攻略!悪魔王編!「やられたように見せかけて」
「あー、君たちは完全に包囲されている。直ぐにそこから逃げ出し、城を明け渡すのであれば、見逃しても良い。しかし、徹底抗戦を希望の場合は、覚悟をして貰わねばならない。」
俺はそんな忠告を攻め入る前にプレイヤーに向けて発した。しかしコレに相手側に動きが無い。
「約束の時間まであと五分ある。直前まで待つので、心変わりをした者、怖気づいた者は早く城から逃げ出す事を勧める。逃げ出した際にはこちらからは手を出さない。追撃しない事を約束しよう。」
これ程までにこちらが譲歩するのは別に意味は無い。只単に「演出」と言うものだ。
「残り一分。攻撃準備。」
城の入り口前にはバリケードが張ってある。恐らくは土系統での魔法に因るモノだと思われる。
その壁の陰に隠れてプレイヤーたちはじっとこちらの動きを注視していた。
「時間だ。攻撃を開始せよ。」
俺の合図にこの場に居る魔族たちが一斉に魔法を放つ。先ずは邪魔な障壁を破壊する為だ。
これがどうにも中々頑丈に出来ていてかなり破壊には時間が掛かった。魔族の使う魔法は初級の物でもかなりの威力となる。それをこうして耐え忍んだのだから称賛を送れる代物と言えるだろう。
「中々やるねぇ。でも想定内なんだよなぁ。さて、撃ち続けるぞ!蹂躙だ!磨り潰す!」
魔族たちの魔力は無尽蔵とは言わないが、それでも純魔法職のプレイヤーのMPの数値を大きく上回る。
なのでこの怒涛の魔法攻撃はまだ暫く続ける事が可能だ。
しかしこの攻撃魔法の雨にもプレイヤーは耐えていた。土の壁が無くなったら「炎」「風」「水」などなどの各種属性の壁を作り出して凌いでくる。
しかしコレも時間の問題だ。プレイヤーの残りMPを考えても、アイテムでMP回復薬を使ったとしても、防ぎ切るのは不可能だろう。
そしてその通りとなる。徐々に押し込まれる形でプレイヤーが後方に少しづつ下がっていく。
城の中にタイミングを見て撤退するつもりが見え見えだ。入り口は一つしか無く、それ以外の場所には透明な壁が存在している。
この入り口以外からはこの「逆さ城」に入り込むのは不可能なのだ。この「魔王」の力であっても。
「砲撃隊、3m前へ!」
魔法攻撃を放っている部隊の前進を俺は命じる。下がるプレイヤーに合わせて距離の調整をしているのだ。
ジリジリとこのままキッチリとプレイヤーを押し込んでいくのである、城の中へ。
「一人も逃すな!押し潰せ!」
俺の「演技」が響く。また砲撃隊がプレイヤーの下がる距離に合わせて前進する。
ここでようやっと外に出ていたプレイヤーたち全員が城の中へと入り込んで退避が完成する。
「良し!今度は中の掃除だ!」
連続で放たれ続ける魔法攻撃、そこにワザと分かり易い間を開けてあったのだが、それに見事に合わせる形でプレイヤーが綺麗に城の中へと逃げ込んだ。
コレを罠だと分かった者たちはどれだけいるだろうか?
「砲撃隊下がれ。突撃部隊準備は良いか?」
ここからは城の内部での戦闘である。派手にバンバンと魔法を爆発させていた野外での戦闘とはがらりと変わる。
「では、行ってこい。」
突撃部隊、先ずは五名を城の入り口へと向かわせる。しかしその中の一名だけが自然に前に出て先行して城の中へと入り込む。
そのタイミングで入り口が塞がれる様にして地面から分厚い壁がせり上がって来る。魔法だ。
これは分断されたと言えるだろう。城の中には魔族が一人のみ入り込んだタイミングでこれである。プレイヤーの仕業だ。
「綺麗に決まったな、ホント。」
そう、余裕だ。俺に焦りは無い。だって掲示板でこの作戦の事は筒抜けだったのだから。
しかしここで俺は慌てた演技をして突撃部隊を前進させてその通せんぼしている壁に攻撃を「軽く」入れさせ続ける。
「即座に破壊し、中へ侵入するんだ!ええい!何をしておるか!早く壊さんか!」
あくまでこれは演技である。プレイヤーを騙す為の。彼らはきっと俺のこの姿を見て喜ぶに違いない。
だって彼らの作戦がキッチリ嵌ったのだから。けどそれが幻な事はまだ知らなくて良いのである。
「御出でなすったな。それじゃあ皆、壁はもう良いよ。両側から迫って来るプレイヤー軍団を蹴散らしちゃってくれ。」
俺たちが城の入り口に固まっている状態でソレを挟み撃ちにしてくるかの様に左右からプレイヤーの軍団が迫って来たのだった。