に使う職だと言う事は推測できたのだが、その動かずにじっとしている事が私には不気味で仕方が無かった。




