攻略!悪魔王編!「疑いが出て来た」
「とまあ、そんな事があってさ。こう言った事例は他に報告に上っていたりしない?魔王?」
俺はケンジからそんな質問を受けていた。ずっと数字付き悪魔の方に、ポイント稼ぎに気が向いていてそんな事態に秘かになっていたなんて事を想定すらしていなかった。
「うーん、これは第十悪魔の「逆さ城」を攻略する前に調査が必須かなぁ。一応はケンジが遭遇した様な存在の報告は上がって来てないね。あー、それもそうかも?プレイヤーの監視とかが結構その中心になってるからなぁ。そう言ったフィールドに存在する特殊な能力を持つ悪魔とかは考えてもみなかったから。」
想像の外側、運営が「悪魔王編」にそんな存在を用意していたなんて予想できないだろう。そんなヒントなどこれまで一個も発見していない。
掲示板をちょくちょく覗いていたりしてはいるが、そう言った悪魔の情報などがあったなどと言った話題があれば盛大にそのネタで盛り上がっていたはずだ。そんなスレッドも見た事は無い。
「僕が遭遇した悪魔はキメラ型だったけどさ。もしかしたら別の特殊タイプが不人気の場所にひっそりと隠れて力を増してるかもしれないね。見つかって無い奴が今回と同じでキメラ型だったとしてさ、もし、それが完成形になってプレイヤーの前に現れる様な事になったら、きっとレイドボス化してると思うんだ。」
ケンジは自分が倒したキメラ悪魔に対しての経験を元にそう確信した様子だ。
レベルアップに膨大な経験値が必要なケンジが今回そのキメラを倒して大幅にそのレベルを上げている。
これはケンジが知らぬとは言え結構な「博打」を打って勝ちを得たからこそである。
もしキメラの事を最初からもっと正確に認識、把握できていたらケンジは恐らくは討伐に挑んだりはしなかったと思われる。
「ケンジの懸念は理解したよ。取り敢えず今から再編成してプレイヤーの監視観察を一旦停止してそっちの調査に出る様にしておいてくれるミャウちゃん。あ、見つけたとしても戦闘は絶対に無しね?無事に生きて情報を持ち帰って来る事。命大事には徹底してね。」
俺のこの言葉でミャウちゃんが「御意」と言って一旦会議室を出て行った。
「いやー、それにしてもケンジは良く倒せたね、ホントそんなヤツをさ。幾らぶっ壊れな効能してるその丸薬を使ったってさ?ほんのちょっと間違いが起きてたら即座に消えてたのケンジの方じゃん?」
俺は事情説明の段階でケンジがステータスアップの丸薬の事を聞いている。
そしてその効果に「何でそんな過剰な」とツッコミしていた。
いずれはプレイヤーもそんなぶっ飛び効果のアイテムを自身の手で創り出したりもするのだろうが。
それでも今の段階でこの様な「丸薬」なるものの存在がプレイヤーたちの間に広まったらきっと大騒動になるだろう。
「位置取りに関しては真正面になる場所を探すのに神経使ったよね。後はなるべくならデコボコの少ない地面。足を引っかけただけで死ねる。いや、本当にコケなかったのは運だなぁ・・・」
シミジミとそんな事を言うケンジ。吞気過ぎる。こうして生きて戻ってこれたのだからそこに突っ込むのは今更か。
キメラ悪魔を倒した後にさらに30分程迷って森を脱出できたと言うのだからケンジは幸運だ。下手すればそのまま警告が出て強制ログアウトの時間まで迷い続ける、なんて事になっていたかもしれないのだから。
いや、そもそもキメラ悪魔に遭遇する切っ掛けになった「ピタゴ◯スイッチ」みたいな目に遭った事を嘆くべき所だろう先に。
まあ別視点で考えてみればコレもある意味では「運が良い」と言えなくも無いのが何とも言えない。
何せこれが無かったらこの様な悪魔が存在した事を知る機会が無かっただろうから
「まさか、もしかしたら数字付き悪魔の方が囮で、本命がこっちの特殊タイプの悪魔の方だった?」
俺はそんな可能性を思い付く。コレにケンジも「そのパターンもアリかぁ」と同調。
「本腰を入れて調査をしないといけないかもな、こりゃ。」