攻略!悪魔王編!「中央から」
二手に分かれる、そう言った判断をしてケンジと別れた。俺の方が遊撃、ケンジが防衛だ。
生産職たちが拠点を張っている砦を見渡せる場所にケンジは向かう。俺の方はと言うと、どの方角に向かえば良いか悩む。
「フィールドが広過ぎて単独であっちこっち見て回るにしても時間もかかるし、移動距離が半端無いしなぁ~。」
結局は斥候をするにしても見に行く方向も決まっていなければ、方針も決まっていないのだ。
漠然と「もしかしたら敵奇襲部隊が動いてるんじゃね?」と思っているだけで具体的にソレが何処に居るのかすら分からないし、それをやってくるかどうかも判明していない今の状況だ。ツッコミ所満載である。
「悪魔軍がやって来た方向に真っすぐ向かってみようかな。それ位しか思いつかないな。」
中央メインの戦場は硬直している状態だ。第三悪魔の特徴を持った雑魚悪魔は硬く、プレイヤーはコレを倒すのに時間を要している。
包囲してタコ殴りにして殲滅しようとプレイヤーは動きを見せているのだが。ここに追加で悪魔軍が押し寄せて来るとプレイヤーは磨り潰されかねないと言った感じである。
「それを俺が圧し止める、で良いのかね?そうなると他に奇襲部隊が砦に向かっていたりしたら、ケンジに頑張って貰うしか無いか。プレイヤーが持ち堪えられれば良いんだけどねー。」
俺は動いた。気楽に。そもそもこのイベントで俺は別に貢献度を稼ごうと言った気持ちは余り無い。
この戦争に参加しただけでプレイヤーには参加賞が与えられるのだ。今回の俺はソレを貰えるだけ有難いと考えていたのだ。
アバターが「魔王」のままでは参加できなかったのに、こうして変装セットで「プレイヤー」の姿に変わった事で参戦が許されたのは幸運だ。
本来だったらこの御祭に俺は入れなかったのだから、それ以上に高望みはしてはならないだろう。
ただでさえちょっとこの「悪魔王編」で俺は暴れ過ぎてしまった。このイベントの主役はあくまでも「魔王」では無い。プレイヤーなのだ。
あんまりにも「魔王」が出しゃばり過ぎてしまうとプレイヤーのヤル気を削いでしまいかねない。そうしたらこのゲームの寿命も著しく減ると言うモノだ。
遊戯人口が多ければ多い程にこのゲームの存続が安泰する。愛され続けてウン十年、そんな存在になって欲しいモノである。
その為には「俺の勝利」では無く「プレイヤーが勝利」して貰わねばならないこのイベントは。
「上位入賞には豪華なアイテム贈呈とか言ってるけど。そんなプレイヤー同士で競争する様な要素を入れてくるなんて、運営は狙ってるとしか思えないんだけどなー。」
こういった部分は悪い方向に傾けば「足の引っ張り合い」に化けかねない。
自分だけが良ければイイ。そんな方針で自分勝手に動く者たちが多く現れれば現れる程にイベントの負けが近づく。
イベントは「戦争」と言った形である。ならばそう言った身勝手な行動を起こすモノが現れたら連携も協力もあったモノじゃない。
そこから打ち崩されて劣勢に、何て展開になれば目も当てられない。
「なるべくならそう言う事にならない様にする為に俺は動くつもりだ。とは言ってもそう上手くは行かない可能性の方が大きいが。」
俺は一人だ。この広いフィールドで戦場が幾つも発生してしまったら、その対応がこの身一つで全て賄えるはずが無い。
「まあ俺が目指すのは最終的には最低でもプレイヤーの「勝利」だからソレを考えて動くけどさ。」
どんなに波乱が待ち受けていようが、プレイヤーたちが醜い争いを起こしてしまおうが、最後の最後で戦争の勝利が収められればそれで良い。
終わり良ければ全て良し。それ位の軽い感じで事に挑んだ方が身体の硬さも程良く取れて緊張感も心地良い物に変える事ができるだろう。
「楽しめないのが一番辛いしな。勝っても負けても終わりの感想が「楽しかった」ってなった方が誰だってイイに決まってる。」
もちろん勝って事が終わる方が負けるより良いのはもちろんであるが。
そんな事を思っていたら地平線に砂埃が上がっている。こちらにソレはどんどんと迫って来ていた。
やはりこの中央戦線に追加戦力を投入するつもりだったのだろう。悪魔軍の姿が見えて来た。
「コレを俺がある程度抑え込むのかぁ・・・どの程度の数を残せば丁度良いかね?」