攻略!悪魔王編!「再度の」
その魔法陣から現れたのは懐かしい顔である。俺が一番最初に出会った「悪魔」であった。
「この様な場所がこれ程までに早々に見つかってしまうとは思ってもおりませんでした。しかも、それがプレイヤーにでは無く、魔族、魔王様に発見されるとは、悪魔王様でも思い付きはしないでしょうなぁ。」
魔法陣が消えたと同時にこの空間がパッと明るくなった。まるで照明で照らしたかの様に。ソレはどうやら「ゲームの仕様」であるらしい。
「では、御用件は何で御座いましょうか魔王様?このバフォルめに何をお求めなのでしょうか?」
そう、出てきたのは俺に悪魔王からの伝言を、勧誘を伝えに来たいつぞやの黒ヤギさんである。
スーツをビシッと着こなして綺麗な一礼をこちらにしてくるバフォルは冷静な声でそう俺に問いかけてくる。
「あー、そっかぁ。君も悪魔なんだよねぇ。何時か倒さなくちゃいけない存在だったんだった。キャラが濃いめだから俺としては倒したくは無いんだけどなぁ。」
これまでの数字付き悪魔はどれもコレも個性は無かった。能力のバリエーションは様々だったが。
見た目はどれもコレも、と言った感じだったのでこれ程にしっかりと中身があるバフォルに対して俺は「倒したくない」と言った気持ちを持っていた。
「おやおや、幾ら魔王様でございましても私を侮っては戴きたくはないですなぁ。さて、あの時は残念な事に同盟の申し出を断られてしまっていましたが、魔王様、心変わりは御座いませんか?今からでも遅くはありません。悪魔王様と同盟を持ちませんか?」
「いや、俺はもう九体もそっちの兵隊潰してるし、がっつり敵対しちゃってるのに、それでもまだ誘うの?」
俺とのやり取りをジッと聞くケンジはずっとバフォルから目を離さない。ミャウちゃんも同じだ。ずっとかなりの警戒を目の前の悪魔に注ぎ続けていた。
「やられてしまった事はしょうがありません。弱者は死ぬ、それは道理で御座いますからな。その様な弱者どもよりも、魔王様が我々と共に戦って頂ける事の方が何百倍も心強いのです。交渉は諦めません。諦めきれません。」
「うーん?じゃあ逆にバフォル、コッチに入らない?悪魔王じゃ無くて俺に仕えるって言うのはどう?」
俺のこの言葉に今までずっと微動だにしなかったバフォルがピクリと動いた。ホンの僅かだったけど俺もケンジもミャウちゃんもそれを捉えた。
「わたくし如きなどを誘うなどと、魔王様は御冗談がお好きなのですね。神の兵「プレイヤー」を横に侍らしていらっしゃていますが、どの様な甘言で寝返らせたのか、ここは一つ後学の為にもご教授しては頂けないでしょうか?」
「あれ?知らない?俺の事ってそっちは監視していたんじゃ無かったの?」
「どうやらこちらの者どもがそちら様に嫌われておる様でして。どうにも尊き魔王様に近づく事を許しては頂けず。」
ミャウちゃんの部下たちがどうやらこれまで陰で俺を監視していた悪魔たちを排除していたらしい。今初めて知った。
「ふーん、じゃあケンジがどうして俺と行動を共にしているのか知らないのか。なら教えても良いんだけど。バフォルが悪魔王の所を辞めて俺に仕えてくれたら、って事で。どう?」
「お戯れを魔王様。わたくしは誇り高き悪魔族。お仕えするのは只お一人。死んでも裏切る様な真似は致しませぬ。」
「ほら、そう言う所が倒したくない理由なんだよねえ。良いキャラしてるし、こうしてちゃんと話し合う事もできるしね。問答無用とか言った感じでこっちを殺しに来たりしない。うーん?今こんな事を口にするのはふざけてるかもしれないんだけどさ。同盟を組むって言うのも選択肢から完全に除外してるって訳でも無いんだよなあ。」
ここでバフォルが「ならば今からでも同盟を」と言った所で俺は真実を伝えた。
「すまないな。俺は「プレイヤー」なんだよ。だから、諦めてくれ。」
この衝撃の事実にずっとこれまで冷静だった目の前の悪魔族は驚愕と分かる表情を浮かべた。




