攻略!悪魔王編!「結局は変わらなかった」
俺は今猛烈に感動している。それは初めての乗馬体験が素晴らしいモノになったからだ。
あれから一週間が経ち、黒皇に付ける鐙もドワーフに頼んで作って貰って調整済み。
そして念願の乗馬体験をしたのだが。
「言葉が通じると本当に凄いな。苦労要らずだよ、ヤバいな。」
屈服させて名前を付けた魔物は俺の言葉を理解してくれる。どう言った理屈か、作用かは知らないが、これがもの凄く便利。
この黒皇も俺が指示を出すとすんなりとソレを受け入れてくれるので操作が楽ちんなのだ。
「はぁ~、こんな大草原を馬に乗って走るとか、ヤバい、爽快感、ヤバい。」
今の俺の頭の中はきっと脳内麻薬がドバドバだと思う。そう思ってしまう位に快感、感動を覚えているのだ。
「風が爽やか、気持ちが良い。黒皇がまだ全然乗馬に慣れて無い俺の動きをフォローする様な動きで軽く流す様に走ってくれるおかげで不快感とか違和感とか全く無いのが有難いわー。」
俺は今日までにこの黒皇の世話をずっとしてきた。お気に入りなのである。
馬の世話なんて全く経験ゼロ。なのでリアルの方ではその手の動画や情報を漁りまくって勉強をしたくらいだ。
そのおかげで早くもこの黒皇が寄せてくれる好意はMAXに近いんじゃ無いかと俺は思っている。
「よーし、ちょっとストップな。休憩にしようか。よしよし、おやつの時間だよ。」
俺は水と野菜の盛り合わせを黒皇に差し出す。持ってきておいた黒皇用の食事である。
「ミャウちゃん、俺は決めたよ。騎馬軍団を作ろう。数はそうだな。どれ位が程々かミャウちゃんはどう考える?」
もちろん今回もミャウちゃんが同行している。俺が何処に行くのにもミャウちゃんは必ず付いて来ている。
「余裕がまだまだ御座いますので最大で百はいけるかと。」
「あー、でもやっぱりそうなると世話がねー。馬房も作って、世話係も、後は維持費も入れたらちょっと考えなおさないと駄目だね。冷静になれたわ、いきなり百って聞いて。」
百もの騎馬、きっと迫力が凄いだろう。それを思うとここでそのまま百頭で即決、と言いたくなってしまうのだが。
「最初は二十で行こうか。とは言っても、騎馬軍団を組織しても何処で活躍させるんだ?って話になりそうなんだけどね。うーん?勢いと思い付きを何でも口に出すもんじゃ無いな。」
二十では少ない。だけどそれでもこの黒皇と一緒に左右「10」ずつ横に並んだら壮観だろう。
「あ、そうなったらケンジにも一頭あった方が良いか?フィールド移動に大いに役に立ちそうだし?」
ケンジは今第九悪魔の城に行っている。以前に俺が向かった時に調べずに終わってしまったあの園庭を調査に行っていた。
「この件は後でケンジが帰って来たら相談しよう。何か別のアイデアとか意見が出て来るかもしれないしな。」
既に「球」は服従させた魔物たちに試してみてある。けれども一体もパワーアップ現象は起きなかった。この黒皇もである。
「黒皇がパワーアップしてたら良かったんだけどな。と言うか、何か別の条件を満たせば絶対に黒皇って変化するよなぁ。だって黒いユニコーンて。ツッコミどころ満載じゃん?」
確かバイコーンと言う馬の魔物はユニコーンと真逆で、確か不浄を好むんじゃ無かったか?
黒皇の角の部分も、その周囲も念入りに調べているのだが、角は一本だ。バイコーンは二本であるらしいので確実に黒皇はユニコーンであるはず。
イメージ的にはユニコーンは白、バイコーンは黒だと言った感じなのだが。
「まあ黒いのが居てもおかしく無いよな。だってアルビノって言って本来だったら持っている色素が無く真っ白に生まれてくる動物って珍しく無いんだし?その逆があっても良いよな、って話だ。」
所詮ここはゲームの世界。そう言った俺たちが脳内に持つ常識をひっくり返した設定があったって「おかしい」なんて事は無いのだ。
自由な発想、それがこの世界の根底に広がっていなくてはならない。俺たちはそれを楽しむためにこのゲームに入り込んでいるのだから。