攻略!悪魔王編!「失言、自ら危険に飛び込んでしまった」
僕はあれからログアウトしてから直ぐに睡眠を取った。今日はイベントで夜更かしとなってしまったのでさっさと寝てしまう。
翌日には目覚ましが鳴ると直ぐに起床する。このゲームを始めてから規則正しい生活と言ったモノを目指して生活しているのだ。
ソレは続いている。とは言っても僕はそうは言えども引き篭もり、世間様に向けて偉そうな態度は取れない。
「次の最終戦ってのに向けてそれまでに僕が準備しておく事ってあるかなぁ。」
朝の一連のルーティーンを熟しつつそんな事を考える。それを終えたら早速ログインだ。
「久しぶりです。何かこっちでは変化あったりしましたか?」
「ふむ、どうやら昨日に悪魔とのぶつかり合いがあったらしいでは無いか。ワシも参加したかったわい。奴らとの戦いを許されておるのが「プレイヤー」だけとは、少々納得イカン所もあるが、まあ神の決めた事、こればかりはしょうがあるまい。」
師匠はそうやって不満を漏らしつつも僕に木剣を放って来る。どうやら即座に修行を僕にやらせるつもりらしい。
僕はちょくちょくこれまでも時間ができた時はこうして「始まりの街」に行って師匠やら武器屋やらマウラスの所に顔を出している。
マウラスなどは僕が持って来た魔王国で開発された薬のサンプルや、狩った魔物の素材や採取した植物、鉱物などを渡すとテンションMAXになる様になっていた。
仕舞いには戦争イベント前に「魔王国に移住します!」などと言って僕に魔王国迄の護衛依頼をしてきたりもした。
その時の僕はマウラスから「私も魔王国で沢山沢山たーーーーーーくさん!研究したいです!」との欲望解放の声を上げられて随分と驚かされた。
設定上は「神」が「魔王」を討ち果たす為にこの世界に遣わしたのが僕ら「プレイヤー」なのだが。
そこら辺の事はマウラスには何ら関係無いとばかりに僕にぐいぐいと迫って来られてなだめるのが大変だった。
どうやらどんどんと僕が素材やら、魔王国で開発された薬などを渡すのでソレが発端となったらしい。もっと自由に、そしてもっとディープな開発、研究をしたいと強く願う様になったのだそうな。
僕も僕でサンプルとして渡した薬の出所をつい口が滑って教えてしまったのがいけなかったのだが。
(まあ連れて行ったよね、普通に。そこで魔王との面会もさせたけど、まぁ~あの時のマウラスと言ったら無かった。魔王相手に一歩も引かずに「研究したい!」熱をバンバンぶつけてて、魔王引いてたもんな)
「考え事とは余裕じゃの?ホレ。」
その時の事を思い出していたら師匠から鋭い一撃を放たれて背中が冷えた。辛うじて防ぐ事に成功している。
これでも、もうかれこれ一時間程は師匠と打ち合っているのだからそろそろ勘弁して欲しい所だ。
「良し、休憩じゃ。集中力が切れて来ておるじゃろ。まだまだ未熟じゃわい。そんなお前を相手にボコボコにするのが最近のワシの楽しみじゃて。かっかっか!」
「あんまりワラエナイんですけどね、僕としてはそれ。」
大きく呼吸を一つしてからやっと僕は肩の力を抜く。まだまだ師匠の強さには手が届かない。
これまでに師匠に会いに行くとこうして修行を付けてくれるのだが、その度に様々な武器での訓練をさせられている。
トンファー、鎖鎌、鉤爪、その他もろもろ変則的な武器から暗器の類まで。ついでに素手での格闘術までやらされた時もあった。
「今のワシの楽しみは如何にお前に戦い方を仕込むかだからのぅ。どんな状況にも対応できる様に、そしていつかワシを超える強さを持って貰うぞ?」
「ソレって何時になるんですかね・・・ははは・・・」
コレに僕は乾いた笑いを返すくらいしかできない。そこから話題が変わった。
「それにしてもお前の装備も良いモノに変わったでは無いか。・・・魔王とつるんでいるとはワシも驚きを隠せん。そのおかげで今のお前の強さがあるのは、何だか気に入らんが、まあ良いじゃろ。」
「師匠までそんな事を言うんですねー。マウラスも何か「そんなの関係ねぇ!」みたいなテンションだったなぁ。」
「最近になってプレイヤーの装備が充実しとるのも「魔王」のせいなんじゃろ?これが良い事なのか、悪い事なのか、ワシには判断ができん。神がこの動きを許しておるのが全く以てワシにはさっぱりじゃ。」
僕は魔王国とこの始まりの街を行ったり来たりだ。その際に世話になった武器屋に魔王国製の武具を卸している。
そこでその武器屋に訪れたプレイヤーがバンバンそれらを買って行くのである。そこでプレイヤーは装備を揃えて充実しているのだ。
まあ魔王国からすれば二段も三段も格落ちしている装備を流しているに過ぎないのだが。
当然これに「運営」=「神」は何も介入してこないと言う形になっていた。なので師匠のこの言葉もしょうがない事である。
「師匠、まだこれから最終戦ってのが残ってるんですけど、何か良いアドバイスとか、準備しておく事ってあります?」
師匠に助言をして貰う為にそんな事を聞いてみた。僕には思いつかない様な案を出してくれたら、などと軽く考えての事だったのだが。
「ならばそれまでみっちりとワシが稽古を付けてやる。なに遠慮は要らん。ほれ、逃げるでないわ。」
ニッコニコの師匠の笑顔、これに即行で逃げようとして襟首掴まれて失敗した僕。
「・・・よ。宜しくお願いします・・・」
僕は失言を後悔する。こうして僕はヤバイ地雷を自ら踏みに行ってしまったらしかった。