攻略!悪魔王編!「変えられるものと変えられないもの」
僕は翌日「逆さ城」の探索を休ませて貰った。それは何故か。
「ほほう、久しぶりに顔を出しに来たと思えばそんな事じゃったか。フムフム。まあ、良いじゃろ。」
師匠の所に転職の事を聞きに来ていたのだ。もっと早くに聞きに来れば良かったと後悔している。
「ここ最近はなぁ、魔王と悪魔王の動きを危険視する風潮が大きくなってきておった。ソレで各地に居るワシの様な隠居が弟子を取る様になっての。弟子入りすれば転職するまでには時間をかなり拘束されるがな。師が弟子に対して「許可」を出せば転職ができる。しかしその超えなければならない壁はそれなりに高いからのう。それを超えられない者は何時まで経ってもジョブを転じる事はできん。才能が必要なジョブもある。」
センスが求められるジョブもあると師匠は言う。そして追加で。
「もちろん制限もあるぞ。無条件にそんなにホイホイとジョブを変えられる訳が無い。何せ転職すればレベルはリセット。再び転職前のジョブに戻ってもまた一からやり直しじゃからな。自分に見合ったモノを探すにはそれこそ一生を賭けねばなるまいて。」
こうしてデメリットを聞くと結構痛い。ゲーム開始から決めたジョブ。それのレベル上げをして、スキルを得て、武具も揃えてと、これまでの努力がある。重ねて来た労力もある。
その今の強さから、さて、転職で全て消えてまたレベル一から始めるか?と言った悩ましい部分が。
「で、師匠のジョブはなんなんです?僕の今の状態ってどう言う事になってるんでしょうか?」
僕はその事を訊ねてみる。未だに僕のジョブが「無職」なのがおかしいと思ったからだ。
以前に師匠からは独り立ちの許可を僕は得ていた。ならばこれは師匠の持つ「ジョブ」に転職できていると言う意味では無いのだろうか?
そうならばここでちゃんと答えが欲しい。良い加減に人に見られても笑われないちゃんとした「ジョブ」になりたいのだが。
「ふむふむ、それはな・・・」
「ソレは・・・?」
真剣な表情で師匠は僕を見つめてくる。しかし。
「・・・秘密じゃ!」
僕は思いっきりがっかりした。何でそこで溜を作って引っ張って結局秘密なのかと。
「・・・じゃあ僕は他所の隠居さんに弟子入りして転職してきますよ。」
僕は肩を落として師匠の元を去ろうとした。師匠には世話になったがどうにも何も教えてくれない事に対してヤケッパチになりかけている。
だけども師匠はそんな僕の背中に声を掛けて来た。
「止めておいた方が良いぞソレは。言ったじゃろ?全てが無かった事になる。」
師匠のこの一言で僕の歩みは止まった。全てが無かった事に?その一点に僕は集中して考える。
「・・・あ、え?まさか?これまで師匠の所で積み重ねて来たアレも無かった事に?」
「そうじゃ。これまでの全てを捨てるからこそ、別のジョブになれるんじゃからな。レベル一からだけでは無いぞ?お前が別の者に師事してジョブを変えれば、これまでワシの下で鍛えて底上げして来た潜在能力も全て無くなる。それをお前は捨てられるか?心して決める事じゃわい。」
流石にソレは勘弁して欲しい。なので僕は思い止まる。
「・・・今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。」
「よかろうて。ならば今日も稽古じゃ。今のお前の全力をワシにぶつけてみよ。」
こうして僕はまだジョブ「無職」のままに、師匠との稽古で今日と言う日の時間が過ぎて行った。