何で俺だけ「幻術の凄さ」
俺の目の前にはバイゲルが跪いている。その姿は背が低く、そして顔、皮膚がつぎはぎで縫い合わされている不気味な男の姿。
だけども俺の目には時々、その姿に「ノイズ」が入っていた。
「うん、初めまして。君がバイゲル・・・でいいんだよね?で、何でさっきから俺の目には君の姿が時折ブレて見えてたりするの?」
俺は率直な疑問を突き付けた。コレにそのあんまり直視したくない顔を上げて俺へと説明をしてくれるバイゲル。
「見抜かれましたか。流石は魔王様に御座います。幻術を使い、今は私の姿を変えての謁見をさせて頂いております。魔王様への不敬であるとは理解しておりましたが、ミャウエルから魔王様の御話を伺っておりましたので、こうして幻術を使用しておりました。」
「うーん?ミャウちゃんから話?あ、バイゲルの戦い方が想像できない、って言うのは話したなあ。それで、幻術を使って見せてくれてるって言う事ね。うん、凄いな。魔王の俺の目も欺けてるんだもんなぁ。」
「はい、お褒めに頂き光栄です。とは言え、流石に完璧に、とはいかなかったようです。魔王様の真贋を見極める目には私の幻術も通用しないと言う事で御座いますね。では、この醜い姿のままでこれ以上は魔王様に失礼ですので。私の本当の姿をご覧に入れまする。」
と言ってジリジリ、などと何かが擦れる様な音がし続けつつ、バイゲルの幻術が少しづつ解けていった。
で、その真の姿が現れた、と思ったら、女性が出てきた。しかも驚きの格好だ。これには俺も流石にびっくり仰天した。こんなの予想できた訳が無い。
その身体に纏うのは大事な部分を隠すのに面積が非常に小さいビキニアーマー。グラマラスなその肉体は小麦色に焼けてボンキュッボン。ウェーブの掛かった肩までの長さの金色の髪。履き物は何故かビーチサンダル。頭頂には立派な一本の角。そして顔は美人な作りで、それに俺は「どうなってんの?」と叫びそうになるのを堪えた程だ。色々と突っ込み処が多すぎて俺の脳内はパンクしかけた。
魔族だ。角が生えていると言う事は魔族なのだが、そのいきなり俺の目の前に現れたキャラの見た目に「理解不能」と脳内に出てくる。
いくら何でもコレで「マスターアサシン」で「精霊使い」で「人形遊び」が好き?これらの情報と見た目の属性が合って無い。先程の幻術は何だったのか?と、直前で見ていたあの姿と今とでのギャップの大きさに眩暈を起こしそうになった。
「コレが私の本当の姿です。私の本当の姿を知るのはこの世で魔王様のみで御座います。私は「アサシン」。敵味方問わず、その正体は伏せておくのが常道。こうして自らの姿を晒すのは、この身も心も魔王様への忠誠を誓うため。このバイゲル、今後も魔王様の忠実なる手足となりてお仕えする所存。どの様な命令でも、遂行してご覧に入れまする。」
滅茶苦茶真面目。口調がそんな風に御堅いので俺はもっと気楽になって欲しいとここで伝えておく。
こんな姿をしておいてバイゲルはもの凄く根は真面目なのかもしれない。
「あー、もっと気軽に肩の力を抜いてお互い話そう。そんなに畏まらないでいいよ。俺なんてそんな畏まって対応されるのが当たり前、みたいな大層な中身じゃ無いんだから。もっと気楽に、ね?で、俺の方の本題に入ろうか。こうして四天王と順次顔合わせしたのはね、プレイヤーに殺されそうになったら一も二も無くこの城に逃げてきて欲しい、って言う御願いなのね。コレは厳命ね。死んじゃダメ。生きていれば再起ができるから。どんな場面であろうとも命大事に、って事で。」
「はい、畏まりました。魔王様からの御命令、この身にしっかりと刻まさせて頂きます。三十六計逃げるに如かず、で御座いますね。しかと、承りまして御座います。」
喋りが硬いままなのはどうしようも無いのかもしれない。バイゲルがこんなキャラだったとは思いもよらなかった。
しかしコレで当初の目的はしっかりと全部遂げたので、今回はこれ以上突っ込まない様にした。
こうしてバイゲルとの面会を終えてミャウちゃんが戻ってきた所で俺はログアウトをするのだった。




