何で俺だけ「覗いてみた結果」
四天王の面会を終えた翌日。今日も俺は仕事のノルマをさっさと終わらせて早上がりをした。相変わらずもっと仕事をする気は無いのか?といつものお小言を先輩に言われてからである。
毎度の事飽きずに俺へとそう言ってくる労力を自分の仕事の時間に費やせば?と言い返そうといつも思うのだが、その時間すら俺にとっては勿体ないのでそれを告げずにさっさと部屋へと戻ってしまう。
そしてざっと一通りの雑事を終えた後はソッコーでログインだ。
「さて、昼休みに覗いて見た掲示板の中身からして・・・皆は他のコンテンツに夢中でメインストーリー何てほったらかしにしてるんだな。」
運営がバージョンアップして追加した新規要素がこのゲームに深みを出していた。
それらは全て「プレイヤー」へのモノであり、「魔王」へのモノでは無い。だからあまり気にしていなかったのだが、どうやらそちらにプレイヤーたちは夢中になったらしく、四天王攻略と言うのがほったらかしにされているらしかった。
「ポイントがぽつぽつとしか最近貯まらなくなったのはこういう事ってか。まあ仕方が無いよなあ?四天王、強化をし過ぎて無理ゲーになりかけてるしな、今の所。」
おそらくはプレイヤーのレベルキャップが解放されて、このゲームの設定最大レベルカンストができないと挑む事ができない、低いレベルでは到底無謀だと周知され始めたのも理由のその一つだろう。まだ今の所レベル上限を設定されている状態だ。
運営は少しづつ解放をしていくつもりだろう。最初から全て何でもカンでも上げ切れるようにしておくと、プレイヤーたちへの「コントロール」を利かせられなくなるから。なるべく長くこのゲーム寿命を永らえさせるために。
プレイヤーたちは四天王の強さを、おそらくは運営がそう言った「設定」にしたんだと、掲示板内では推測している。
それが俺のやった事であると察している者は一応はざっと調べた中では一人もいない。
「魔王様、今ならプレイヤー共を我々が一斉に蹂躙して稼ぐと言う事が可能だと思いますが、何故それをなさらないのですか?」
ミャウちゃんは今日はこの城に居る。たまにプレイヤーたちの動向を探りに言ったり、「迷惑狩り」をするために巡回などをしているので、今のプレイヤーたちが自分たちには取るに足らない存在だと言う事が良く分かっている。
「あー、それは、止めておこうか。プレイヤーって追い詰められると何をしでかすか分かったモノじゃ無いしね。ほら、ゲブガルの時もあれがあったでしょ?」
プレイヤーが集まってゲブガルへと攻め入った時の話だ。俺は当初ゲブガルにポイントを入れた時には、そんな事になるなんて思っても見なかった。
悪ふざけが過ぎた、というレベルでは無い。まあその原因が俺にあったのは何も言い訳しないけれども。
それでもあのようにして追い詰められたプレイヤーが一斉に一丸となって何をしてくるかは予想ができない。
それがこちらにとって良い事になるか、悪い事になるか、それすらも俺は神様じゃないので分かりはしない。
だからミャウちゃんの意見を止めるのだ。
「今の所は様子見をしておこうか。平和な時間もまた良い事だ。ミャウちゃんが時々稼いで来てくれるポイントで今は充分。いや、今までが寧ろポイント入り過ぎィ!って感じだったからこれぐらいが丁度良いのか?・・・うーん?プレイヤーが今静かな間に四天王の皆には肩の力を抜いてリラックスして貰いたいね。」
いつプレイヤーが攻め入って来るか分からない。そんな四六時中緊張を強いられる状況で無くなった今の現状。
ならばこうした時には頑張ってくれている四天王の皆には少しくらいはそのピンと張った緊張の糸を緩めて貰いたい。
「うん、俺がその事を直接知らせればいいだけじゃないか。掲示板を覗いた時の情報を基にそう言った情勢を細かに指示とかすれば、今後も有利じゃん?」
俺はこの思い付きで早速今のプレイヤーたちの大まかな動向などの情報を、四天王全員に魔王専用念話システムで一斉送信するのだった。




