攻略!悪魔王編!「自重して欲しい所です」
今僕の目の前では信じられない事が繰り広げられている。
運動会での競技に「大玉転がし」なんて言ったモノがあるが、今その大玉くらいの大きさの銀色に輝く「コア」が宙を舞っているのだ。
そう、第三悪魔の「コア」である。これを魔王とボッズが。
「そいやぁ!」
「何のコナクソ!」
と、その「コア」を殴っては打ち返し、殴っては打ち返しを繰り返しているのである。
この「コア」、別に柔らかくて跳ねる様な性質じゃない。カッチカチである。そんな大玉が「どむん」とか「ずどん」とか言った音を立てて跳ね飛んでいるのだ。
ボッズはあの衝撃波でブッ飛ばす得意の一撃で「コア」をぶん殴り。
魔王の方はと言うとどうにも拳に魔力を纏わせてぶん殴っているのだそうで。
「誰がこんな展開になるって予想ができるんだよ・・・」
事の初めは魔王だった。いや、ボッズか。まあ、どちらでもいい。
最初は魔王がこの「コア」を殴ったり蹴ったり魔法を撃ち込んで見たりと試していた。
そして今回同行している魔族のメンバーもそれぞれが得意とする攻撃を「コア」に放って少しでもダメージが通る攻撃が無いかどうかを改めて探っていた。
そこでボッズがあのお得意の衝撃波拳打を試したのだ。すると「コア」が面白い位にぶっ飛んだのだ。これに「コア」がダンジョン内をボヨンボヨンと跳ねまわった訳じゃ無く「ずどん」と言った音と共に吹き飛んだのだが。
コレに魔王がボッズの真似を再現でき無いかと言って試行錯誤して殴る際に拳に魔力を纏い、その拳のインパクトの瞬間に魔力を「コア」の内部へと叩き付けるイメージで放つと言うのを会得したのだ。
そうしたらその方法も「コア」をスカッと吹き飛ばした。後はもうボッズと魔王の「コア」のキャッチボールみたいになった。いや、キャッチはしてなかった。
この魔王とボッズのコミュニケーションは可愛いモノじゃない。その吹き飛ばされて、ぶっ飛んでいる「コア」にぶつかればこっちが昇天するダメージを食らう。そうなればそれは事件だ。
巨体のマルスもこれには流石に引いていた。その横に居た僕はマルスの呟きを聞いていた。「いくらなんでも・・・」と本当に微かな声で呆れた様にそんな一言を漏らしていた。
「あ、消滅した。」
そんな時間がソコソコ経ってどうやら「コア」は耐久力を削られ切った様で光と消えて行ってしまう。
そもそも「コア」が何らかの反撃をしてくると思っていたのだが。只々この「コア」はダメージが通らないと言った部分に超特化しているだけで何らの攻撃もしてこなかった。何もしてこなかった。
「哀れ。」
僕の口からはそんな言葉しか出てこない。恐らくプレイヤーがもしこの「コア」を破壊しようとしたならば途中で諦めただろう。
本来であればそう言った所を狙って用意された存在だと思うこれは。
だけどもこのチート魔王軍団にはそんな存在もこうして光と変えられてしまった。良い加減これは運営が調整を入れるべきだと思うのだが。
「良し!思っていたよりも時間を掛けずに「コア」が壊せた。第三悪魔の分体は一発で決めちゃおう!」
魔王はどうやらこれ程に早く「コア」を倒せた事に喜んでいる。ボッズとのあの地獄の打ち返しゴッコも楽しかったのだろう。上機嫌である。
その後は分体の方に無事到着、魔王の言った通りに一撃で終わった。魔王が日本刀を引き抜いてサクッと第三悪魔を切ったのだが。
第三悪魔がどんどんと真っ白に染め上げられていく。白に浸食されていく。
これを間近で初めて見た僕の感想はと言うと。
「チートにチートを掛けて、それにまたチートを掛けてチートを足してまたチートで掛けた様な?」
チートが脳内でゲシュタルト崩壊した。