攻略!悪魔王編!「組んだ積み木の山を」
触らぬ神に祟り無し、と言った言葉があるが、これ、今のこの徘徊数字付き悪魔に当て嵌めると。
「第四悪魔の時の「モビルスーツ」の状況になるんだよなあ。」
数字付き悪魔たちは互いに引き寄せ合い、合体する。
どいつもコイツも復活する場所がランダムなのでソレを見つけるのがそもそも困難だ。偶然に頼るしかない。コレに付いては間引きをして第四悪魔を生み出さない様にするのはプレイヤーには結構に荷が重い。
こいつら徘徊して見つけにくいくせ、その上に倒されたらまた再び場所ランダム復活するのだ。鼬ごっこである。終わらない駆除である。
これを良い経験値稼ぎだと中堅、初心者プレイヤーたちは思わなかった、思えなかった訳だ。そんな事に労力を使っていたくないと。
ここで画期的な発想をするプレイヤーが現れたのだ。コレが掲示板で広まった際には協力者が大量に出た。
先ず数字付き悪魔を発見した場合は戦闘を開始して「誘導」する事が可能だった。これを利用するのだが。
プレイヤーが各自で見つけた数字付きをワザと倒さずにこれで誘き寄せる。
その誘き寄せる場所はプレイヤーが誰も行かない不人気フィールド。ここにそれぞれの数字付き悪魔を誘い出し、計画的に合体させる。
そうすると最低でも四体合体すると「モビルスーツ」になるのだが、コイツ、やはり動かないのだ。
一定の範囲があるらしく、その巨体で縦横無尽に歩き回る、と言った事をしない。
この事実を発見した事でプレイヤーはこの「徘徊する数字付き悪魔」を無視、放置、完封をする事ができる様になった。
「こうして近づきさえしなければ攻撃行動にすらならない状態とか。それで後は自由になれるんだもんな。良く思い付いたよ。」
中堅、そして初心者たちはこうした方法で「閉じ込め」に成功した。良く考えたものである。
コレでフィールドで偶然に「数字付き悪魔と遭遇する」と言った事故も無くなるのだ。
最前線攻略組の上位陣も、中堅も、初心者もこれにはニッコリ。
「だけども僕らはソレをぶっ倒すんだけどね。」
「まあ先ずこいつを片付ける役目は俺なんだけどね。」
さて、この「モビルスーツ」は倒されると特殊な演出が出る。掲示板で情報は集め済みだ。
何体が合体したかによって、倒された後にその上空に合体した悪魔の数だけの黒い球が発生するのだが。
ソレが各方面に飛んでいくのだ。まるで七つ集めると願い事を叶えてくれる龍が出て来ると言う物語のアレの様に。
その飛んでいく黒い球の後を追って行けばあら不思議、そこには数字付き悪魔が復活しているではありませんか。これは一部の検証班が見つけた事実だった。
これは合体前の単品で撃破すると全くこう言った「次は何処で復活するのか?」と言ったヒントが出ない。
「さて、始めるよー?配置は良いかー?」
魔王がそう言って確認を取っている。ここには総勢三十名の魔族が居る。これらにこの「黒玉」の行方を追わせるのである。
そしてその場所を順に廻りながら復活した数字付き悪魔を倒して回って僕の経験値にしていく計画だ。
本当だったらここでこの第四悪魔「モビル◯ーツ」を僕の手で止めを刺せれば良いのだが。いかんせんこの巨体に対して今の僕にはソレができる手段と言うのが無い。
僕はド派手な威力と演出のスキルを持っていない。なので此処だけは魔王に頼る。
「じゃあ、作戦開始だ!イケイケゴーゴー!」
「開始合図の掛け声がダサい・・・」
魔王がスタートの合図を送る。これは時間稼ぎだ。魔王がこの「モビル◯ーツ」の足元に辿り着くまでの。
コイツは動かないとは言え、感知距離と言うのがかなり長い。特定の領域に足を踏み入れると直ぐに戦闘態勢に入る。
幸いにも此処はだだっ広い何も無い荒野のフィールドで、周囲に被害を出す心配をしないで済む場所なのだが。
その分視界は開けていて隠れる所が無い。なので魔族たちには魔王が辿り着くまでの間の攪乱をして貰うのである。
「こうして一目で分かり易い場所にコイツを放置しておけば、確かに見つけ易いから無暗矢鱈と近づかないよな。馬鹿で無ければ。」
そう言った事も考えて絶好の場と言うのを選んだのだろうが。僕と魔王の都合に因りこうしてこいつは消させて貰う。
せっかく安全確保と言った意味もあったコレを無に帰そうと言うのだ。プレイヤーにとっては僕らのこの行動は何をどう良い繕うとも只の迷惑でしかない。
「これはもうプレイヤーにとっては嫌がらせ以外の何物でも無いよなあ。」
僕はそう呟いて突撃していく魔王を見送った。