攻略!悪魔王編!「まだ暫く先」
あれから一ヵ月が経った。早いモノだ。しかし俺はまだ「逆さ城」の攻略に介入していない。
何故ならケンジがあのダンジョンでレベル上げ、経験値稼ぎをしているからだ。「逆さ城」に出てくる雑魚との戦闘は丁度良い手応えらしく、ケンジは「楽しめている」と口にする。
これはダンジョン内の掃除に参加したいとケンジがまとめ役のプレイヤーに申請した所その求めが通ったからである。
どうやらまとめ役プレイヤーが割り振りや人数の編成考え直していた所に申請が重なって、ケンジのパーティは雑魚狩りに入る事になったそうで。
「それでもまだ雑魚狩りし始めてレベルが「1」しか上がって無いんですが?散々僕に止めを譲って貰って経験値を多めに貰ってるのになぁ・・・」
今俺の前ではケンジがテーブルに突っ伏している。レベルを上げる苦労を愚痴りながら。
「あー、その気持ちわかるわー。ポイント稼ぎが俺も全然進まなくて悲しい気持ちになった事あるからねぇ。」
今日はケンジは雑魚狩りをお休みしている。まあ一ヵ月ぶっ通しで狩り続けていればソレも当然だろう。
精神が疲弊しているのだ。一向にレベルが上がらない事で。
これは以前にケンジがどんな偶然か?レベルが「1」のままで鍛えると潜在能力の底上げができるというイベントを熟し切ったのが原因であるからしょうが無い事ではある。
大器晩成型になったと言えば聞こえは良いが、それでも全く持ってしてレベルの上がらない今の現状ではモチベーションが保て無いのも無理は無い、と言うか、当たり前だ。
その代わりと言っては何だが、レベルが最大になれば「オレツエエエエエエ!」が、「無職無双」ができるくらいの強さを得られるのである。
一般的な普通の「ジョブ」ならばサクサクとレベルが上がりはするが、そこそこの強さで打ち止めと言った形と。
レベルを上げ切ってしまえば強いと分かるが、そこに辿り着くまでの苦労が計り知れない現状と。
どちらが良いかはその当人の方針一つだろう。
パーティでワイワイやりたければ通常のジョブで気軽に遊ぶ。
一人で地味にコツコツとが好きだ、それに耐えられると言うのであればこの「潜在能力全開放」の方が良いのかもしれないし。
「まあ、ケンジにはベリーハードみたいだけどね。他人事だから笑える話だけど。俺も一時期似た様な状況だったからなぁ。俺にはまだそこら辺に救いがあって、そこまで苦労と感じなかったからマシだったね。」
俺がこの「魔王」になった初めの頃は「どないしろって言うんじゃい!?」みたいな状況だった。
それが今では自由を得てそこ等じゅうを観光してたりする。
「あの変装セットを使って魔王がプレイヤーの居る場所に紛れ込んでるなんて誰も思いもしないだろうね。」
ケンジは溜息を吐きながら俺の今やっている事を羨む。
「まさかアレを魔王が装着して効果が出るとは思わないじゃん普通?で、そっちはそっちで随分と楽しんでるみたいだね。」
「そっちの「逆さ城」はまだプレイヤーたちに見つかって無いとか。随分とまぁ、スキルの熟練度が低い奴しか集まって無いのかね?」
こちらが把握している幾つかのギミックやら罠、隠し扉などを残しておいて放置している状態だ。
しかしそれらは発見がかなり困難なモノを残している。
ソレらをプレイヤーが自然と見つけられるかどうかを観察している状態だったりするのだが。
それでもこの一ヵ月、全くプレイヤーたちがソレらを発見する気配が無いのである。
それは要するに「まだ早い」と言う意味である。
「調査してるプレイヤーたちはどうやら切上げを検討してるよ。一向にダンジョン内に第十悪魔が出てくる気配が無い事で諦めモードになってきてる。自分たちはまだここの攻略を出来るだけの実力が伴なって無いから出てこないんじゃ無いかって。」
「でももしかしたら?って考えるメンバーが残って捜索は続けるんだろ?」
「僕らはその残り組に混じってこれからも雑魚狩りで経験値稼ぎをして行くけど。魔王はどうするの?」
「俺はそうだなあ。まだまだ見て回りたい場所が沢山あるから。それが大体終わったら第十悪魔攻略に顏を出すわー。」
当然進捗がいきなり進んでプレイヤーが第十悪魔を出現させたと言った情報が入れば観光は切り上げるつもりだ。
「ならまだ暫くは僕も地道な雑魚狩りをしましょうかね。」
こうして第十悪魔の攻略に手を付けるのはまだまだ遠くなりそうであった。