攻略!悪魔王編!「代わりにやってくれ」
悪魔王編に集中している今もバイゲルの屋敷にはプレイヤーが定期的に攻め込んでいる。
徐々に、その攻略は亀の歩みではあるが進み、もう少しで拠点からの撤退すら視野に入るくらいにまで迫っているという。
俺は無理をせずに引き上げて良いと伝えてあるし「命大事に」と命令を出しているので大丈夫だとは思うのだが。
「えー、だけどバイゲルの屋敷の攻略はこう言った品があるので一気に進んでしまうかもしれない。ドワーフたちへここ等辺の事の周知ができていなかったのが原因だ。俺の認識不足だった。落とし穴って感じだ。」
忘れていたと言えばそうなるし、プレイヤーたちにドワーフ製の武具や装飾具を販売する事を決めたのも俺だ。
全ての責任は俺にある。なのでここで俺は会議にバイゲルの代理として来ていた「メリー」に頭を下げた。
「魔王様が頭を下げちゃ駄目です。私たちは魔王様の為に存在します。魔王様の御心のまま、自由に振る舞ってくださりませ。私たちは只々それに従います。それが喜びです。」
メリーはそう言って静かな眼差しで俺を見つめてくる。こう言われてしまうと俺も頭を上げざるを得ない。
このメリーは特殊な経緯を得て存在する特殊な人形だ。自我を持ち、意志を持ち、自由を持つ。
何でこんなヤベエのができちゃったかなぁ、などと言った今更な感想を俺は脳内に浮かべるのだが。
「取り敢えずバイゲルと一度そっちの屋敷の件でしっかりと話合っておきたいから、今度時間ができた時にこっちに来る様に伝えてお・・・あー、そうだな。俺の方からそっちに遊びに行くのも良いか。」
この際だ。バイゲルの屋敷に遊びに行く感じで訪ねるのが良いだろう。その時にその屋敷の放棄も考えて話合いをすればいい。
この俺の言葉にメリーは「嬉しいです魔王様」と喜んでいる。俺が屋敷に遊びに行くのが嬉しいらしい。
そんなやり取りをケンジが引きつった顔で見て来ていた。どうやらメリーに関係がありそうだった。その視線がメリーに向いていたから。
なので俺はケンジに声を掛けてみる。
「ケンジ、どうしたんだ?メリーの顔はそんなに気になるか?」
「いや、魔王、分かってはいたんだけどさ。結構トラウマになってるっぽいんだよ。」
そう言うケンジにその言葉のより詳しい説明を求めたら経緯を教えてくれた。俺はコレに納得。
「あー、そっかぁ。森の中でメリーとねぇ。それは御愁傷様だよ。しかも結構な鬼ごっことか、それは心へのダメージが中々くるよね。」
「その時はケンジは只のプレイヤー、侵入者だったの。排除行動は仕方が無かった。でも今は大丈夫。ケンジは仲間。」
メリーはそう言ってケンジに握手を求めてその華奢な手を差し出す。
コレをおずおずと握るケンジはまだおっかなびっくりと言った感じだ。
その仲直り?の握手が終わった後にケンジが気になる事を話し始めた。
「そう言えばさ、僕が以前にボッズとキリアスと組んで攻略した数字付き悪魔のダンジョンに変な悪魔が居たんだよ。報告はされてる?今考えるとソイツも特殊系悪魔だったのかなぁ、って思うんだよね。そいつもそのダンジョンの中のもの凄く分かり辛い、と言うか、プレイヤーには絶対に気付け無いだろう場所に存在してたんだよ。だから数字付き悪魔のダンジョンももう一度再調査もしてみた方が良いかもしれない。」
「あー、それは確かキリアスから聞いたな。一体妙な悪魔との戦闘をしたって。ボッズが変な場所に居たそいつを発見して、って流れだったんだっけか?確かにもう一度再捜索はしてみた方が発見確率高そうだ。」
何も情報が無い状態で広大なフィールドを捜索させるのは非常に非効率だ。この特殊系の悪魔がケンジが遭遇した以外に居るかどうかも未だ全く分からない。
それならケンジのこの発案頼みに調査に出している魔族を攻略済みの数字付き悪魔のフィールドへと集めて一極集中して一か所ずつ捜索をした方が見つかる可能性があるかもしれない。
とは言えソレを直ぐにと言う訳にも行かない。広がって各地に散らばっている魔族たちを再招集して全員集めるにしても時間はかかる。
「それじゃあこの特殊系悪魔の存在を広めちゃう事になるけど、冒険者ギルドに依頼を出して捜索を代わりにプレイヤーにさせようか。」
幾らウチの魔王国が強大になろうとも、それ以上に広く深いこの「世界」を満遍無く探すと言った事は不可能だろう。
俺たちの代わりにプレイヤーにソレをして貰う。それこそ魔族の数よりもよっぽどプレイヤーの方が数は多いのだ。利用しない手は無い。
しかしだからと言ってそのプレイヤーの全てが冒険者ギルドに所属し、そしてクエストを熟している訳じゃ無い。
なのでこの件を数多くのプレイヤーに受領して貰うにはもっと工夫が必要だと考えられた。
なので残りの今日のこの会議はそのアイデアを出す時間に費やされた。