何で俺だけ「え?俺だけソレ?」
「こちらの数字はプレイヤーと呼ばれる神々の呼び出した異世界の兵士たちが死亡した時に漏れる「神の一部」を得た量を表しております。奴らが死す時に漏れる、神々がプレイヤーをこの世界に顕現させている力をこちらが少量ではありますが奪います。その力を使えば我々魔族は奴らに対抗する力を増やす事が可能となります。魔王様のお力で。」
俺はここで待ってくれと心の中だけで叫んだ。魔王と言う職業?これじゃあそもそもシミュレーションゲームになってしまう。俺は戦慄した。
しかしミャウちゃんはまだまだ説明を続行する。
「この力は魔王様の封印を解く力にも振り分けられますが、そちらにだけに力を注ぎ続けてしまうと、我ら魔族の強化は間に合わず、奴ら神々の兵士、プレイヤーにこの城まで攻め込まれる方が早いでしょう。なのでそこで魔王様にはその明晰な頭脳によって奴らを足止めする戦略を。そして稼いだ時間と強化した魔族の力で奴らを縊り殺し、その余剰を封印解除に注ぐと言った形になってしまうかと思われます。いち早い魔王様の復活を願いつつもこの様な情けない現状に我々は命を持ってして魔王様への謝罪とする覚悟が御座います。」
「重い!重いよ!マジで俺一人だけシミュレーションゲーだし?どう説明すりゃいいんだよ!?」
俺は叫んだが、どうにもこれがどうやら運営に引っ掛かるらしい。
俺の目の前にはいきなりメニュー画面とは違う画面が現れた。そしてそこには。
【警告・この度、魔王となった貴方にはこのゲームにおける情報制限が掛かります。魔王に関するあらゆる情報を漏らす事を運営は禁じます。それが守られない場合、このアカウントは凍結されます】
俺はこの出てきた警告文に唖然とした。余りにも前例が無い、噂ですら聞いた事も無いような展開が今、俺の目の前に現れているのだ。
「うせやろ・・・マジで言うとんのかい運営・・・え、もしかして、俺、友達と大冒険、できない?」
このゲームは複数アカウントを所持するのができない。脳波などを測定してソレを本人確認のために使用されており、偽造とやらもできない。別の機器でログインしようにもそれが不可能なのだ。もし偽造をできたとしても、複数アカウントを取るためだけにそのリスクを負うのは重たすぎる。お金の面でもしかり、利用規約でもしかり、そして、法律面でもしかり。そう、法律に複数アカウント所持は引っ掛かるのだ。警察のお世話になると言う事、そしてそんな事になればアカウント凍結どころでは無い。今後どのようなゲームであってもログインが不可能となる処置すら存在するのだ今の現代には。
そうなるとソレを恐れてゲーマーが一つのゲームでアカウントを複数取ろうといった行為はありえなくなると言う事だ。
「魔王様には封印空間に戻られてしまっている際にもこちらへと命令、指示が出せるようにとこちらの通信魔道具を作り出す事に成功しております。こうして一部でも魔王様が神々の力を解き、復活をなされたからこそ使える物ではありますが。コレでいつでも魔王様のお声を魔族全体に反映できるようになります。どうぞ、お納めください。」
ミャウちゃんの手の平には小さな手のひらサイズの小さな黒い石板が乗せられていた。それが宙に浮いて俺の手元に来る。
「うわぁ、そう言った感じになるのね。・・・え?そうなると俺、ログインしないでも色々とコレで指示が出せるって、この先俺どう言う風にこのゲームを楽しめばいいんだよ!?」
絶望に押しつぶされかけつつも俺はその宙に浮いて手元に来たそのアイテムを手に取るのだった。