攻略!悪魔王編!「開始前準備」
「ケンジ、随分と疲れた顔してるけど、大丈夫?これから最終戦なんだけど。」
「うん、大丈夫だよ。ちょっと師匠に捕まってアレもコレもって弄ばれただけだからね、ハハハ・・・」
「それ、本当に大丈夫なヤツか?」
俺はケンジにツッコミを入れた。しかしケンジはこれに「思い出したく無いからそれ以上は・・・」と追及をしないでくれと言われた。
取り敢えず本気でケンジの精神がヤバそうだったので俺はそれ以上聞くのを止めておいた。
「さて、何が出てくると思う?俺としてはもう悪魔王が出て来て良いんじゃないかと思ってるんだけど。」
「うーん?まだ悪魔王編が開始されてそこまでの期間経って無いからラスボスが出て来るのはまだちょっと早いかなぁ、と考えちゃうんだけどね、僕は。でも、今の状況を作ってるのは僕たちのせいだと言っても過言じゃ無いからなぁ。」
まだ開始十五分前だ。しかし俺たちは既に入れる様になったこの最終戦イベントフィールドに移動してこの様な会話をしている。
俺たち以外にも既に準備万端と言った様子のプレイヤーたちがまだか、まだかと言った感じで集まっていた。
「このフィールドって何も無い荒野じゃん?前回の時とは全く違うし、やっぱりこれってアレかね?ここで悪魔王と戦わせる気かね?ケンジはどう見る?」
「それだと生産職とかが活躍できなさそうじゃない?ラストバトルなら救援物資とかじゃんじゃんバリバリ、湯水の様に使えないと悪魔王倒せ無さそうでしょ、このフィールドの雰囲気だと。」
戦闘職なら軽く耐えられる攻撃も、生産職が食らえば一撃死、何て事は当然に起こる。
この様に何も無いフィールドでは生産職は自身を守る為の何かが無ければ即座に退場となりかねない。
敵の広範囲魔法などに引っかけられただけで光と消える可能性が高いのだ。そうなればこの最終戦は生産職にとって非常に厳しいモノになってしまう。
「かなり広いから即席で拠点を一から作り上げるって手もあるけどね。と言うか、ゾロゾロとこのタイミングでプレイヤーが大量に現れたけど。もしかして生産職?やるの?マジで?」
俺は次々にイベントフィールドに現れるプレイヤーを観察してみたが、誰も彼もが直ぐに土木工事を開始し始めたのでびっくりだ。
今回の最終戦も前の時と同様に開始前からこの様にしてプレイヤーが自由に動き回れる仕様だった。
なのでどうにも生産職は今回、全力でこの場に拠点を作るつもりらしいのが分った。
「目の前で早送りを見てる感じだね。ちょっと気持ち悪いくらいだよ、コレ。」
ケンジが呆れたと言った感じで生産職の仕事っぷりの感想を述べる。
俺の目にもソレは視界に入っている。プレイヤーたちのその仕事の早さはジョブの恩恵とスキルの相乗効果なのだと思うのだが、出来上がっていく速度が異常だ。
あっと言う間に出城?ソレが出来上がったのだ。もしかしたら陣形効果なども追加でこの分だと建築速度へとプラスされているのだろう。
急造だと言えども城は城だ。これを拠点に生産職はアイテムをバンバンと戦闘職たちに提供するのだろう。準備は万端と言った感じだろうか。
そうして開始五分前には今回の最終戦に参加するプレイヤーが出そろった様だ。何人居るのか?数えるのが難しいくらいの人数である。それこそ万を超えるのだろう。
そのプレイヤーたちは出来上がった出城の前に陣形を組んで並び始める。俺たちはソレを城から遠く離れている所にあった大きな石の上に立って眺めていた。壮観である。
【開始一分前になりました。準備は宜しいですか?】
開始アナウンスが入る。ざわつきが止まらずに居たプレイヤーたちが一斉にコレに静まり、緊張が走る。
【それではこれより、悪魔王編戦争イベント最終戦、開始となります】