閑話「討伐回数は?」
「うぉりゃああ!・・・うっし!俺の必殺技が止めを刺したぜぇ!」
プレイヤーの攻撃スキルで崩れ消える第一悪魔はコレでまたリポップだ。しかしその出現場所はランダム、この点にちょっと疲れた感じで息を吐くプレイヤー。
その溜息を出したのは第一悪魔に止めを刺したプレイヤーのパーティメンバーである。
「あーあ、また探さなくちゃいけないのか。それにしてもさ、俺たち第一と第二ばっかり倒していて良いのかね?」
この疑問に対して他のメンバーは気楽な感じで答える。このプレイヤーたちは六人パーティである。思い付いた事をそれぞれが喋り始める。
「んー?良いんじゃない?俺たちまだ駆け出しだしさ。程良く経験値も溜まるし、ジョブの熟練度もスキル熟練度も上げられるしでボーナスじゃん?第三は硬過ぎだし、第四は無理ゲーだし、第五以上はもっと無理だし?」
「第三は流石に回数倒すのはシンド過ぎるでしょ。第四は巨大な「モビル◯ーツ」だし、集まって合体?融合?しないとなら無いんじゃ時間が掛かり過ぎるしな。俺たちには一と二が限界ってもんだ。」
「うーん?掲示板に「悪魔王編」の進行フラグの予想が立ってからは他のプレイヤーも数字付き悪魔の討伐に大勢が乗り出してきてるって言うし、ちょっとレベル上げるのに「悪魔狩り」じゃ今後効率悪くなるでしょ。取り合いになるだろうしな。もうそろそろ他の事しないか?第一と第二に俺たち以外も食いついて来るだろ?」
「結構初期の頃から第一と第二で稼いでたもんな俺ら。もうそろそろ、もうちょっとだけ上を目指し始めるか?」
「中堅は第五から第八行くからまだ良いとして。初心者やそれから脱却してる奴らってそもそもまだ第一とはまだマトモに戦えないからもうちょっと粘れんじゃね?とは言っても、ソロソロ飽きて来た感じあるから他のやるってのは賛成。」
「生産職がいつの間にか第九相手に無双してるって掲示板に書かれてるの発見した時は流石に驚いたけどな。」
第九悪魔は生産職が「状態異常対策」を完璧に仕上げた事で「ヒャッハー!」している状態である。
弱体化している状態の今の第九は生産職が立ち向かっても充分に勝てる状態だった。
プレイヤーに弱体化攻撃をぶちまける代わりに本体の方の素の能力はどうやら著しく下がっていると言った具合であり、それが判明して情報が拡散した時に一人の生産職プレイヤーが「あれ?もしかして俺たちだけでも勝てんじゃね?」「経験値を生産職の俺たちだけで独占できんじゃね?」と発言した事によって爆発的にこれが広まった。
今では独占市場と言った様相を呈していて最前線攻略組などと言われる上位陣もコレにちょっかいを出さないでいる。
結局はこの上位陣も生産職のプレイヤーには世話になっているので相手の機嫌を悪くする様な行動は起こさない。
今後の生産職との関係悪化は流石にこのゲームを「遊べなくなる」位にはヤバイ案件だからだ。アイテム、武具を売って貰えないと言う事は普通に死活問題である。
寧ろここで関係をもっと良好にする為に第九悪魔の出現を早期発見して情報を流すと言った事もやっていたりする。
しかも生産職がレベルを上げればその恩恵は他の多くのプレイヤーにも出る。その影響は測り知れない程に大きなものとなるだろう。
生産職のレベルが一気に上がればその作られた品のレアリティも爆上がりする。それは生産職からアイテム、武具を買う客としてのプレイヤーにはありがたい事である。
「なあ?この間発見された新モンスターと思われるアレってさ?この間掲示板で情報が新たに出てたの知ってるか?あれ、第十らしいぞ。」
「はぁ?何それ?!ちょっとソレ詳しく!」
「しかもソレを見た「パワードコア」好きな奴らは全員が「トラウマ!」って叫ぶんだってさ。笑うわ。」
「ソレは・・・行かねばなるまい。」
「お前も「パワードコア」ユーザーかよ笑う!」
「しかもどうやら「同じ穴の狢」が集まってその第十をぶっ倒そうと頑張ってるらしいんだけどさ。まだ一回しか倒せてないってよ。」
「いや、一回でも倒せてるなら上々だよ。俺もその専用スレで動画見たけどさ。あれ、絶対に開発陣絡んでるぞ。」
「何だよ、絡んでるって。おかしいだろソレ。ちょっと俺も興味沸いたな。俺「2」までしかやって無いからその「トラウマ」っての有名だし、体験してみたい。行こうぜ、第十。」
この一言にメンバー全員が賛成をして第十に一度挑むのだが、何もさせて貰えずにボッコボコにされる事を今知る由も無い。