攻略!悪魔王編!「筒抜け」
プレイヤーの作戦は簡単だ。別に複雑なものでは無かった。
先ずは「逆さ城」入り口前で防衛の様子を見せて耐え忍ぶ。そして徐々に後退、城の内部に退避する。
ここでこちらの突撃を誘い、魔族が一人、或いは二人城に入った所で入り口前にセットしていた設置系の魔法を発動。
土魔法系統の壁を発生させて入り口を塞ぎ分断。
「これで内部に入った魔族を数の暴力で袋叩きにしてぶっ殺そうって魂胆。まあシンプルで良い作戦だ。まだプレイヤーは魔族を一人も倒せてないからねこれまで。」
そうして入り口に殺到した外に分断されている魔族は周辺に隠れていたプレイヤーたちが奇襲をかけて時間稼ぎ。
入り口を塞ぐ壁を少しでも長く存続させ破壊させない為に左右から挟み撃ちと言う訳だ。
プレイヤーの目的は俺たちに一泡吹かせる事だけに力が注がれている。でもそんなのこちらにはバレバレ。
「けれどもそんな物が筒抜けだったらどうだろうか?そもそも内部へと入り込んだのが都合良く一人だぞ?怪しいと思った方が良い案件だろこれは。」
突撃であからさまに一人だけ突出した魔族が城の中へと真っ先に入って行ったのだ。
コレをプレイヤーはどう考えるだろうか?鴨がネギしょってやって来た?とでも思っただろうか?
「入って行ったのが並みの魔族だったら、まあ、やられてしまっていた可能性も高いけどね。あれ、ボッズだし?あの戦闘狂を短時間で仕留める事なんてできないと思うよ?それに。」
掲示板に作戦はほぼ全て書かれていたと言って良い。コレにまだ掲示板には書かれていない、裏で何かを画策しているプレイヤーが居たとして、こちらの予想を外す行動をしてきたとしたら?それはそれで危険もあると思うが。
「こっちだって不測の事態が起きた場合の為に、そう言った事に対処ができる様に潜り込ませてるんだよねぇ。中に居るのは一人じゃ無いんだな、これが。」
変装セットは偉大である。チートである。バレる可能性も結構高いとは言え、今回のこの「逆さ城」の中はプレイヤーがひしめき合っていて「木を隠すなら森の中」状態なのだ。隠れるには条件が充分過ぎる。
そう簡単にこちらのスパイが特定される事は無いだろう。それを確かめる為に俺は魔王専用の通信を繋げる。
「あー、あー、テステス。そっちはどんな状況?ベルガーン、キリアス、調子はどう?」
『異常は無い。作戦は順調。プレイヤーにバレている様子も無い』
『先程からボッズさんがプレイヤーと戦闘をしていますが、今の所は危険になる場面も無く蹂躙をしています』
「オッケー。タイミングを見て派手にぶちかまして良いからね。ソレと、本気で危なくなったら迷い無く逃げて良いから。無理はしない事。」
潜り込ませたスパイは二人。ボッズが数に押されたりして戦況が変わったら、そのタイミングにプレイヤーへ混乱を齎す為の要員である。時間稼ぎとも言う。
「プレイヤーを一人残らずポイントに変えるつもりだからね。今更逃げられちゃわない様にする為にも上手くボッズには立ち回って欲しい所。」
外も中も両方潰す。中を早く掃除しきっても駄目だし、外を簡単に片づけてしまっても駄目だ。今回の目標は両方の殲滅タイミングを合わせる事を目標に掲げている。
まあ言うなれば実戦演習と言う形である。プレイヤーには気の毒だが今回の件を利用させて貰うつもりだこっちは。
軍事訓練は重ねてはいるが、実戦の方がまだまだ足りないとミャウちゃんに言われていた。なので今回の事は非常に良い経験となるはずだ。
魔族軍の軍事力?を上げる為の餌にプレイヤーにはなって貰う。
「そのためなら慌て焦る演技も喜んでするってなモノですよ。」