何で俺だけ「出るにしたってやはり逃げ出す様に」
その音の方へと一斉に六人は振り向いた。そこには庭の木々を剪定作業する小男が。背はプレイヤーたちの半分くらいしかない。
子供と言ってもいいくらいの背の高さ。しかし纏っていた空気はややおかしい。そしてその手に持っている巨大な鋏も不気味だった。
そして六人へとその男が声を掛けてきたのだ。選定作業をしながらに。
「おや、お客様でしたか。お嬢様のお友達ですかな?なればわたくしもおもてなしなどをして差し上げなければ。」
そう言ってプレイヤーたちの方へと振り返ったその顔は、皮膚がつぎはぎだらけ。しかもどうやら「自分以外」の人の皮膚を繋ぎ合わせたような、繋がり合う皮膚の色が違っている。
「ああ、私の顔が気に召しませんでしたか。ああ、しょうがありませんなあ。今付け変えます。」
そう言ってその小男は懐から何かを取り出した。この間ずっと何かにとりつかれたようにプレイヤーたちは動けずにいた。
別段イベント発生で「行動停止状態」に陥った訳では無い。彼らはこの存在が一体何者なのかを見極めようとしていただけだ。
そんな彼らに「べらり」と一枚の「何か」を取り出して見せる小男。その何かを自分の顔に取り付け初めて彼らは気付いた。
人の顔の「皮」、しかも恐らくだがそれは女性。
「ひっ!」「おえっ!」「ぎょ!」「ぐぇぇ・・・」「うっぷ!?」「げぇぇ!?」
あの階段に飾られていた絵画、その少女の顔つきにそっくり。そして理解した。こいつがやったのだ、と。
その皮を被った小男が開いていた鋏を閉じ、子気味良い音を鳴らす、「ジャキン」と。
この六人がその音で想像したその絵面が悍ましいモノで、しかも目の前の気持ちの悪い物を見た事に因って再びパニックが訪れる。
「貴方達は随分と仲が宜しいみたいですな。羨ましい、羨ましい・・・その顔、私にイタダケナイデスかな?全員分の顔を繋げてより一層仲良しにして差し上げますよ・・・」
その言葉に六人が一斉に逃げ出した。全力で門へと。しかし背後から迫る鋏の閉じる「ジャキン」と言った音がいつまでも遠ざからない。
一番素早さのある武闘家が先頭に居て余裕が合ったのか、振り向いてしまった。そう、振り向かなければ良かったと、その後に武闘家が述べる。
その見てしまった光景と言うのが後々に夢にまで出てきてうなされる程だった、と。
小男がぴったりと付いてきており、その顔には不気味な満面の笑みがあったと。
何故こんな説明になるかと言うと、それを見たのは武闘家のみだったからだ。他の五人は余裕など持てなかった。ここはゲームの中だと言うのに、自分が現実でこの様な「命の危険」に晒されている訳では無いのに。
そして彼らはあと一歩と言う所で終わる。門から出ればこの鋏男は追いかけてこないだろうと希望を持ったのに。
ダンジョンから出ればきっとこいつから逃げ出せる、もう二度とここには入らないと誓ったのに。
鋏男が徐々にプレイヤーたちから離されていき、追いかけてくるのを諦めたかと言った所で彼らの意識は一瞬で絶たれる事になった。
全員が一塊となっていた事も不幸だった。いや、ここで一人取り残される方がより不幸だったかも知れない。
門の手前に仕掛けられていた侵入者用の罠、それが発動したのだ。「落とし穴」ソレの底にはご丁寧に針山が。
そう、この仕掛けを起動させるために鋏男はわざと追いかけるのを止めたのだ。罠を起動させるスイッチを、プレイヤーたちがジャストでハマるタイミングを計って入れるために。
ここで生配信は切断された。こうしてこの生放送は一気に話題となった。




