攻略!悪魔王編!「次に会う時は殺す」
「・・・有り得ない事ですな。「魔王」の中に「プレイヤー」ですと?流石にこの冗談は笑えません。それがもし、本当であれば、どちらの味方なのです?」
流石に俺の口にした真実にショックが隠せないバフォルはじっとこちらを睨み続ける。そう、睨んできている。
ウソを言うにしては馬鹿馬鹿し過ぎ、そして俺がそんなつまらない嘘を吐くとも思えない、そんな判断なのだろうバフォルは。
そして少しづつ俺の沈黙が長くなるにつれてバフォルから何やら黒い靄が漏れ出てきている。
ソレは物理的な圧迫感を発しているのか、ケンジがジリジリと後ろに下がって行っている。
ミャウちゃんは眉間に皺を寄せながらも、しかし別段動く気配は無い。
(ふーん?もしかして殺気、とか?俺には全く分からんなぁ)
二人のそんな様子に俺は何とも言えない仲間外れ気分になる。けれどもここでバフォルから出るその黒い靄が消えた。
そのタイミングで俺は答える。
「俺は楽しみたいだけなんだ。どっちの味方とかじゃなくてな。只、俺の居心地の良い場所、ってのを作りたいだけでな。時々ワクワクして、時々ハラハラして、適度にそう言った刺激を味わって、うん、遊びたいだけなんだよ、この世界で。それを邪魔する奴が居たらそいつをブッ飛ばすし、一緒に遊べる奴が居たらそいつと行動を共にする。ま、ぶっちゃけ気分だな。」
これは俺の本心だ。別に嘘を言ったりもしていない、嘘を混ぜたりもしていない。
この俺の答えにこの空間に次には静寂が訪れる。けれども次の瞬間にはソレを切り裂く様に盛大な笑い声。
「ぶっはっはっはっはっは!はーっはっはっはっは!そ、それは、それは!それはソレはそれは!くーっくっくっくっくっくっ!」
目の前のスーツをビシッと着こなした黒ヤギさんが大爆笑。もの凄いシュールな光景が暫く続く。
一体どこ等辺がこの黒ヤギさんの「ツボ」に嵌ったのかが理解できないでいる。俺もミャウちゃんもケンジも。
唖然としている俺たちにバフォルは「失礼いたしました」と言って綺麗な一礼をしてきた。その後で。
「本日はこの辺で退散させて頂きましょう。何せ今の私の力ではこの場でやり合ってしまったら十秒と持たずに殺されてしまいますから。歓迎の準備を充分に整えてから、またお会いしたく。では。」
次の瞬間にバフォルがパッとその姿を消した。ソレと同時にこの空間に暗闇が戻ってくる。
「ねえ、魔王?もしかして、これって完全に敵対したって事なのかな?」
ケンジがそう聞いて来た。そう言われてバフォルの言葉を反芻する俺。
「何処の何がいけなくてそうなったのかサッパリなんだけど?」
ここで俺もバフォルが「次に会った時は殺す」と言外に告げて去った事が理解できた。
「・・・帰ろうか。もうどうやらここには何も無いみたいだし?うーん?これからどうしよう?」
同盟の申し出を受け入れていればもっと何か別のイベントが起きたりしていたのだろうか?
しかしそれを今考えてもどうしようも無い。気分的には既に数字付き悪魔を九体潰してるこちらとしては「今更同盟組むって言ってもなぁ?」と言った感想である。
なのでこの様な流れになったのはどうしようも無い話である。まあバフォルが何かしらこちらに「良い条件」とやらを提示して来ていたらもっと違った結果になっていたのかもしれないが。
(こうなると悪魔がウチに攻め込んで来る、って事も、想定しないといけないのかなぁ?)
宜しい、ならば戦争だ、である。歓迎の準備はこちらも充実させておかねばならないかもしれない。
最悪の想定は幾らしておいても無駄にはならないだろう。楽観視して魔族の誰か、魔王国の住民の一人でも死亡者が出たりしたら俺は許せない。
(寧ろそんな事を起こさせない為には、はぁ~、やるしか無いかぁ。そうなれば)
悪魔族とやらがどれだけの脅威になるかは判明していない。数字付き悪魔の件が余りにもあっさりと片付いているから油断しそうになるが。
バフォルのあの自信、まるで「今は本気出せないけど、出せるようになったら魔王も殺せるよ」と言っているのと同じだ。
今の私の力では、などと口にしていたので何らかの理由で本来の力が今は出せない状態なのだろう。
逃がしてしまったのはちょっとマズかったかもしれない。それはしょうがなかったとしても。
「さて、やる事できたな。ミャウちゃん、会議を開くよ。議題は・・・」