攻略!悪魔王編!「できるか、できないか片っ端からやってみよう」
マイウエルの張ってくれた魔力障壁は次々と突撃して来る鳥の魔物を防いでくれている。もの凄く安心感が大きい。
これならば山頂に到達するまでの道中に無駄なダメージを食らわないで済む。
ボス級の魔物を捕獲するのだ。幾らHPがあっても足りないと言える。それこそ長期戦を覚悟しなければならないのだ。
最終目的の捕獲ができるかどうかもまだ全く分かっていない状況であるぶっちゃけ。
そう、この作戦、このゲームのシステムの事を全く調べていない状況でのブッツケ本番なのである。
呆れてモノが言えない、とはならない。そもそも捕獲なんて事を考えるプレイヤーが居ないだろうし、そう言った方法ができるのかそうで無いのか調べた事があるプレイヤーなど一人もいないのだ。
運営も捕獲に関する情報は一切出していないので僕らは何も情報が無い。無謀にもそう言ったスタート地点からいきなり「じゃあやってみよう!」なのである。
一応は「動物園」の園長が「ケルベロス」を捕獲できては居るのだが。いわゆるこれが偶々なのか、それとも他の魔物でも可能なのかが分からない。
ポチだけが特別でそう言った「捕獲」ができる魔物だったのか、それとも魔物は例外無く「捕獲」ができる仕様なのか。
こうした事は多くのサンプルが無いと判断ができない事柄である。なのでそこら辺も調べる形で魔王は魔族を総動員している。
「そりゃそうだよな。プレイヤーはそもそもレベルを上げるのに魔物を倒してナンボって訳だし。」
ジョブの「従魔師」「調教師」はいわゆる特殊系と言えるだろう。こうしたジョブに就いている者たちは魔物をその場でテイムする。一々捕獲などと言って檻に入れたりする事は無い。
魔物を自身に従わせるのに先ずは弱らせてからジョブ専用のスキルを使用して服従させると言う手順である。
従わせられないとなったらその魔物は倒して経験値へと変えてしまうのだ。
レア度の高い魔物程テイムの成功確率は低い。自分の目的の魔物を従えられるようになるまで結構なツライ道程である。
そこそこの魔物を従えるだけで満足していてはその内に限界が来てしまう。従えている魔物よりも強い魔物が敵だと勝てなくなっていく。
だから上を目指す、強力な力を持つレア度の高い魔物をテイムできる様に戦闘を繰り返す。
そうしている内に自身のレベルも上がって、スキルのレベルも上がって、強力な魔物もテイムしやすくなると言った流れになるのだ。
そう考えると僕らのやろうとしている事は結構な無駄かもしれない。そして無謀でもあるだろう。
何せ「球」でパワーアップする魔物が他に居るかも?なんて発想だけでこうして捕獲作戦をしようと言うのである。それを試す為に色んな魔物を捕まえてみて片っ端からやってみようというのだ。
やろうとしている事が余りにもこれでは効率悪い。それに付き合っている僕も僕なのだが。
「僕だけでも悪魔王編を進める為に第九に向かっていても良かったんだけどなぁ。」
そう、別に僕がこの捕獲作戦に参加しないでも良かったのだが。
「そうしたら僕だけ仲間外れにされてるみたいでなんかヤダ、って言ったのはケンジじゃない。今更だよ?」
マイウエルにくすくすと笑われつつツッコミを入れられた。確かにそうなのだ。こうして僕は魔族と仲良くなってしまっている。本来だったら倒すべき相手、魔王とすらも。
そんな皆が同じ事を一斉にしようとしているのに僕だけ別の事をしていると何だか寂しい。
だからこうして今僕は此処に居る訳だ。
「ぶも、もうそろそろ山頂に入るべな。いきなり出合い頭に先制攻撃を食らうかもしれないから気を引き締め直すべ。」
マルスが緊張感を高める様にと注意をしてくれる。マイウエルの魔力障壁ですっかりと安心していたのでもの凄く今は油断していた。
「ああ、確かに。目的の魔物はボス級だしね。気合を入れ直そう。」
そう言って僕は立ち止まって深呼吸を三回してから再び歩き出した。