攻略!悪魔王編「悪魔王じゃ無くて魔王に来た」
そしてとうとうその日がやって来た。僕はこの時、何処に居たかと言うと。
「魔王の城でゆっくりしていて良いのだろうか?」
僕はそう溢す。玉座の間で。テーブルと椅子がここに置かれていてそこにはティーセットが。
「まあ良いんじゃない?ミャウちゃんが本格的に動いてるし?」
僕は聞いてしまっていた。ミャウエルが陰で「コレで本格的に拠点防衛の訓練ができる」と口にしていたのを。
今すぐプレイヤーたちに「にげてー!」と叫んで伝えたい衝動に駆られたがソレを僕は堪えた。
きっと今回の事でプレイヤーたちは血祭りに上げられるに違いない、そんな確信があった。
「光の力ってのがある事は僕も知ってるけど、それをプレイヤーたちが多く持っていたとしたら危険なんじゃ・・・」
大分このゲームも長い時間検証されている。ずっと忘れ去られていたかもしれないが、プレイヤーには強力な力が存在する。魔族特攻の効果がある力が。
「悪魔王編」の導入と「魔王触れるべからず」が浸透してコレの事は掲示板に中々に上がら無くなって久しい。
しかしどうにもプレイヤーのこの突然の行動に僕は嫌な予感がする。
けれども魔王はコレに関して何ら心配などした様子は無い。
「うーん、その事をミャウちゃんが気にしていないなんて事は有り得ないと思うんだよねぇ。多分そこら辺の準備も防衛計画に組み込んであるんだと思うよ?今更抜け目は無いよ多分。」
未だにこのプレイヤー専用の「光の力」は取得条件が判明していない。
ソレを得たと言うプレイヤーは匿名で掲示板にこう投稿している。
【何を言っているんだと思うかもしれないが、俺にも一切何が起きたか分からねえ。気付いたらスキルの中に表記があった。きっかけが何だかサッパリなんだ。特別な何かをした覚えなんて一切俺には無い。なのに何故かふとした瞬間にステータスに違和感を覚えた時にスキルの項目をチェックしたら見つかった】
いつ自分がその力を手にしていたかを全く自覚できないと言う。こうなるともう誰もが「その内に自分もいつの間にかゲットしてるだろ」と言った感覚が植え付けられてしまっていた。
検証班と呼ばれるプレイヤーたちが必死になって色々とイベントを熟し、そう言った情報を精査し、フラグを探し回っても、結果として誰一人としてこの力をゲットするに至っていないのだ。
本当に切っ掛けが分からない不明なスキル。隠しパラメーター的なものが関係しているとプレイヤーたちの間では結論付けられている。
「でもさ、その力が秘かに集められていて今回魔王の国に攻め入ろうって計画が発動したとかだったら?もしそうだとその揃えた数の多さによっては死人が出るんじゃ・・・」
それでも僕は心配になる。秘密裏に大手の攻略組が「光の力」を発現?と言って良いのかどうなのか?そう言ったプレイヤーをこれまでずっと搔き集めていたとするとなると非常に危険だと思うのだ。
これ程に「魔王には手を出すな」と広まっていた、ある意味常識になり始めていた所でこの大胆なプレイヤーの動きである。
そんなずっと手を出されていなかった状況だから、勝算と言うモノをその手に入れていなければこれ程の行動には至らないと思うのだ。
そしてその動くための切っ掛けとしてこの「光の力」を行使できるプレイヤーの数が行動を起こすのに確信を得られるだけの数が充分に集められての事なのだと考えると納得するし腑に落ちる。
しかしここで真面目な声で魔王がこう一言口にした。
「悲しいけど、これって戦争なのよね。」
「・・・魔王、それが言いたかっただけでしょ。」
こうして戦いの火蓋が切って落とされた。