攻略!悪魔王編!「皆きっとそう口にするだろう」
僕は遠くからこの光景を見ていた。遥か上空で美しい青白い光が舞い、その後に衝撃波が。次には大爆発が三回の、ガラスが擦れるような音が一瞬。
「うげぇ・・・マジかよ、半端無いなコレ・・・」
僕はこれが何なのか、誰がやったのかを知っている。今回の作戦の全容は僕にも知らされていたから。
「マイウエルの魔力波だろ最初のは?その後の衝撃波って誰?・・・あ?ボッズ?マジで?」
恐らくは、と言うか、確実に大爆発はマイウエルだろう。その後の不快な音は誰がやった攻撃に因るものだろうか?
「大分離れてる場所なのにな、ここ。そんな音やら衝撃がこっちまで届くって・・・ドンダケなんだよ。」
発生場所は遥か上空で、しかも僕の居る位置はそこからまたしてもかなり距離の離れた場所である。信じられない。ドン引きだ。
プレイヤーに「魔王を倒せ」とか「魔族を倒せ」とか、これでは余りにも無茶と言うモノだ。
本来だったら僕らプレイヤーはそう言った目標があったはずなのに。今では「触らぬ神に祟り無し」状態と化している。魔王には手を出すな、である。
「これを魔族がやりました、って知った時のプレイヤーの表情がアリアリと思い浮かべられるよ・・・」
きっとポカンとした顔になってフリーズ。そして誰もがその後に「魔王編なんて最初から無かったんや・・・」と遠い目をする事だろう。
「あー、第四悪魔が出現したか。「コア」は破壊できたのかな?僕はプレイヤーだしなぁ。即座に魔族や魔王と通信できないし。そもそも余計な情報を作戦途中で横入りさせてそれに意識を逸らさせるとか危険だしね。」
集中せねばならない場面で突然メッセージのやり取りなんて命がいくつあっても足りなくなってしまう。そう言った事は緊急事態以外にはしてはならないモノだ。
さて、今の僕は高いビルの屋上に居る。第四悪魔の攻撃がここまで飛んできてもギリ回避できると踏んだ距離である。
なので進入禁止区域となっている場所に予想通りに第四悪魔が出て来た事が僅かではあるが見えていた。
そう、衝撃波や爆発やらが起きた場所はその第四悪魔の真上、遥か上空だった。
「運営さん、第四悪魔の「コア」の壊し方って別に方法を幾つかちゃんと考えてたんだよね?そうだよね?」
プレイヤーの力量であのような遥か上空にある「コア」を破壊しろなんて土台無理な話である。実現困難過ぎるにも程がある。
今回の手が使えているのは魔族だからこその力技だ。そうなるとプレイヤーがあの「コア」を破壊するにはもっと違うアプローチが必要で。
ソレはきっとプレイヤー専用に用意されたフラグを起てると「コア」とちゃんと戦う事ができる舞台にしてくれるんだろう。きっとそうだ、と思いたい。
「そんなのが見つけられそうにも無かったから、しょうがないよね?運営さん?」
運営側のスタッフは全員今回の件に関して「こんなはずじゃ無かった」と口々に泣き言を漏らすのではないだろうか?
「だって、第四悪魔がこんなやられ方するなんて誰も想像できないんじゃない?」
現れたと思った第四悪魔が一度も攻撃する事無く光になって消えたのだ。
第四悪魔が消える直前に光が一瞬走った、と思ったら少しずつあの巨体が光に侵蝕されて行った。
そしてその光が全身を染め上げるとその内側から光が線の如くに周囲に無数に光が溢れ出て爆発するかのようにしてカーッと真っ白に空間を染め上げてしまった。
その後にはまるで最初から何も無かったかの如くに静けさが戻る。夢でも見ていたかの様に。
「悪い夢でも見てるかの様だった。あの調子だと完全討伐はできたんだろうな。後で話を詳しく聞けば良いか。」
僕はその後一旦休憩を入れる為にログアウトした。