攻略!悪魔王編!「きっとまだ早かった」
カマキリ魔物にキメラの攻撃が当たった瞬間に、僕の持つ剣もブスリ、とキメラの中心に居る悪魔に深々と刺さっている。
だけどここで止まってなんて居られない。その刺さっている剣を力任せに無理矢理、滅茶苦茶に引っ掻き回す。
「うああああああああああああああ!」
ここ一帯、周辺に魔物が居ない事はもう既に分かっている。
二時間もキメラを追跡してきて出会ったのはカマキリ魔物一匹だけ。
だから僕は確実にこのキメラ悪魔を倒す為の気合を入れる為に、全身に力を込める為に、叫んでいる。
普通なら危険地帯で叫ぶなんて事は禁止事項だろう。この声に周囲の魔物が集まって来て囲まれて危機に陥るからだ。
だけど今この場ならソレをしても大丈夫だと確信していた。
こうして剣が突き刺さっている状態であればソレをぐりぐりと抉る様に動かすくらいはできる。
丸薬でステータスが爆上がりしている状態でも、それくらいなら容易だ。
危ないのは踏み込み速度に僕の反射神経が追い付けないで自爆する事だけ。
今のこの超接近戦、しかも剣が悪魔に刺さったままの状態なら後はソレを腕力に任せて動かすだけで良い。
「ぬがぁァぁァぁァぁァぁァあッ!」
最後のフィニッシュはそのまま剣を斬り上げる。すると悪魔は真っ二つ。光となって消えていく。
この悪魔に融合していたとみられる昆虫魔物の各部位も光と変わって消えて行っていた。
「カマキリは・・・キメラの一撃で潰れてら。」
僕はキメラが消えていく事をしっかりと確認した後にカマキリ魔物を気にし始めたのだが。
どうも一撃で頭部を粉砕された事で絶命していた。コレにホッと胸を撫で下ろす。こちらも徐々に光と消えて行っていた。
さて、今の僕のレベルとステータスだとカマキリ魔物は敵じゃ無いのだが。
丸薬を使用している状態での戦闘はこっちが自爆してやられてしまう可能性がもの凄く高かった。
今の僕はまだ丸薬の効果が残っている。ちょっと力加減を損ねて動くだけで僕の身体は一気に10m以上も一気に跳んでしまう。その速度も異常だ。
攻撃を避けようとしただけでそのまま木に衝突。そのダメージで自分が死にかねない状態だ。
攻撃するのに踏み込む時も同じである。脚に込める力加減を間違えてその踏み込み速度がもの凄く早い、魔物を通り過ぎてそのまま木に正面衝突。
木にぶつかっても死ねるけど、魔物に真正面から体当たり、って事になっても死ねるだろう。
「このまま効果が終わるまで静かに待とう。・・・でも万が一にもここに魔物が集まって来ちゃったら?」
僕は直ちにこの場をゆっくりと離れ始める。それこそその歩みは、速度は本当に亀の如くにゆっくりと。丸薬の効果が切れるその時まで。
そうしてやっと危険な時間が過ぎて元に戻る。ここでやっと自分のステータス画面を確かめてみた。
「・・・あれぇ?レベルが爆上がりしてるぅ?」
僕のレベルが50になっていた。余りにも上がり過ぎている。この現象はあの「ハエ」と似ている。けれども大きく違う点も考えられた。
「まさかあのキメラって相当にヤバい奴だった?僕が認識していたよりも遥かに?」
これは恐らくだが発見される時期がもっと遅かったら、丸薬を使用したステータスでも倒せなかった可能性がある。
運営としてはこの森にキメラ悪魔を配置して、こんなにも早期に討伐されるとは想定していないかもしれない。
この事に思いを馳せて僕は改めて背筋が寒くなった。