攻略!悪魔王編!「まだ出番はここじゃない」
このイベントの専用フィールドは馬鹿広い。林や岩山、川も流れていて湖やら砦などもあったりする。
これらの地形や特徴をプレイヤーは事前に調べる事が許されていた。
なので大規模クランが斥候を大量に出して有利に敵を叩ける場所などの調査がかなり進んでいた。
生産職も今回は多く参加してたりする。これは物資補給を目的としたものだ。
回復系、パワーアップ系アイテム、武器防具のメンテナンス、などなどの提供の為だ。
このイベントは「貢献度」なるポイントを稼ぐ事になるので生産職も別段戦闘に参加しないとダメと言った事は無い。
そしてメインとなる戦場になるのは何も無いだだっ広い草原であった。
そこで最大規模のクランを中心とした陣を張っていた。この草原はフィールドの大体中央と言った位置にあり、ここで悪魔軍とバチバチにやり合う予定なのである。
「魔王はいつのタイミングで割り込むつもりなの?」
「ケンジこそ、今回の為に用意して貰った武器で暴れるんでしょ?丸薬使って暴れるって言ってたよね?」
俺とケンジはこの中央のぶつかり合いを最初様子見するつもりだ。
今回のイベントはなるべくプレイヤーがピンチに陥らない様に立ち回ると決めてあった。
それこそ「魔王」単独で悪魔軍の中に入って行ったとしても、きっと勝てるから。
ソレは流石にやっちゃいけないだろうとケンジにツッコミを入れられてこうして最初は中央でのプレイヤーの動きやその強さを見てみようと言った具合である。
で、今はもう既に戦闘が始まっていてプレイヤー、悪魔軍双方は真正面からぶつかり合っている。
「全然押し込めれて無いね。第三の雑魚悪魔が壁になってて崩せてないじゃん。硬いからと言っても倒せない事も無いって感じ?時間が掛かるだけかな?魔王、コレ行っておいた方が良いんじゃない?」
「えー?俺が行ってアレを隅から隅まで倒すの?戦場の広さどれ位あると思ってるの?」
運営は悪魔軍の表現を「万を超す」と。正確な数字は明示されていないが、もしかしたらこれが「十万」かもしれないし「百万」かもしれないのだ。
たったの一万だけ、と言ったそんな事は有り得ないだろう。超すと言うのだから後詰めがもっと用意されていた場合、今出て行って俺が片づけると言った事はやりたくない。
今の場面で「助かる」「楽になれる」と言った感想を持ったプレイヤーが安易に俺の力に頼って来ると鬱陶しい。だからまだこのタイミングでは出て行きたくは無い。
俺たちはこの戦場を遠くから眺められる小高くなっている場所に居た。そう遠くも無く、近くも無い場所だ。
こんな所にプレイヤーが二人居たとしても誰も近寄って来ない。「戦闘に参加しろ」などと一々言いに来るプレイヤーは居ないのだ。今はそんな呑気な事をやっている場合じゃ無いから。
「うーん?只正面から馬鹿正直に当たっただけじゃ無かったらしいね。左右からプレイヤーが広がって行ってるし、別働隊みたいなのが動いてるや。」
俺はしっかりとソレを視界に捉えた。どうやらプレイヤー側は最初のこのぶつかり合いを勝利で飾る気満々なようだ。
包囲殲滅、それを狙った動きである。でも忘れちゃいけない。そもそもこのイベントフィールドは馬鹿広いのである。
目の前の戦闘ばかりに気が向き過ぎていると別の角度からの奇襲をされてしまい、後方に部隊を展開している生産職の拠点が潰されかねない。
プレイヤーたちはこのフィールドに存在していた襤褸くなっていた砦を改修して拠点として利用していた。
当然そこを防衛するために堀が作られ、前線組に補給物資を運ぶ道が簡易的に作られ、防衛線も張られて、などなど。
本格的に「戦争」をすると言ったプレイヤーの本気度がここにかなり出ていたりするのである。
「中央は囮、かな?プレイヤーの多くを中央の派手にやってる戦場に釘付けにして後方を狙うってか?そんな感じになるのであれば遠回りして奇襲をかける部隊の動きが悪魔軍の方にあってもおかしくないねぇ。」
目の前の戦場には何故か「第三」しかいない。不自然に過ぎるこれは。
「どうするケンジ?後方に下がっていざと言う時に備えておく?それとも周辺を見て回って怪しいのが居たら潰すみたいな遊撃する?」