攻略!悪魔王編!「お前こんな所で何してんの?」
そんな喧嘩に店の店員が客たちの間に入ってその喧嘩の元となっている問題の商品だろう腕輪を取り上げていた。
そしてシレッと「困りますお客様」と言ってその両パーティを諫める。しかしコレにプレイヤーたちが。
「良し!良く取り上げた!ソレをこっちに渡せ!買うのは俺たちだ!」
「何だよこの店員は!?出しゃばって来るんじゃねえ!ソレをこっちに戻せ!ソレを買うのは俺たちだって言ってんだろ!」
店員を睨んで双方いきり立つ。しかし店員は静かに、そしてさっさとカウンター裏に入って行ってしまう。
その素早さに今先程まで喚いていたプレイヤーたちは呆気に取られて言葉を止める。
しかし一拍置いて怒りの声を上げ始める。
「何だよこの店は!?こっちは客だぞ!対応どうなってんだよ!」
「ソレが客への態度か!戻って来いや!ふざけんじゃねぇぞ!」
勝手な事を口にしてはギャーギャー騒ぐプレイヤー十二名。
双方はフルパーティであり、それが一気に気勢を上げて店に対して不満をぶつけている。
それは中々の声量で周囲の者たちの注目を浴びているのだがそんな事を当人たちは御構い無し。
だがここで一気にソレが静かになった。その原因が。
「お客様たちは店に迷惑を掛けていると言う自覚は御座いますか?ソレが無いのであれば客と見なさず狼藉者として排除致しますが、いかに?」
大男、それがカウンター裏から出てきたのだ。筋骨隆々、その存在感の強さがプレイヤーたちの口を閉じさせたのである。
そして続けてその「用心棒」は告げる。
「この様な所でプレイヤー同士争う様な下らぬ暇があるならば魔物と戦闘をしてそのレベルを上げる事をお勧め致します。」
そう言って大男はぽきぽきとその指の関節を鳴らして拳を作る。その言葉はどうやらスキルの「威圧」を含んでいる。
このスキルは格下を一瞬だけ圧し止める効果があると言うのを俺は知っている。コレにプレイヤーたちが影響を受けてビクッと硬直していた。
そして何も返さないプレイヤーたち対して大男はその放っている圧力を上げていっている。
「さて、如何致しますか?」
フンと鼻で笑うその「用心棒」にプレイヤーたちが馬鹿にされたと思ったのか。
「ふっざけんな!お客様は神様だろうが!その態度は何だ!」
と、そう言って気炎を上げた。だがそこまでだった。プレイヤー全員が次の瞬間に吹き飛ばされたのだ。
ソレをやったのは当然「用心棒」。正拳突き、その姿勢で止まっている。どうやらこの「用心棒」のたったの一撃で十二名は吹き飛ばされたらしかった。
しかしプレイヤーたちの方にそこまでのダメージは無さそうだった。
吹き飛ばされた事に最初は驚いた様子である。しかし次第にソレも収まってきた後は段々と立ち上がって全員が「用心棒」へと敵意を剝き出しにして叫ぶ。
「NPCの分際で俺たちに手を出してきやがって!このクソゲーが!ふざけんじゃねーぞ!もう我慢ならねえ!」
プッツンだろうか?自分たちの態度を棚に上げて攻撃を仕掛けて来た相手に怒るとはアホらしい。
ちゃんと「用心棒」はこのプレイヤーたちを狼藉者として排除すると宣言していた。その言葉の意味をちゃんと認識していない。
これでは恥ずかしい逆切れである。周囲に目撃者が多数である。彼らはこの後にきっと噂にされるに違いない。
野次馬はこの間にも増え続けていて見物人が周囲でこの後の顛末を見守っている。俺もその中の一人。
(あー、どうやらプレイヤーたちはこの後地獄を見るだろうなぁ)
俺はこの「用心棒」の一撃に見覚えがあったのだ。そう、ボッズである。
この「用心棒」の正体はボッズだろう。何がどうして今ここの店の用心棒をボッズが「変装セット」を使ってまで見た目を変えてやっているのかは分からない。
ボッズは「強い奴に会いに行く」系の脳筋である。なのに何で今ここでこの様な役目をしているというのか?
ここでどうにもボッズが宣言する。
「良し、ならば決闘だ、戦争だ。お前ら付いて来い。もしやここまできておいて今更怖気づいたなどとは言わないよな?向こうに暴れても良い場所がある。纏めて掛かって来い。全員俺一人で潰してやる。」