何で俺だけ「弱き者のために」
「おいおい、俺たちが遊ぼうぜって誘ってやってるのによ?そりゃないんじゃないのー?」
「そうだよなあ。俺たちが君に手取り足取り教えながら守ってあげるって言ってるじゃん?一緒に行こうよ?ね?」
下手なナンパで一人でいる女性プレイヤーを囲う四人の男性プレイヤー。
「俺たちのパーティーは枠が余ってるしさ?そうしなよ。俺たちの所に入ればすぐにレベル上げさせてあげるって!」
「そうそう、戦闘は俺たちに任せてさー、君は一緒に居てくれるだけでオッケーだよ?なのに断るとかありえねーじゃん?」
その女性は明らかに迷惑をしているのに男たちは一向に彼女を解放しない。しないばかりかしつこさは増す。
周囲で見ている他のプレイヤーはこれを助けようともしない。自分たちがあのようなしつこい奴らに目を付けられる事を恐れたからだ。
誰もが皆このゲームを楽しみたいと思っている、願っている。だから関係の無い者たちはこれを止めようとはしない。
そしてこうした迷惑な者はどんな所にも、場所にも発生するものだ。この初期の街にも。
ここはプレイヤーが一番最初にこのゲーム内にログインするとスタート位置になる街だ。
そして初心者狩り、などと言った名で蔑まれる行為を多く見かけるのもこの初期の街が一番多い。
大抵のゲームでは初心者狩り、などと言えばPK、プレイヤーがプレイヤーを「殺す」行為であるのだが、このゲームの中ではこうした迷惑行為をそう呼んでいた。
「やめてください、あなたたちに用はありません。そこをどいてください。邪魔です。迷惑行為として通報しますよ?」
「うっひょー!?それは怖いねえ!って言うか、気の強い女の子ってかわいいよな!俺もっとお近づきになりたくなっちゃった!」
と一人が口にした後にそれは起こった。そいつが宙へと浮かび上がったのだ。
そして次には一筋の光がそいつへと走ったと思えば四肢がバラバラにされてしまった。
これではもちろん即死である。こいつの仲間の残り三人があまりの光景に唖然としてその場を動けずにいた。
居たのだが、直ぐにそれは失敗だったと言う事をそいつらは気付く。そう、同じようにその三人も宙に浮いたからだ。
「やべえ!何とか抜け出さないと・・・!」
「ちょ!なんだよコレぇ!」
「こんな所でPKに合うとか!やった奴はボコす!」
それがそいつらの残した言葉だった。次にはそいつらも先程の奴と同じ末路を辿った。
そいつらが消える場面は多くの者たちが目撃していた。この初期の街、そのど真ん中で堂々とPK。コレは誰しもが驚愕をした。
しかしコレをした当人は既にもう各所でこの行為と同じ事を何度も重ねてきていた。迷惑行為をするプレイヤーたちを血祭りにあげている。その数はかなりのモノにこの時点でなっていた。
そして絡まれていた女性プレイヤーの前に仮面を被って頭にはフードをした存在が姿を現してこう述べた。
その声は男とも女とも取れない、恐らくは仮面の効果だと思われるその不思議な声で。
「大丈夫だったか?無事ならばそれでいい。サラバだ。」
そう言ってその存在は一瞬にしてその場から姿を消す。これを周囲に多く集まっていた野次馬のプレイヤーたちも目撃する事になった。




