攻略!悪魔王編!「悪戯過剰」
別に同情した訳じゃ無い。哀れと思っての行動でも無い。
あのチンピラ六人組プレイヤーたちに良い様に使われる事に抵抗を見せないと言うのは処世術の一種だ。
自分の受ける被害をなるべくなら最小限に抑える為に只々自分に押し付けられた案件をさっさと終わらせて自由を得る。
理不尽、不条理、不自由、恫喝を受けていた間の時間はいつか時が経てば笑い話に。そんな気持ちだと思う。
結局はゲームの中、現実には何も影響が無いからと安心している部分もあるだろう。
だから、俺はあの六人組に利用され使われているプレイヤーたちを襲わない。
「あぁ?何だぁ?この間まであったはずなのに、なんでアレが無いんだ?」
腰のベルト部分に括っていたはずの防御力を上げる効果のあるドワーフ製のアクセサリーが消えている事に気付いたプレイヤー。
何故無いのかと体中を探して妙な動きになっている。それは滑稽な踊りの様だ。俺はソレを建物の脇に隠れて眺めている。
(よしよし、成功したな。いや、本当に凄いわ、これは)
このプレイヤーはあのチンピラ六人組の一人だ。こいつは今日街の中を単独で歩いている。
もちろんそのタイミングを狙って仕掛けているのであるが。
(さて、今日からが始まりだ。精々頑張って防ぐんだな。防げるものならな)
俺の隣には変装セットを装備してプレイヤーに化けている魔族が現れる。その手にはさっきのプレイヤーの腰に付いていたアクセサリーが。
「ミャウちゃん、回収して持っておいて。よし、それじゃあ今日から地道に一日一個ずつ盗って行くよ。宜しくね。」
プレイヤーからアクセサリーを奪ったのはその魔族である。
この作戦を決行する上で集めた十五名は「スティール」と言うスキルを持っている。このスキル、MPを使用する技能なのだが。
これ、プレイヤー同士には効果が出ない。ジョブ「盗賊」系統で得る事が可能なスキルであり、魔物に対して効果を発揮するのだ。
これは魔物から戦闘中にアイテムをゲットできたりするのだが、その中に魔物が生存している時でないと得られないという条件が付いたレアアイテムも存在する。
もちろんそう言ったアイテムは盗れる成功確率が低かったりしてハマるプレイヤーも続出していたりする。
これ、当然「盗む」系統の特技を持つ魔物も存在する。魔物がプレイヤーの持ち物をランダムで奪うのだが。
そう言った魔物は嫌がらせの如くプレイヤーから物を盗んだ後は逃走を図ると言った傾向がある。
話がズレた。要するに「魔族がスティール発動したらプレイヤーからアイテム奪えるんじゃね?」である。
この考えはケンジに協力して貰って検証している。それを経て実際にこうして実践、実行して見事成功した訳だ。
そしてこのスティールの威力はヤバい。プレイヤーの身に着けている物を狙って奪えるのである。
「さて、バレない様に街から出ようか。アイツらへの見張りは?」
「はい、万全の態勢をとってあります。奴らを見失う事は絶対に有り得ません。」
ミャウちゃんが俺の質問に答えてくれる。ミャウちゃんがこう言うなら絶対に奴らは逃げられはしないだろう。
こうして奴らが持っているドワーフ製の物を全て奪う計画である。
因みにこのスティール、ちゃんと「盗る物」を把握、イメージできていれば何とインベントリからも掠め取る事が可能と言う壊れっぷり。
既に奴らがゲットしているドワーフ製品は全て把握している。一つも残しはしない。逃しはしない。
「さて、全員から奪うぞ。こそこそ、地道にな。フフフ、ちょっと楽しいな。」
魔王がやるにはみみっちい悪事である。だけどもこの小っちゃい事の積み重ねがその内に大きな結果にまで積み上がるのだ。
近い将来に、こいつらが怒り狂い、喚き散らし、慌てふためく様子が目に浮かんでくる。
「どうして悪戯って言うのはこうも楽しい気持ちになるのかねぇ。」