攻略!悪魔王編!「この程度でやられていた位ならホント、楽だったんだけどな」
取り敢えず魔王はあの「球」を持ち込んでいた。ちゃんと全部だ。
最終決戦と言う事でこの場以外には使い道が無いと考えての事だろう。
このイベントが終われば本当に本格的にこの「球」の使い道が分からなくなる。ヒントも無くなるだろうから。
それらを取り出して首を傾げた魔王。僕もその手の中の「球」を見てうーんと唸る。
「ねえ、これがもし何の役にも立たないとかになったら、このイベント負け戦だよね?その後の展開ってどうなるのかな?」
「ケンジ、俺は「魔王」だけど「プレイヤー」だし、そう言うのは運営に問い合わせ、しても答えてくれないモノだよ?疑問に思っても誰も答えちゃくれないさ。」
「あ、二回目の衝撃波が・・・マズいよ魔王。参戦しよう。」
「あー、ホントだ。一回目よりもまだマシみたいだったけど、こりゃイカンね、本格的に。」
僕らは遠くで高みの見物、もできない状況になった。プレイヤーが誰も悪魔王に攻撃しなくなったのだ。
どんな攻撃をしても無駄、なのでどうやらあの「見えない壁」の攻略に敵の観察へと方向転換したみたいだった。
「ソレも悪手になるとかなったらもうお終いだろうなぁ。もうその「球」が自動で発動してくれる事を祈るしかないね。」
僕はそんな事を言いながら走り出した。丸薬片手に持ちながら。即座に飲み込んで悪魔王に一撃見舞えるようにする為に。
馬鹿正直に真正面から襲い掛かる愚はしない。けれども普通に僕が斬り掛かっても多分コレまで攻撃していた近接戦ジョブのプレイヤーと結果は全く変わらないだろうと思う。幾らステータスが僕の方が高いだろうとしても。
それにプレイヤーは自分に能力アップのスキルや魔法付与を掛けての攻撃だっただろう。それで弾かれているのだから物理攻撃を完全に無効化する代物なのだと推測できる。
そんな事を考えながら走る僕の横を魔王が並走する。だけども何だかその顔はいつもの感じじゃ無い事が簡単に察せられる表情だった。そして。
「悪魔王は背後から来る俺たちの事を分かってるみたいだよ。あー、ほら、ゆっくりとコッチ振り向いてきやがった。」
そう言われて僕はハッとした。遠目から分かったのだ。まるでこちらの事など気にもしていない様にゆっくりと、だがしかしハッキリとこちらを警戒した顔つきで睨むようにして魔王を見ているのだ。
【貴様、よもやその様な恰好で紛れ隠れていたとは。どうやら虫けらとしてこの我に屠って貰いたいらしいな。ならば有象無象として処理してやろう。こやつらを全て片付けた後には貴様の事など全て忘れてやる。取るに足らない存在としてこの場で我の手に掛かって死ぬがいい】
初めて動きを見せた悪魔王がこちらに手のひらを向けて来る。今までずっとプレイヤーに攻撃されている間を直立不動だったにも関わらず。
「あー、ケンジ、これ持ってて。どうやら悪魔王さん、俺の事が殺したくて仕方が無いらしいッポイ。うん、本当に迷惑。」
僕はその袋を掴んだ後は直ぐにその場を横へ離れた。次の瞬間には黒い光、そしてそれに赤い稲光の付いたエフェクトの柱が魔王に命中していた。
(まあこの程度で魔王が死んでいたら既にこうなる前にプレイヤーに倒されてるだろうし、今ここにきっと存在しないんですけどね)
未だにヤバい状況なのは変わらないし、悪魔王の透明な障壁の問題も解決して無い。
なのに僕はそんな呑気な事を考えながら悪魔王の背後に回る様に即座に移動していた。