攻略!悪魔王編!「どっちもどっちな」
光って消えた第四悪魔からは七つの黒い球が出て来た。それが四方八方に分散して飛んで彼方へ消えていく。
「これで後は報告を待つばかりだな。じゃあ今はちょっとだけ休憩しようか。」
魔王がそう言って草原に大の字に寝そべった。魔族たちが黒い球を追う姿をそんな状態で見送っている。
「ねえ魔王、その刀、やっぱチート・・・って言うか、このゲームに存在しちゃいけない強さだと思うんだけど。そこら辺どう考えてるの?」
僕は魔王の持つ武器に流石に意見をぶつけた。僕は今回手を出す事は無かったのだが、魔王の後ろを付いて行ってその刀の威力をこの目で見たのだ。
コレのおかげで怪我をした者もおらず、無事に作戦は成功したのだが。
「んん~?別にあるんだからしょうがないんじゃない?ソレを俺が持っているのが駄目って言うなら、運営が修正してくるだろうし。コレの効果はそもそも仕様として組み込まれているモノだったんだから、チートであってチートじゃ無いんだよね。」
魔王がその後に「難しく考えるのは止めたんだ」と付け加えた。
やっぱり魔王もこの武器に関しては一時悩んだらしく、僕と同じで「チート」と認識していたらしい。
それでも運営から何の横やりも修正も忠告も来ない事で、今ではそう言った関連の事をサッパリと悩むのを止めたらしい。
「使える物は使わないとね。でもあんまり頻繁には使わないよ?俺だって楽しみたいんだから。これは切り札だけど、だからってソレを渋って出さずに、そのせいで後悔とかはしたくない。」
使うと決めたら迷わずブッ込む、魔王はその覚悟はもう完了したと言う。
「僕もその刀があれば魔王とマトモに戦え・・・無いな。使いこなせないよね、それ絶対。」
それこそ魔王と僕との間には隔たりがあり過ぎる。基礎ステータスに開きがあり過ぎ問題である。
幾ら強い武器を手に入れられても、それを振るって使いこなせる技量も僕には無い。
さて、ここで休憩時間も終わりを告げた。追跡を行っていた魔族からどうやら魔王に通信が入った模様で。
「良し、じゃあ今日は先ず第八から行って見よう。ケンジ、その装備で大丈夫か?」
「いや、コレもうドワーフたちに鍛え上げられてて最高ランクの武具なんですけど?」
僕の鎧はあの「蟻」のやつを最終段階まで強化を施してあるモノなのだ。
最前線組と呼ばれているプレイヤーの装備している鎧と比べてもその性能は劣らないモノである。
武器は以前に始まりの街の武器屋から貰っている剣をずっと愛用しているのだが。しかしこの剣、どうにもおかしいのだ。それが気になっている。
(損耗しないんだよなぁ、どうしてか。おかげでメンテナンスに出してもドワーフから「こいつは職人泣かせだ」と言われてしまうし)
欠けない、歪まない、切れ味落ちない、折れない、と言った感じでコレもまたチート武器と言える代物だった。魔王の事をとやかく言えない。
こうして僕らは今回の経験値稼ぎの一体目を「第八」に決めて移動を開始した。
黒い球を追跡していった魔族の位置がどうやら魔王には分かる仕様らしく、その歩みは迷わず、躊躇わず真っすぐ進む。
そしてどうにも「第八」は直ぐ近くでの復活を果たしたらしい。直ぐに遭遇を果たした。