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何で俺だけ  作者: コンソン
嵐が始まる
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攻略!悪魔王編!「残酷なる罠」

 じわりじわりと追い込まれていくプレイヤーたち。次第に自分たちが罠に嵌められてるのでは?と言った気づきがその表面に出てきている事が窺えた。

 最初からずっとここまで、彼らはそもそも一度だって逃げる「スティール使い」に追いつけはしなかった。

 惜しい、そんな場面はありはしたのだが、しかしそれでも包囲も追い込む事も出来ずに「逆さ城」まで逃げられているのだ。

 そして城の中では罠のオンパレード。それこそ怒りで我を忘れていたプレイヤーたちは自分たちのHPが三分の一まで減ってしまった所でやっと冷静さを取り戻したのだ。

 プレイヤー達は「もしかして用意周到?」「盗っ人は自分たちを最初からこの場に誘い込む為に?」思考を巡らせ始めてそんな事を話し始めた。


「なあ、俺たちってヤバいんじゃないのか?」


「何言ってんだ!もう引き下がれねーだろうが!」


「あいつを捕まえて、それでハイ、盗まれた物が返ってきますか?って感じだな。」


「あ?まさかこのまま行くとボスと戦闘って事かよ?ソレは無いんじゃねーの?」


「そう言えばここ、第十悪魔が一度も発見されてねーってどっかで見たな?」


「もう泥棒もどっかに行っちまって姿も見えねー。それよりも進退を決めようぜ。」


 もう今の時点で城の奥に既に入り込んでいる十五名。そう、ここまで一人も落第した者は居ない。根性だけは人一倍あるのかもしれないが、それがアダとなっている。

 城から出るには少しだけ面倒で、しかしこのまま奥に行ってもロクな事にはなりそうも無い。

 だけども盗まれた品々は取り返したい。だけどこのまま奥に入り込めば罠にHPを削り切られてデスペナルティを食らう可能性が非常に高い。


「お前ら!あのクソ野郎を許せねーよな?だったらここからは罠を解除して行って慎重に追うぞ!」


 恐らくはリーダーなのだろう。一人がそう叫ぶと全員が怒りを取り戻した。どうやらこのまま突き進むつもりらしい。

 怒りの形相のままにその動きは冷静だ。どうやら斥候職のプレイヤーが居たらしい。

 罠を次々に発見して行ってソレを仲間に知らせている。俺にこれはツッコミを入れたい。

 何故それを最初からやらないのか?と。まぁ怒りで我を忘れていたと言うのがあるだろう。

 ソレと、一つ一つのトラップがそこまでの威力を持たない小さいモノが多かったと言う点もあるかもしれない。

 罠を解除するよりも勢いのまま突破して目標を捕捉する事だけに意識が向いていたんだろう。

 それが冷静さを取り戻した事で自分たちの状況をようやっと把握したと言った感じか。


 しかし甘い。スキルレベルが低いんだろう。取り逃し、見逃し、解除失敗など、多少マシになった程度で、罠をまだまだ起動させてしまっている状態だ。


「くっそ!クッソ!くっそがァぁァぁァ!隠蔽と連動!陰湿な罠ばっかり!しかもなんだよコレは!なんでこんなに解除方法も難解なんだよ!こんな小っちゃい罠にここまでする必要あんのかよ!?何処のどいつだ!こんなクソみたいな罠設置してる奴はよおおおお!」


 イライラ大爆発。斥候職のプレイヤーが叫ぶ。その叫びでどれだけ高度な仕掛けを組んでいるのかを察して自分たちが追っていた存在が「ヤバイ」とどんどん認識していくプレイヤーたち。

 プレイヤー達の空気が次第に「このままで良いのか?」再びそんな雰囲気が吹き出してきた時にソレは目の前に。


「おい、アレを見ろよ。あれってもしかしてお前が買ったって言ってた高級回復薬じゃね?」


 一人が開いている扉からその部屋の中にポツンと無造作に置いてあるソレを見つけた。

 その声に一斉にそちらに全員の視線が向く。そして次には「何故そんな場所に?」と言った疑問だ。


 だけどそのアイテムの持ち主だった者はその部屋に飛び込んでしまう。思わずと言った感じで。

 自分の物が取り戻せる、たったその一つだけでこれまでの空気が、気持ちが、吹き飛んでしまった彼は一瞬で飛びついてしまった。罠に。

 置かれていた高級回復薬、それを手に取って「よっしゃぁ!」と叫んだその瞬間に彼は冷静さを取り戻したんだろう。

 次には「あっ」と言った表情になった。しかしその時にはもう遅かった。

 彼の立つその場所から火柱が上がる。激しい熱、赤く染まる部屋の中。その光景に廊下に居た誰もが声を出せないまま。部屋に飛び込んだ仲間に「危ない」と「入るな」と、止める事も出来ぬまま。


「ひえええええええ!?」


 火が収まった時にはそこにプレイヤーはもう居なかった。青白い光が漂うだけ。

 コレに部屋の側にいたプレイヤーの一人が叫び声を上げて腰を抜かして床に倒れ込んだ。


(エゲツナイ・・・相変わらずウチの魔族たちはプレイヤーに対して容赦が無い)


 俺たちはずっとプレイヤーを追い続けていこの光景を撮影し続けていたのだが。

 思わず心の中で俺はそう呟いてプレイヤーたちに対して「哀れ」と言った気持ちが浮かんできたのだった。

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