攻略!悪魔王編!「色違いにしか」
魔王から託されたこの「球」が自動で発動してくれると楽だ。と言うか、そうであって欲しい。
もしこれが使うタイミングをこちらに依存したモノであったならば、どうやって使うのか?何処で使うのが良いのか?その効果は?
などなどが一切分からない。これでは詰みだ。
なので出来るだけ悪魔王に近付く。使うにしても悪魔王を目の前にしなければならないだろうし。
(あー、でもコレがもしプレイヤーに使ってパワーアップするとか言った展開になるんだったら、コレも無駄だなぁ)
多分悪魔王の一撃で簡単に僕は死ぬ。そうしたら経験値が大幅に削られてレベルがダウン。それは避けたい。
避けたいけどもうこの勢いを止める事は不可能だ。魔王がどうなったか何てのも振り返って確認する事は出来ない状況だ。
使い道が、使い方が、使い処が、間違っていれば僕はこの後に瞬時に返り討ちにされ死に戻りである。一応僕はプレイヤーなのでやられても復活は可能だが。
だけどもレベルの下がり具合によってはこのイベントにはその後の直接の参加が不可能になってしまうだろう。アタッカー役を務める事に不足が出て支援役に回される事になる。
ここ最近は検証班でデスペナルティの経験値ダウンにおける法則などは少しだけ解明されているのだが、このイベントでその法則が通用するのかは全く分からない。
(そう考え事してたらもう目の前に悪魔王が・・・と言うか、本当に魔王そのまんま白くしただけじゃん。ぷぷッ、只の色違い乙)
僕の笑いのツボはどうやら妙な所にある様だ。思わず心の中で笑ってしまい力が抜けて悪魔王に向かって走る速度が微妙に落ちた。
僕以外のプレイヤーだとこの恐ろしい外見の悪魔王に近付けばその迫力にたじろぐ者も多いだろう。そのせいで近づく事に躊躇いが出ると思える。その躊躇いで落ちるだろう接近速度は今内心で笑っている僕よりも相当に大きくなるのではないかと思う。
これまでに長くその迫力に晒されていた僕にしてみれば、悪魔王は只の魔王の色違いキャラにしか見えず、別段コレと言って近づく事に抵抗が無い。
そうやって悪魔王まであと2mと言う所まで来て光った。何が?と言われると、あの「球」がである。
この光で悪魔王がこちらに顔を向ける。その表情は何とも忌々し気である。
【糞虫どもの分際で・・・】
ここで光った「球」は一つだけみたいな様子だ。光った事で五つ入っている袋の中身の陰が解る。全てが光っている訳では無く一個だけがその存在を主張する様にして光を発している。
しかしその効果はどうやら凄まじいモノだった。僕が振った剣が悪魔王に掠り傷を負わせたのだ。見えない壁に弾かれずに。
(呆けてる場合じゃない!これ位の予想は最初からしてた!)
そのまま続けて二撃目を狙って剣を振ればソレを悪魔王が咄嗟にバックステップで躱した。
(いけるのかこれ?でも・・・踏み込めないな)
悪魔王は僕の方をもの凄く、それこそ「親の仇」とでも言わんばかりな視線で睨んできている。
警戒心が最大になっている今、ここで追撃、踏み込んでもこっちの攻撃を当てられるとは思えない。
そこでふと小袋の重さが気になった。軽い。しかし中身を確認する隙なんて無い。
(多分「球」が一つコレで無くなったんだろな。じゃあもう攻撃が通らない?)
ここで流れが変わったと即座に感じたのだろうプレイヤーが一気に三名踏み込んできた。この攻撃を悪魔王が躱す。
そう、躱した。これまで一歩もその場を動きすらしなかった悪魔王が。
プレイヤーの剣は弾かれなかったのだ、あの見えない壁に。コレは恐らく「球」の効果だ。
しかしこの効果が永続的なのか、或いは今だけ一時的なのかは判明しない。
「畳みかけろ!」
僕は咄嗟にそう叫んでいた。