攻略!悪魔王編!「どっちも」
僕は編集した魔王の「トンデモ」映像を投稿した。その題名は「お前ら、コレ、倒せる?」である。
「正直言ってコレを見て、魔王を倒そうと思うプレイヤーは居なくなると思うんだ。これで大分安心だと思う。」
「何が安心なのかが分からないけどね。ケンジはコレで良かったと思う?」
魔王がそう問うので僕はちょっと考えてから答える。
「良いか悪いかで言うと、僕は良い事だと考えるよ。もう本来の「魔王編」はクリアは不可能だと思って貰った方が気持ちに幾ばくかの余裕がプレイヤーにできると思うんだ。これまでは中途半端に魔王の、魔族の脅威が広まっていたから余計な事を考えつくプレイヤーが居たんだと思うんだよね。だけど、コレを見たら流石に手出しできないって理解できると思うから。それができないってプレイヤーは最初からそう言う頭をしてたんだって諦め切れるしね、こっちもさ。」
そうなのだ。こちらも「しょうがないね」と言った理由付けができるものが無いと余計に疲れる。
精神に余裕を持たせる事によってプレイヤーもこちらもウィンウィンと言う形で収めるのである。
「でもさ、ケンジ?もしかしてこれってバイゲルとライドルの方にしわ寄せがいかないか?ソレで被害が出るっていうのなら見過ごせないんだけど。」
「そこら辺はもう今更でしょ?ライドルの塔には未だに執念を燃やすプレイヤーがジリジリと記録更新してるし?それに恐怖の館はこの間に話し合いをしてちゃんと対処の件は答えを出してるし。」
ソレもそうだと言って魔王は納得する。けれどもまだ心配事はあるみたいで。
「偶然にプレイヤーと遭遇して戦闘になってこっちに被害が出るって事は?あー、でもそれも今までと余り変わらないのか。」
「寧ろその可能性も小さくなったと思うよ?多分プレイヤーの方が逆に戦闘を避けようとして隠れるんじゃないかな?恐らくは報復を恐れてって感じで。」
これまでにリスキル。いわゆる復活後即座に殺害、リスポーンした後に直ぐキル、と言った事を魔王はしている。
コレを考えると相当特殊な状況にならなければプレイヤーは魔族に手を出してこないはずだ。
そしてこっちも魔王の命令が出ていて無暗矢鱈とプレイヤーを潰しにかかるのを制限している。
コレだけ条件が揃えば相当な事が起きない限りはプレイヤーと魔族がぶつかり合う事は今後そう無いだろう。
「それじゃあ第十悪魔は明日からって事で良いの?魔王はこの後すぐにでも攻め込んでも良いと思うよ?僕は参加しても、しなくても良いって考えてる。結果だけ教えてくれたら良いかな?今僕は特殊系の悪魔がまだいないかどうかの方が気になって来てるからさ。」
「あれ?ケンジも一緒にやろうよ。俺の方は別にいつでも良いよ?それにそもそもこの第十悪魔は最初から俺とケンジ二人で倒したいって考えてたんだけど?」
「え?何それ初耳ですけども?」
「いや、言って無かった。スマンスマン。」
どうやら魔王は実績として「魔王とプレイヤーが共闘して悪魔を倒した」と言ったモノが欲しいらしい。
だったら「逆さ城」に居たプレイヤーを殲滅しなくても良かったのでは?と僕は突っ込んだのだけれども。
「いや、有象無象は要らんのだけど?あくまでもザックリとしたモノが欲しいってだけで、形だけ?みたいな?もうこっちに所属してるって言えるケンジとは一緒に戦えるけどさ?何処の馬の骨とも分からないプレイヤーと一緒に戦うとか、余りにもリスクがバカ高いでしょ?いつどのタイミングでアイツら裏切るか分からんし?信用とか信頼が全く無い相手と誰も組みたいとは思わなくない?同じ目的を持って行動していても相手の思惑の中身なんて読めるはずも無いからね。そんな危ない奴らを懐に入れようは思えないから。これまでにケンジと一緒に数字付き悪魔を回ってたけどさ、ああいうのじゃ無くてホントに俺とケンジだけって感じ?やってみたいんだよね。」
僕は確かにその魔王の言い分に納得はした。しかし次に続ける魔王の言葉に呆れる。
「ポイントも稼いでおきたいからプレイヤーがこっちにちょっかいを積極的に出してくれるのって大歓迎だったんだけどね。そう言うのは返り討ちにするって最初に決めてたし?今回のこの映像でそう言うのが激減する可能性が高いのは残念なんだけどね、正直。」
「魔王、部下の安全と自分の我儘、どっちが大事?」
「えー?どっちも?」
「子供か!」
しょうがない事だけど、僕と魔王との間にはまだまだ相互理解が足りないらしかった。