攻略!悪魔王編!「その後の事を全く考えて無かったよ」
俺の目の前には檻に入れられた魔物。全部で三十程である。それが広場に並べられていた。
よくもまあ本当にこれだけの数を集められたものだと俺自身が今驚いている。
「マルスの思い付きに勢いでこんな作戦を指示しちゃったけど。本当に可能だったんだなぁ。」
シミジミそんな言葉を口から漏らしてしまう。この作戦で実際に捕獲に従事してくれた魔族には個別でちゃんと後で報酬を出してあげないと駄目だろう。何か考えておかないといけない。
ここに捕獲されている魔物はどれもボス級レベルなのだ。そこには多大な苦労があったはず。
しかし幸いにも大怪我をした者は出ていない。ウチの魔族、部下たちと言って良いだろうか。もの凄く優秀である。
「俺も一匹捕まえられたけど、その場で試してみて無理だったんだよなぁ。この中からパワーアップする奴は出るかね?」
俺の横には一匹の虎。いや、ネコ?虎程の威厳ある顔つきでは無く、可愛らしい猫と言う程の愛嬌が無い魔物が横に控えている。
野生を激しく備えた凛々しいネコ科の魔物を俺は現場で即座に屈服させてその直ぐに「球」を咥えさせてみたのだが。
ポチの時みたいな事は起きたりしなかった。
「・・・これを全部俺が先ず服従させなくちゃいけないんだよね?あれ?一匹一匹やらないと駄目か?」
そう考えたらこうして捕まえた後も大変だ。そして一度魔物を俺が服従させるとどうやら俺の言う事を理解してちゃんと動く様になるらしく。
「タマって名前を付けたらいきなり知能が上がったしなぁ。これ全部に名づけもした方が良いよね?あー、これは考えの外だったわ流石に。ヨソウガイデス。」
このネコ科の魔物は既に名前を付けた。タマである。
体格は大体俺の腰位の高さがあってそこそこの巨体。毛並みは茶色でサラサラだ。
尻尾は長い。俺の横にちょこんと座ってゆらゆらとソレを揺らして目を瞑っている。
その姿を遠目で見るだけならかなり可愛らしいのだが。その閉じた目が開けばまるで狩人の如き鋭さだ。
このタマも相当強力な魔物であるだろう。名前を付けた事でどうにもその思考、行動AIのレベルが上がっているのでプレイヤーが今このタマと戦ったら討伐はかなり難しいと思われる。これは俺の経験上の感想だ。
これまでに俺が遊んできたゲーム、それらから考えて思考回路にかなりの情報を詰め込んでいるボスは難敵だと言う事は分かり切っている。
そう言った敵には下手にバランスとったパーティ編成よりも特化型で、それでいてそのボスに対してのみ非常に有効、と言ったスキルをガン積みしないと勝てないと相場が決まっている。
いわゆるメタ張り?と言った具合だ。初見では絶対に倒せないパターンである。
「ねぇミャウちゃん。これらを全部飼うとして、維持はできる?」
「はい、充分に。余裕すらあるかと。」
このミャウちゃんの返しに俺の方がちょっと驚いた。ウチそんなに裕福ですか?と。まあ余裕ならソレはソレ良い事である。
「あー、それじゃあ運用を考えておいてくれる?せっかく捕まえて、服従させて飼うんだから、こいつ等もちゃんとウチの国民?扱いでお願いね。ゲブガルやその他の部署とも相談、連携してお世話をお願い。」
俺のこの指示にミャウちゃんはいつも通りに「畏まりました」と答えてくれる。
その後に小声で「魔王様の器は海よりも深いです。いえ、海などとは比べモノになりませんね」と言っていたが。
(いや、流石にソレは言い過ぎにも程があるよ・・・)
と俺は心の中だけでミャウちゃんの呟きにツッコんだ。