攻略!悪魔王編!「時には大切な事」
今回のライブ映像は多くのプレイヤーの心に新たな恐怖を刻み付けた。あれから一週間が経っている。
「いやー、今回の事で大分ポイントは稼げたけど。正直ソレで「逆さ城」に派遣してた部下たちが追い出される始末になるって思いもよらなかったなあ。」
件のプレイヤーたち全員をレベル「1」にまで潰し続けた事でポイントウハウハだったのだが。
配信していた映像によりプレイヤーの間には疑心暗鬼が広がってしまったのだ。まさか自分の直ぐ横に居るプレイヤーは魔族が変装しているのでは?と。
その結果に「逆さ城」でプレイヤーの見張りとケンジの経験値稼ぎの補助に出ていた魔族たちが疑われて「逆さ城」から追い出されたのだ。
「まさかそっちに火の粉が飛ぶとは思っていなかったよ。ごめんね、ケンジ。」
「いや、別に良いけどさ。相変わらずやる事がド派手でエグイし、陰湿さも感じるんだけど?良い加減もうちょっと控えめってのを覚えた方が良いと思う魔王は。」
ケンジにそうツッコまれてしまった。でも反省はしない。
さて、この件で今プレイヤーたちの間には「互いの顔を引っ張り合う」といった挨拶が流行り、今もその動きは沈静化していない。
間抜けな挨拶方法ではあるのだが、確かにそうして顔を引っ張られると変装セットは外されてしまう。そう、他人がそうして無理やり外す事が可能なのだ、この変装セットは。
このオカシナ仕様はどうなっているのだろうか?研究班はこの謎に挑んでいるが、どうせシステム上の特殊処理だろうから解明はできないだろう。
プレイヤーの身に着けている「アクセサリー」類は無理矢理奪おうとしてもできないのであるが。
「で、ケンジ、もうそろそろ第十悪魔も潰して悪魔王を引っ張り出そうと考えてるんだけど、どうする?」
「えー?どうするも何も。シナリオを進める、進めないは「プレイヤー」の自由意志に掛かってるんじゃない?それこそ魔王も「プレイヤー」なんだよね?だったら魔王がやりたいようにやれば良いんじゃないかなぁ。」
ケンジは今レベルアップを諦めてはいないのだが、どうやら余りにも一つレベルを上げるのに経験値が膨大に必要な事で怠さを感じ始めてしまっている様だ。
「逆さ城」に最初に入った頃はまだ「やるぞ」みたいな空気は纏っていたのだが。そこから追い出された今はその雰囲気が大分萎んでいる。
「じゃあケンジのヤル気が戻って来た時にまた調整しようか。大分お疲れみたいだしな。あー、確かに全然レベルが上がらないって結構堪えるよね、気力は残っていても。」
今のままでも充分な戦闘はできる。だから、無理に上げなくても。そんな気持ちが湧き出て来て「他の遊びもしたい」と浮気心が出て来てしまうのだ。これを抑え込むのは辛い。
経験値稼ぎは同じ事の繰り返しが一番効率が良い。そして今の所は第十悪魔のダンジョンに出てくる雑魚悪魔を倒すのが一番なのだ。しかし飽きる。
勢いが持続し、かつ日課にできる様な気楽な気分でいられれば苦痛は和らげられるのだが。
ここに来てプレイヤーたちの疑心暗鬼問題でギスギス、ついでにソレが原因で「逆さ城」から追い出されたと言うのであればこの気の落ち様もしょうがない。
「幸いにも変装してる事がバレて無いから良かったものの。コレがバレてたらもっと騒ぎがデカくなってただろうしなぁ。」
俺はぼやく。幸いにもそのプレイヤーは魔族たちの「顔」を引っ張ってくる様な真似はしてこなかった。
ケンジが追い出されたのはそのパーティの言いがかりみたいなものだ。
あのジョブをコロコロと変えていたパーティがどうやらケンジたちを追い出したかっただけらしいのだが。
「今はもう「逆さ城」の調査は打ち切ってるからねぇ。そうなるとジョブ検証してるあのプレイヤーたちは僕らが邪魔になるだけだっただろうしな。短い間だったけど仲間なはずだったんだけどねぇ。」
調査も打ち切りになり、そこに言いがかりを受ける。これ以上「逆さ城」に居ると本当に変装セットで姿を変えている事がバレかねないと判断してケンジは素直に追い出される事を選んだそうで。
「なあケンジ?いっその事気分転換でもしてきたらどうだ?このままケンジのヤル気が戻らなくてフェードアウト、なんて事になったら俺は寂しいよ?」
俺はケンジに思い切って遊んで来る様に勧めた。