攻略!悪魔王編!「演出として良くある使い回しだけど効果的」
僕のステータスは一気に上昇した。丸薬を使ったのだ。逃げ出す為だけに使用した。これはしょうがない。
そのままの状態では戦闘もロクにできないし、撤退すらも困難極まる。
肩に怪我をしていればなおさらだ。撃たれた弾丸をそもそも避けられなかった時点で僕はこの「コア」に敵わないと理解できている。
だからここから逃げ出す為だけにステータス爆上がりの丸薬を使わざるを得なかった。
(一直線の廊下を先ず真っすぐ!曲がり角前で止まれる様に意識はしっかりと持って!)
迷ってはいられない。もしかしたらこのステータス値ならこの「コア」を単独で倒せるかも?などとは思ってはいけないのだ。
倒すなんて確実性が何処にも無い。逃げ切れれば魔王と合流もできる。あの昆虫の森で遭遇した特殊系キメラ悪魔の時とは状況が全く違う。
そうして僕は一気に走り出した。幸いにもこの玉座の間の前にある廊下は長い直線。相当な距離がある。
コレで「コア」と大分離れる事ができたのだが、油断はまだできる何てモノじゃない。
こちらに僕の肩を撃ち抜いたあの銃口が向けられているからだ。
だから直ぐに曲がり角を、ここまで来た道を戻る方向に即座にダッシュだ。
この「逆さ城」の中はもう既に僕の頭の中に詳細は入っている。追いかけっこになっても逃げきれるだけの要素は充分。
バキン、壁に穴が開く。そのタイミングは僕が角を曲がって幾分か進んだ時だ。
ちょっとでも僕の動きが止まっていればこの一撃を食らっていた可能性がある。肝が冷えた。
「こんなにゲーム内で足がガクブルするのって久しぶりだよ!」
何処まで行ったのかは分からないが、まだ魔王の姿は見えてこない。
城から撤退と言っていたから完全に僕を置いてここから脱出をした可能性がある。
(こうなればしっかりと「プレイヤー」の性質を利用しないとね!)
僕は生きて、生きて、生き延びて、この「コア」の情報をもっと仕入れてから死ぬ。
ソレがまだ城から出られていない僕の役目かもしれない。けれども逃げ切れるのならばそうしたいし、それがもし駄目になったらの時点で「コア」に仕掛ければ良い。
「今は必死にあのロボとの距離をもっと、もっと離さないと・・・」
ロボの追って来る音も気配もしてはいないが、それでも気を抜くべき場面じゃない。
出力を調整しての全力でこの「逆さ城」の中を疾走する僕。心臓はドキドキだ。
そして僕のそんな胸を一層跳ね上げる爆発音が遠くから聞こえて来た。
「おいおい、あの姿だったらロケット砲も存在したかもしれないけどさー?」
あのロボはどうやら僕を追う為に最短の距離、障害物を破壊して進む事を選択したらしい。
そこまでロケット弾の数が無いのか、節約しているのか?頻繁には爆発音は響いていないのだが。
確実に聞こえてくるその壁が破壊されていく音は僕に近づいていた。スリル満点である。
玉座の間から出口まではそこまで複雑な構造をしていない。しかし全てが「逆さ」であるこの場所ではソレが僕の脳を混乱させて思考を止めようと邪魔をしてくる。
あと一息、そんな場所まで来た所で目の前、その天井が破壊音と共に抜ける。それは良くある最悪なパターンだ。
その穴からロボが出て来たのだ。テンプレ、お約束なご登場である。少し安心したそんな時に敵が目の前を塞ぐなんてアルアルな演出で、そしてアルアルな絶望である。
「だからだろうなー。そこまで今僕の心はガックリ来て無いんだ。よし、やってやろうじゃないの。」