攻略!悪魔王編!「只々ぶつかり合うイベント」
この戦争イベント、プレイヤーに対して運営はかなりの時間的猶予を与えていた。
そしてその情報も結構大盤振る舞いで放出していたので最前線組、上位陣と呼ばれるプレイヤーたちはかなりの準備を進められていたのではないだろうか。
結局はケンジの予想に近い形の構成の「悪魔軍」となっていて、当初はプレイヤーの勝利が危ぶまれてはいたのだが。
「クラン制度解放かー。運営のこのやり方は中々の衝撃だったなー。掲示板では今回の戦争で勝つ為に突貫ではあるけどかなりの大規模クランが出来上がってるしなー。ケンジはコレをどう見る?」
今まではレイド、パーティを組んだ者たちが寄り集まって戦うシステムはあったが。いわゆるこれでは烏合の衆でしかないこの戦争イベントでは。
しかしクラン、これはレイドをもっと大規模に、そして一纏めにしたものである。統率が人数が膨れ上がる程困難だったレイドとは違ってクランではもっと連携が取り易いシステムが組み込まれている。
そしてソレを非常に有効利用、活用できるジョブもこれに同時に導入されていた。
「コレでジョブに「指揮」タイプも解放されるとか。荒れたよねー。つか、炎上もしたけど。そして僕には関係無いんですけどね。」
俺の横ではケンジが遠くの地平を埋め尽くす悪魔たちを見つめていた。
そこで思わず俺は今の自分をもう一度見つめ直してもう何度目かの驚きをまた口に出す。
「まさか「魔王」がこのイベントに出れるとは思っても見なかった。まあ俺はこうして参加できた事に喜ぶべきなんだろうけど。」
「そのままだとダメで、だけどまさか「変装セット」で姿がプレイヤーに変わった状態だとオッケーって、どう言う基準なの?って運営に小一時間程問い詰めたい。」
ケンジがそんなツッコみを入れて来る。そう、今は既にイベント限定フィールドに俺もケンジも移動しているのだ。
見た目は「プレイヤー」その中身は「魔王」である。この変装セットでプレイヤーの見た目になっているとは言え、この状態で振るう力は別に「魔王」そのままなのである。
ステータスが弱体化していると言った事も無く、普通に「魔王」のスペックをこの見た目で繰り出す事ができるのだから詐欺である。
他のプレイヤーがその場面を見たら「チート」と口から勢いよく漏らす事間違い無しである。
「さて、まだ開始五分前だけど、俺たちはこんな所で隠れていて良いのかね?」
この戦争イベント、別にコレと言った難しい敗北条件は無い。そして勝利条件も単純だった。
どちらかが全滅するまで戦う、ただこれだけ。
プレイヤー側の特別配慮として、デメリット無しの死に戻りは三回まで。死亡四回目からはデスペナルティでガンガンレベルが下がる。そしてレベル「1」になった時点で復活が不可能になるのだ。
プレイヤーはこの戦争での「貢献度」なるモノが設定されており、イベント終了後にそのポイントの量で順位が決定、その順位の高い低いで貰える報酬がかなり変わるのだ。
コレによって何時までも逃げ回っていてもポイントは上がらず、ガンガン戦って死に戻って「1」になり退場となってしまうとそれ以上は貢献度は増やせないと言った具合である。
様々な「部門」が設定されているといった運営の発表もあるのだが、その詳細は伏せられているので狙った部門の一位を狙うと言った事も難しい。
ただ単純にこのイベントを生き残る、と言った事も困難そうな悪魔軍の構成である。どんな結末を迎える事になるか予想は無理だ。
「まぁプレイヤー側が敗北した場合のストーリールートも用意されてるだろうし、気軽に大規模戦を楽しめば良いか。」
俺はそんな軽い気持ちで開始時間を待つ。ケンジもケンジでどうやら気負いはしてない様子。
「負けたら負けたでその後に出て来るんだろう悪魔王がもの凄く弱体化しての登場とか?この戦争の難易度って高過ぎだし、それくらいのバランスは取ってあると思いたいね。」
もうそろそろイベントが始まると言うのに、どうにもケンジは先程からずっと運営に一言物申したいと言った態度であった。