攻略!悪魔王編!「それこそ何度も調べているけれど」
僕は今喋る時には一人称を「俺」にしていた。
一応はこのプレイヤーの中に紛れこむ上で「正体を隠す」のだから徹底的にそこら辺も変えて行こうと言う事になったからだ。
「ではこの後はどういたしますかケン・・・いえ、失礼しました。ガイズ。」
魔王国諜報組織のメンバー五人が今回僕と一緒に来ている。彼らは頑なに僕に名前を教えてくれていない。ちょっと一歩引いた感じで対応をしてきている。マルスやマイウエルみたいには距離を縮めて来てくれていない。
僕は彼らとも仲良くしていきたいと思って名を教えて欲しかったのだが。向こうは「畏れ多いです」と言って来ていて今回の変装した際のコードネームだけで彼らを呼ぶ事しかできない。
今この場には最初に話をしてこの中の紹介と案内をしてくれたプレイヤーは居ない。自分の持ち場に戻っている。
「まあ今は誰も居ないし、なんて言って油断はしない方が良いか。ちゃんとこの「顔」の時にはガイズって名前で徹底的に呼んで貰わないとな。誰に見られてるか分からないしね。それじゃあ情報を整理しておこうか今の所の。」
ここの第十のダンジョン「逆さ城」と言われる場所は魔族も一通り調べている今までに。
なので今回のプレイヤーたちがこれまで得た情報とこちらの持っている情報を擦り合わせて見て何か異変や変化が無いかを確かめてみようと言う事に。
最初に案内された場所は何の変哲も無い客間。だけどオカシイのは何もかもが逆、「逆さ」であると言う所である。
「プレイヤーたちが雑魚悪魔を片付けながら一つ一つ部屋を探索している模様であると言うのは分かりますが。どうやら我々が調べている密度よりも大分低いですね。」
代表の一人が僕と会話している。他四名は再度この部屋を調査で辺りに散らばっていた。
そう、この部屋は何度も魔族たちが調べていて罠の位置も隠し扉と思われる部分も既に調査済みな一室であった。
しかしこの行動は今までとは全く変化が無いか、或いは何処かに新たな発見が無いかを綿密に調査していく為だ。
何故そう言った手間な事をやっていくのかと言うと、今だにこれと言った核心に迫る為の情報やアイテム、ギミックを見つけられていないからである。
「俺はここ初めてだし。こんなに気持ち悪くなる場所とは思ってみなかったからまだ少し混乱してるけど。取り敢えず一つ一つ罠を解除、隠し扉は開いて見て進んでみよう。プレイヤーたちはまだここでの調査の日数は浅いから。僕らが見つけた部分は共有して行かずにこっちで独自にどんどん解放して行こうと思う。それらの情報は後で纏めてプレイヤーに公開、重要な物だけは教えずにこっちで抱え込む感じで。」
僕は取り敢えずの方針を決める。こうして一つ一つ、プレイヤーが開けたであろう隠し金庫の中も再び確認。二重底みたいになっていないかどうか。
そしてプレイヤーが見つけられていないまだ手の付けられていないこちらが知っている隠し罠などの解除をしていく。
こうして時間と労力を掛けてこの部屋の徹底的丸裸を狙う。
「それにしてもどう言う処理をしてるのかね?このダンジョン。普通に気持ち悪いわー。」
ここのダンジョン、僕らだけが重力を「下」に受けているのだ。放った魔法も、行動も何もかも。
だけどもこの城に存在するありとあらゆる物が「上」に重力を受けている。
試しにここの城がどうなってるのか体感するために僕は実験をしていた。
天井に張り付く椅子を一つ掴んで僕らの手元に引き込んでみる。するとその椅子は上に引っ張られていく力が働いているので天井に椅子が「落っこちる」挙動をする。
椅子は軽いからまだ僕の手元に引っ張って引き寄せる事ができていた。ならばもっと重い物ならどうなのか?
例えばベッド。それを掴んで下に引っ張ってみても僕よりもベッドは重い。恐らくは「下」に引き下ろせない。
「このダンジョンの情報処理にきっとべらぼうにリソース割いてるんじゃないだろうか?」
滅茶苦茶変な部分にこだわりを持つこのゲームの運営である。これにはやり過ぎと言わざるを得ない。
そして最終的に「何も見つからなかった」と言った結果を得て僕らはここに隣接した別の部屋の調査に移動した。