攻略!悪魔王編!「動画の」
僕らは無事に魔王の城に帰還しへとへとで玉座の間に入る。そこでは魔王が玉座に座り寛いでいた。
「おー、ケンジ。どうだったそっちは?俺たちの方の第三悪魔の情報要る?」
「それよりも魔王、第四悪魔がプレイヤーとバトルしてる動画を一緒に探してくれない?」
僕は事情を一通り話す。すると魔王は。
「俺も見てみたいんだけど!なにソレめっっっちゃ!気になる!」
どうにも魔王は第四悪魔の事は全く気にしていなかったらしく、僕のこの話を聞いて随分と興味が出た様だ。
「俺も一緒に討伐しに行って良い?だって「モビル◯ーツ」でしょ!?うっわ!運営マジおかしいわ!」
はしゃぎ様が子供だ。魔王の性格の素の一端がコレで分かった様な感じである。
「じゃあちょっと僕はログアウトして探してくるよ。」
「あ、じゃあ俺も一端上がるわ。今日は休無双日だし。丁度良いかな?別段コレと言ってやる事も思いつけなかったし?」
僕と魔王はこうして二人でタイミングを合わせてログアウトした。一応は合流を三十分後にして。
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「じゃあ俺も一つ第四悪魔とやらの戦闘場面の動画を探すか。・・・おっと?直ぐに見つけられたな?どれどれ・・・」
ケンジに求められた通りに俺はその動画とやらが無いかを探す。しかしそれは直ぐに見つける事ができた。
「しかしまあ、これは・・・確かにその場から動かないけど、けど。」
ビームライフルでプレイヤーたちは何人も同時に蒸発。
頭部バルカンの一発が掠っただけで体の半分が消し飛ぶ。もちろんそれは即死。それがばら撒かれて数多くのプレイヤーがその餌食にされて消えていく。
盾でプレイヤーたちの大魔法は尽くが防がれ、威力低めの牽制で放たれた魔法ではダメージ無視でスーパーアーマー状態で動きは止められない。これではダメージが稼げていない。
第四悪魔はしかも追加でそのサイドアーマー部分に取り付けられていたサーベルグリップを握る。すると青白い透明な光が伸びて棒状となってソレでプレイヤーを切り裂いていく。
「ハッキリ言って、地獄だな。これは初見で倒せるはず無いね。運営鬼だわ、これは。」
第四悪魔が動かないと言っても、出現した場所から一歩も動かないと言う訳じゃ無い。
多少の範囲は歩き回るのでその一歩だけでプレイヤーは簡単に踏みつぶされて光と変わる。
巨体と言えどもその動きの速度は舐めてはいけない。俊敏、などと言う所までは行かないかもしれないが、結構早い。
なので気を抜いていると即座に接近されてその足に簡単に消し飛ばされてしまうのだ。ちょっと前に出したその脚の動きに掠っただけで簡単に吹き飛ばされていくプレイヤーたち。
「これは死ねますね・・・阿鼻叫喚だ。蹂躙だよ、蹂躙。運営、鬼畜の所業。」
それでも最終的には「これ、倒せないだろ」と思われた「モビル◯ーツ」を撃破しているのだ。それはもはや執念に近いのでは無いか?と思える根性だ。
全滅を二度で抑え込んで三度目に倒せたと言うのだから、恐らくはこのレイドの中にブレイン、指揮を執る、作戦を考えた者が居てそいつが中心になって作戦を決行したんじゃ無いかと推測する。
普通に考えたらもっと数多くの全滅を得て倒せる様な「大物」だろうこの第四悪魔は。
それでもこの少ない回数の全滅を得て討伐を一度と言えど成す事ができたのは緻密な作戦と役割分担、そして大胆な行動が伴っての奇跡だと言えるのではないだろうか?
「動画も三度の戦闘をちゃんとそれぞれ録画していて、こうして公開もしてるって言うのも凄いな。」
情報、それはお宝だ。自分しか知らない貴重な情報は拡散しない方が大きな利益に繋がる事もある。
この「第四悪魔討伐記録」なる題名が付いた動画はかなりの人気を出している様で、その視聴回数が軽く五万を超えているのだ。
編集の仕方も絶妙で、失敗している場面もしっかりと入っていて「成功」しただけじゃ無く、第四悪魔に挑戦するなら非常に貴重な資料にもなっていた。
そしてその失敗がどうして発生したかの解説なども付いていて俺はコレに心の底から感心してしまった。
「スゲエな、コレ。マジで参考になるな。いや、これをこんな気軽に見れる様にして流してるのも、考えられねー。」
無料で動画が見れる配信サイト。気軽に誰もがクリエイター、と言った宣伝文句で運営されているサイトにアップされているのである。
しかもコレ、運営の公式である。どう言う理由と経緯でそうなったのか?非常に興味が尽きない。
「おっと、見終わっちゃったな。既に約束の三十分は過ぎたか。でもケンジも俺と同じ動画を見ていればきっと同じだろ。さて、ログインするか。」
俺はそうしてトイレを済ませ、水分補給をしてから再度ゲームへログインをした。